毎年2回のモデルチェンジが発表されるソニーのフラッグシップ・スマートフォン「Xperia Z」シリーズ。2013年のZ1と2014年のZ3に続き、2015年も最新モデルがここドイツのベルリンで開催される「IFA 2015」の場で発表された。IFA会期2日前にあたる9月2日(欧州時間)にソニーはIFAの同社ブースにおいてプレス発表会を開催し、Xperiaシリーズ新モデルならびに最新デジタル戦略について説明した。
Xperia Zシリーズのフラッグシップモデルは、ディスプレイサイズが5型台だが、これとは別に携帯性を重視した4型台のディスプレイサイズを持つ「Compact」シリーズが別途用意されている。今までのCompactモデルは「Z1」「Z3」と型番が奇数番台のタイミングで新機種が投入されており、今回の「Z5」世代もこのルール(?)にのっとり、Compactが投入される。Xperia Z5では、「無印」と「Compact」に加え、新シリーズの「Premium」が加わり、3機種に4種類のカラーバリエーションを交えて計12モデルのラインアップとなった。
「Z」の名称を冠するXperiaが登場して早4年ほどが経過するが、ソーシャル連携やハイレゾオーディオ対応など、発表される新機種の機能やそのときどきのマーケティング戦略に合わせてソニーは毎回テーマを設定しており、当該の世代で同社がどこを訴求ポイントに据えていたのかが分かる。今回発表されたのは、初代Zから数えて6代目にあたる「Z5」だが、その大きなテーマは「カメラ」と「イメージ処理」にあるようだ。
IFAは家電の総合展示会であり、ここで新製品を発表するソニーもまた、スマートフォンだけでなく、同社のテレビやオーディオ関連機器まで、さまざまな家電製品をアピールしてくる。今回、Xperiaの前に紹介されたテレビ事業とカメラ事業では特に新製品は発表されなかったが、同社の4K TVラインアップに搭載されている最新の「X1」映像処理チップやUHD(4K)での取り組みの紹介、そしてDRAMチップを絡めた最新のCMOSイメージセンサー技術をアピールした。
特にこのイメージセンサー事業はソニー内部でも最も成長著しい分野の1つで、直近の投資額だけで15億ユーロと3倍以上に膨れあがっていると、同社代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏は説明する。このイメージセンサーはソニー製品だけでなく、名前こそ明かさなかったもののさまざまなスマートフォンメーカーからの引き合いが増えており、実際に市場に出荷されている多くのスマートフォン製品でソニー製イメージセンサーがカメラユニットに搭載されている状態だ。つまり、これだけのイメージセンサー技術を持つソニーが完成品を作るとどうなるのか……というのが今回のIFAプレスイベントのテーマの1つということになる。
こうした「カメラ」と「イメージ処理」に関する話題が前フリだったことを象徴するかのように、発表された「Xperia Z5」の紹介時間の多くはカメラ機能の説明に費やされた。
カメラ機能のポイントの1つは最大0.03秒でのピント合わせが可能になる「高速AF(オートフォーカス)」だ。これは、ほぼ押した瞬間にシャッターを切れるわけで、決定的瞬間の撮影が容易になる。これまで、スマートフォンのカメラは「起動が遅い」「AFが遅いのですぐにシャッターが切れない」という点に不満を抱いていたユーザーが多かったと思うが、こうしたAF機能の存在はカメラ機能を前面に利用していけるモチベーションとなる。
高速AF以外では、最大5倍の映像品質を向上したデジタルズーム機能の搭載や、暗所やハイコントラスト環境でのノイズを減らして高い撮影品質の実現、アクションカムのような激しい動きでも手ブレ補正を強力にかけられる仕組みなど、スマートフォンをカメラとして積極活用する場を広げる新機能が多数盛り込まれている。
前モデル(Xperia Z4/Z3+)と同様に、最大2日間の連続利用が可能な大容量バッテリーと省電力機能に対応している。
新たに電源キー部分に指紋センサーを搭載したことで、指紋認証による端末ロック解除が可能になった。最近はFIDO Allianceの発足で指紋認証を使った本人確認に対応したWebサービスの増加が見込まれるなど、今後用途が急増することになりそうだ。Z5への指紋センサー搭載は、先行投資的な意味合いがある。
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