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堀北真希、「山本の押し勝ち」ではなかった? 「真希だよ」から読みとる脅威の国語力

cakes 9月2日(水)19時0分配信

山本耕史さんとの電撃結婚で世間をにぎわせた女優・堀北真希さん。清純派のイメージを守ってきた彼女だけに反響が大きく、多くの男性が深刻なダメージを負いました。今回の結婚を「山本さんの押しに堀北さんが負けた」と報じるメディアが多いようですが、堀北さんが山本さんに送った「真希だよ」という一言から、武田砂鉄さんが別の可能性を推測します。

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●「彼女は男を知らないはず」という寒々しい願望

「彼女の最大の魅力は、なんと言ってもピュアな処女性でした。ですが、山本との結婚によって、それが失われ、男性ファンの大半が離れていくことになるのは火を見るより明らか。清純派の女優にとっては、結婚が多分に足枷になる」(『週刊新潮』9月3日号・芸能ジャーナリスト平林雄一氏)。突っ込むところが何ヵ所もあるけれど、ひとまずは「ピュアな処女性」とやらに絞りたい。処女性というのはどこまでもいい加減な言葉で、「彼女は男を知らないはず」という身勝手で寒々しい願望を崩さない限りにおいて処女性は維持されていく。いざ裏切られると、「男性ファンの大半が離れていく」らしい。

「スキャンダル処女」と言われる場合も多いが、それはただ「処女性」を投じている側がそれなりの案件を発見できなかっただけである。結婚したらそれが「足枷になる」と断じる姿勢もまた身勝手だが、こうして「処女性」を持ち出す言質をほどいてみると、こちらが恥ずかしくなるほど常に自慰的であることが分かる。この芸能ジャーナリストだけの見解かと思いきや、週刊誌側もイントロ文に「永遠の処女とも言われていただけに、支払う代償は高くつくに違いない」と記し、オジ様たちが慰め合っているようで見苦しい。結婚することを残念がるのではなく、端的に言えば、彼女がセックスをしたことがある、という現実に、真っ正面から動揺しているのである。私は、その動揺に対して真っ正面から動揺する。

●「真希だ」「真希です」「真希だよ」「真希ですよ」

6年間も堀北真希を追い続けた山本耕史、連絡先を尋ねても事務所の電話番号を教えられ、手紙を40通送っても返事は一切なく、共演した舞台の千秋楽でラストチャンスとばかりに「せめて俺のを教えさせてください」とお願いし連絡先を渡すと、その夜に「真希だよ」とLINEがあったという。この「だよ」という語尾の力を執拗に考えてみたい。自分より一回り先輩の人に初めて個人的な連絡をとるのだから本来は「真希です」が一般だろう。関係性を考えずに選択肢を羅列すると「【1】真希だ」「【2】真希です」「【3】真希だよ」「【4】真希ですよ」だろうか。関係性からしてあり得ない【1】を除くとして、なぜ彼女は【2】でも【4】でもなく【3】を使ったのだろうか。

終助詞として使われる「よ」は、デジタル大辞泉によれば「判断・主張・感情などを強めて相手に知らせたり、言い聞かせたりする」意味を持つ。『8時だ!全員集合』ではなく『8時だョ!全員集合』なのは、8時であることを強めるためなのだ。堀北の場合においても同様で、「【2】真希です」よりも「よ」を使った【3】【4】のほうが、相手に知らせる判断・主張・感情が強められている。では、なぜ【4】ではなくて【3】なのか。「だ」と「です」はいずれも断定の助動詞である。「だ」の未然形は「だろう」、連用形は「だった」。一方で、「です」の未然形は「でしょう」、連用形は「でした」である。同じ断定だが「です」のほうが圧倒的に柔らかく感じられる。料理番組の『新チューボーですよ!』が『新チューボーだよ!』ではないのは、桃屋の『ごはんですよ!』が『ごはんだよ!』ではないのは、柔らかい印象を残すためだろう。

●「奴隷だよ」と「真希だよ」

堀北に向かう勝手なイメージに似合うのは「【2】真希です」「【4】真希ですよ」のいずれかだろう。しかし、彼女は「【3】真希だよ」を使った。金銭スキャンダルで自民党を離党した武藤貴也議員、彼の未成年男性買春を『週刊文春』(9月3日号)が報じたが、誌面で公開されているLINEのやりとりの一つに「奴隷だよ」とある。彼の行動はさておき、言葉の使い方として、この「だよ」は最適な使い方である。「です」よりも断定の度合が強い「だ」を使い、強調する「よ」を更に添える。「だよ」の用例として、主従関係を明確にしている「奴隷だよ」は分かりやすい。「真希だよ」は主従関係を明らかにするものではないが、かといって、「攻めに攻めた山本に堀北が遂に落ちた」という物語を単調に引き受けているわけでもない。

LINEの一言目が「真希だよ」だったかのように報じられているニュース記事が多いが、『とくダネ!』での山本のインタビューを再確認すると、最初は「お疲れ様です」とのみ送ってきた堀北に、「誰?」と訝しんだ山本、その後で「真希だよ」と送ってきたことが分かる。プライベートな人付き合いの始め方として、相手をこれだけ翻弄してしまうやり取りも珍しい。最初の一言としては「こんばんは、真希です。今日は千秋楽でしたね。お疲れ様でした。」くらいが一般的だろうが、そういうありきたりな弾を打たなかったのである。弾切れになるくらい連射していた山本に対して、堀北が打った弾はたったの2発である。

●自己イメージを維持し続ける国語力

「永遠の処女」と規定されるのが、まんざらでもないのか腹立たしいのかは人それぞれだろうが、イメージ商売である以上、それを覆すときには慎重に打って出ることになる。今回の結婚を伝えるメディアは横並びで、「プレイボーイとして数々の女性と浮き名を流してきた山本」が、「目立ったスキャンダルもなく、処女性を守ってきた堀北」を半ば強引にゲットしたと報じている。だがしかしどうだろう、「真希だよ」を無理やり成分分析してみれば、そう簡単な話でもないように思えてくる。端的な言葉で相手男性とメディアを引きつけ、その上で自己イメージを維持し続けたようにも思える堀北真希の国語力に圧倒されたよ。

武田砂鉄

最終更新:9月3日(木)13時8分

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