五輪エンブレム中止:「遅きに失した」 識者ら批判の声

毎日新聞 2015年09月01日 14時30分(最終更新 09月01日 15時03分)

記者会見で自身の制作したエンブレムについて説明する佐野研二郎さん=東京都港区で2015年8月5日午前10時9分、喜屋武真之介撮影
記者会見で自身の制作したエンブレムについて説明する佐野研二郎さん=東京都港区で2015年8月5日午前10時9分、喜屋武真之介撮影

 いったん決まった世界のスポーツの祭典のシンボルが、白紙に戻ることになった。佐野研二郎氏が制作した2020年東京五輪の公式エンブレムについて、大会組織委員会が使用中止の方針を固めた。識者や市民からは「遅きに失した」「妥当な判断だ」などと、さまざまな声が上がった。

 8月に新国立競技場問題で遠藤利明・五輪担当相の要請を受け意見交換したスポーツ評論家の玉木正之さんは、まず一言「良かった」と語った。さらに、撤回を「遅きに失した」と切り捨てた。デザインについても「いいと思わない。戦前の近現代主義のようなもので、なぜあんなのが選ばれたのか」と疑問を投げかけた。新国立競技場が白紙になったことにも言及し、森喜朗・東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の責任にも言及した。今後、新しいエンブレムを作成し、選定すると見られるが、玉木さんは「ネットが発達している。みんなで選んだらどうか」と提案した。

 日本オリンピック委員会(JOC)名誉委員の広瀬喜久男さんは「新国立競技場に次いで大会イメージを著しく損なってきたので、使用中止は当然だ。競技場問題とよく似て責任の所在があいまいだった。今後はオリジナリティーを重視して慎重に選考すべきだ」と話した。

 大阪府枚方市のスーパーに買い物に来ていた男子大学生(19)は「エンブレムを作った佐野氏は他にも問題が多すぎた。待ちに待った日本でのオリンピックだから、問題を抱えた状態での開催には反対だった」と語った。

 同市の会社員男性(23)は「使用中止は妥当な判断だ。インターネットで佐野さんの過去の作品の画像を見ていたら、今回のエンブレムは疑わしいと思っていた。今後は選考基準をしっかりして、オリジナルのものを選んでほしい」と話した。

 同府箕面市の大学2年、桐田隼輔(しゅんすけ)さん(19)は「デザインが似ていると指摘されたまま使い続けるのは、日本の評判を落とすことになる。誤解されない新しいデザインを考えてほしい」と話した。

最新写真特集