北京で開かれた中韓首脳会談で、3年ぶりとなる日中韓の首脳会談が来月末にも韓国で開催されることが決まった。それを機に、安倍首相と朴槿恵(パククネ)大統領による初めての首脳会談も実現する可能性が高い。

 領土や歴史問題で長らく滞っていた東アジアの首脳外交が、やっと動き始めようとしている。日中韓は芽生えつつある機運を大切にし、関係改善に向けた努力を続けるべきだ。

 朴氏はきのう、中国の「抗日戦争勝利70周年」の記念式典に出席した。ロシア以外の欧米主要国の首脳らが参加を見送った。韓国にとって中国は、かつて朝鮮戦争で戦った相手国だ。それでも訪中を決めた最大の理由は過去5回の首脳会談でつちかった習近平(シーチンピン)国家主席との信頼関係なのだろう。

 習氏は、日米からの慎重論を押し切る形で訪中した朴氏を手厚く迎え、蜜月ぶりを強調した。韓国には繰り返し、歴史問題で連携して日本に対処しようと呼びかけてきた経緯もある。

 だが、天安門広場での軍事パレードでは、米本土を攻撃可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)や最新の大型無人機が初めて披露された。今回の式典には共産党政権の正統性を訴えるために抗日戦争での功績を強調するとともに軍事力を誇示する狙いが込められているようだ。

 韓国は、そんな中国にのみ込まれることを警戒し、今のところ「歴史共闘」には慎重だ。しかし、今後も同じ間合いが保たれる保証はない。そのためにも日本は歴史問題で中韓それぞれと和解を進めねばならない。

 さらに、日中韓には、大気汚染の防止や疾病対策、原子力の安全、再生エネルギー開発といった、地域に暮らす人々の生活に直接かかわる難題が山積している。

 日韓二国間の首脳会談開催にめどが立てば、双方の実務者は協議を加速させるだろう。懸案の中でも喫緊の課題の一つは、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮問題である。

 北朝鮮は10月10日に朝鮮労働党創建70年の記念行事を予定しており、その前後に弾道ミサイルの発射実験をする可能性が指摘される。日韓は米国とともに緊密に連携する必要がある。

 日韓の政治外交関係が上向けば、この数年減少し続けている貿易量などにも好影響を与える可能性がある。

 会談に臨む日中韓首脳の思惑は必ずしも一致しないが、まずは対話のテーブルにつき、信頼構築に向けた第一歩を踏み出す以外に道はない。