【ロンドン=小滝麻理子】欧州に中東やアフリカから難民や移民が過去最高水準で押し寄せ、危機的な状況となっている。ハンガリーの首都ブダペストの駅では3日、難民を排除していた警察が封鎖を解き、数千人の難民らが駅やホームに殺到し大混乱となった。欧州連合(EU)は14日に難民対策を話し合うが、各国首脳からは緊急対策の早急なとりまとめを求める声が高まっている。
ハンガリーの鉄道当局3日、混乱の拡大を防ぐため、ブダペストの東駅からオーストリア、ドイツなどに向かう国際列車の運行を一時停止した。その後、難民らを乗せた列車が同国の西端の町、ショプロンに向かったとの情報がある。列車がオーストリアに入国できるかが当面の焦点だ。
ブダペスト東駅には、ドイツやオーストリアなどへの渡航を求める難民が数千人規模で連日座り込みを続けている。ハンガリー当局は今月に入り、駅を断続的に封鎖。駅構内から排除された難民らと警官が衝突し、緊張感が高まっている。
EU加盟国への入り口に位置するハンガリーには「バルカンルート」と呼ばれる陸地沿いの道をたどり、内戦の続くシリアやイラク、アフガニスタンからの難民らが足元では1日3千人前後が流入し続けている。今年は計15万人を超えたとされる。難民たちの最終目的地は経済が豊かで職の確保が見込みやすいドイツや北欧、英仏などだ。
ハンガリー以外にもイタリアやフランス、スペインにも難民らが殺到し、欧州全域にわたる問題となっている。EUは14日、加盟国の法相・内相らによる臨時の閣僚会合を開く。受け入れ可能な難民の絞り込みの迅速化と、国ごとの受け入れの分担が協議の柱になるが、調整難航は必至だ。
2015年の難民申請が最大で80万人に達する見通しのドイツのメルケル首相は「難民問題の協調で失敗すれば、我々が望んでいた欧州ではなくなる」と話し、加盟国が難民を公平に受け入れる必要があると強調する。
一方、中東欧では慎重な意見も強い。ロイター通信によると、ハンガリーのオルバン首相は3日、ブリュッセルのEU本部を訪れ「難民問題はドイツの問題であり、欧州全体の問題ではない」と強調し、これ以上の負担については否定する。
責任分担を巡ってけん制を続ける欧州首脳に対し、欧州世論の風当たりは強まっている。きっかけは2日にギリシャ東部コス島に近いトルコ側の海岸で、渡航中に死亡したとみられるシリア出身の男児の遺体が見つかったことだ。欧州メディアでは海岸に横たわる遺体の写真が繰り返し取り上げられ「欧州全体の取り組みが急務だ」(バルス仏首相)との声が欧州首脳からもあがっている。
オランド仏大統領は3日、メルケル氏と電話で緊急協議した。仏大統領府は同日、「難民を欧州で公平に受け入れる対策を仏独が共同提案する」との声明を発表した。
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