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【橋下市長公開書簡】
全文和訳(3) クマラスワミ報告は実証性に乏しい著書に依拠
これらを受けて、2014年10月に、日本政府はクマラスワミ報告の記述の一部撤回(旧日本軍が韓国から慰安婦を強制連行したとする吉田証言に拠った部分の撤回)を申し入れましたが、クマラスワミ氏ご自身はその報告書は吉田証言のみに拠って書いたものではないとして、撤回を拒否しています。他方で、クマラスワミ報告自体はジョージ・ヒックスというジャーナリストによる“The Comfort Women”という著作に多く依拠していますが、この著作は実証性に乏しいものであると複数の研究者から指摘されているものだということを、申し添えておきます。
そもそもクマラスワミ報告は、今日の女性に対する暴力に関する50ページに及ぶ報告書であり、慰安婦問題はその報告書本体についた2つの付属文書のうちの1つ「戦時における軍の性奴隷制度問題に関して、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく報告書」において取り扱われたものです。国連人権委員会においては、クマラスワミ氏の特別報告を審議の材料とした上で「女性に対する暴力の撤廃」という6ページに及ぶ決議を採択しました。その決議の中で特別報告者の作業を「歓迎(welcome)」し、当該付属文書の報告内容に対しては「歓迎」よりも評価の低い「留意する(take note)」と触れただけにとどまります。このことが示すことはつまり、クマラスワミ報告本体が最も高く評価されたのであれば用いられたであろう「賛意(commend)」が示されたわけでもありません。よって国連人権委員会として、「慰安婦」を「軍性奴隷」と断定する内容を容認(endorse)したものでは決してないのです。