インフルワクチン:大量生産可能 予防効果もアップ
毎日新聞 2015年09月03日 20時18分
増殖能力が高く、ワクチンの迅速な大量生産が可能になるインフルエンザウイルスの作製に成功したと、東京大の河岡義裕教授(ウイルス学)らのチームが英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。予防効果も従来のワクチンより高くなるという。
インフルエンザワクチンは、ウイルスを鶏の受精卵で増殖させた後、感染力を失わせて作るのが一般的だが、増殖過程で重要なたんぱく質が変異して有効性が下がってしまう問題がある。変異が起きにくい細胞を使っても作れるが、この場合は増殖の速度が遅くワクチン供給に時間がかかる難点があった。
チームは独自開発した遺伝子操作の手法で、高い増殖能力を持つ可能性のあるウイルスを複数作製。これを変異が起きにくいイヌやアフリカミドリザルの腎細胞へ感染させることを繰り返し、増殖能力の高いウイルスを抽出した。さらに能力を高めるのに必要な遺伝子変異も特定した。
作製したウイルスを遺伝子操作前と比べると、季節性のH1N1型で最大269倍、H3N2型で9.3倍、パンデミック(世界的大流行)が懸念される新型のH5N1型で221倍、H7N9型で173倍の増殖能力の向上が確認されたという。
河岡教授は「新型インフルのパンデミックが発生した場合にも、効果の高いワクチンを十分に供給することが可能になる」と話す。【藤野基文】