写真広場
写真部のカメラマンが撮影した数々のカットから、お薦めのもう1枚を紹介します
【暮らし】まるみえマイナンバー(上)家庭内の経済状況 個人も世帯も“裸”に来月から全国民一人一人に、十二桁の番号を記したカードが簡易書留で送られてくる。国民全員に番号を割り当てる「マイナンバー制度」の通知カードだ。表面に記されるのは、番号や名前、住所、生年月日、性別。基本的な情報に思えるが、国は今後、活用の幅を広げる方針だ。三日にも、預金口座に適用する改正マイナンバー法案が国会で可決される見通し。法の成立を受けて国は、各家庭の家計を把握し、収税漏れ防止などに活用しようとしている。 (三浦耕喜) 「うちの会社の掲示板にも張ってあったけど、マイナンバーって何?」。岐阜県内で飲食業会社に勤める男性(46)は、実感が湧かない様子。 マイナンバー制度は、国民全員に「背番号」を割り当て、行政がばらばらに持っている年金や税金などの個人情報を集約する仕組み。行政事務の効率化というメリットがある。政府は、利用者側にも複数の手続きを一回で済ませられるなどの利点があると説く。 通知カードは、一人一人に割り振られた番号を知らせるもの。これとは別に来年一月からは、希望すれば無料で顔写真付きの個人番号カードが受け取れる。 通知カードが届いたら、まずは勤務先にマイナンバーを知らせることが求められる。企業や事業主は来年一月から、給与所得の源泉徴収票に従業員のマイナンバーを記入することが義務付けられるためだ。本人だけでなく扶養家族のマイナンバーも会社に知らせることになる。 活用はその後、さらに広がりそうだ。可決される見通しとなっている改正法案は、マイナンバーを二〇一八年から預金口座にも適用しようとの内容。成立すれば、初めは自分の口座をマイナンバーとリンクさせるかは任意だが、国は将来の義務化も視野に入れる。一人で複数の口座を持っていても、マイナンバーで横串を通せば一目瞭然。個人の年ごとの収入総額だけでなく、家族構成の情報とリンクさせれば一家の蓄えを調べることも可能になる。 国は、全国民の経済状況を把握し、税金の取りこぼしの防止、社会保障費が過払いとなっているケースの適正化などを図る。「公正・公平な社会の実現」に向けて、「負担を不当に免れたり、不正に給付を受けることをなくす」と説明する。 例えば、生活保護を申請する場合。マイナンバーで本人や親族の経済状況を調べ、申告と照らし合わせることも可能となる。ただ、マイナンバー制度に反対する「プライバシー・アクション」代表の白石孝さんは「ただちにそうなるわけではないが、生活保護への風当たりは強まっており、社会に受給者の経済状況と申告内容を照合することもやむを得ないと認める雰囲気がある。やがては、介護保険や年金の抑制にも使われるかもしれない」と言う。不正な給付が抑えられるのはよいとして、抑制が過度になれば、正当な給付まで圧迫しかねないという危惧もある。 「やましいことは何もないから見られても平気」という人々にとっても、マイナンバーはさらに強い力を持とうとしている。マイナンバー制度に詳しい名古屋市の川口創弁護士は「家計だけではない。人の人生そのものも丸裸にする」と話す。その内容は次回十日付の(下)にて。 PR情報
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