PLD 開発史

X-1 (工業局管理コード:PD-207)

概説

本機はPLDとして初めて人間に近いプロポーションを持つことで知られる。これは

  1. 手持ち武装の使用を前提として立位で武装を地面に接触させないことと格闘時の末端重量の増大を嫌った結果、既存のPLDと比較して格段に短い作業肢を装備したこと
  2. パイロット防護の観点からコクピットを機体背面に移し、主照準装置の可動範囲を広く取るために従来コクピットが存在した場所に「頭」を設けたこと
の2点に因るところが大きい。

戦場においてはこのプロポーションから敵味方に「巨人兵」という心理的イメージを与え、戦力として以上に士気に与える影響が大であった。ことに地球派遣軍兵士は本機の主照準装置の大型レンズから「サイクロプス」と渾名し、恐れることとなった。(以後開発局は戦闘用PLDの要求項目に相手に与える心理的影響という項目を追加し、X-3やX-4といったヒト顔PLDを生むこととなる)

機体構造

機体構造にはブロック構造が大幅に取り入れられており、損傷時の修理を容易にしている。特にコクピットブロックは単座型・複座型のコクピットを本体側の調整を必要とせずに載せ変えることが可能であり、必要に応じて用途を切り替えて使用できた。このため複座型のX-1/Bという呼称はあくまで複座コクピットを搭載した状態の機体を表わしたもので、シリアル上では単座型X-1とは区別されておらず、ブロック番号も両者のものが併記されている。(実際にはコクピットブロックの生産数の不足から複座コクピットは転換訓練及び各種試験にのみ使用され、配備先においてコクピットを載せ変える事は無かった)本機のブロック構造は損傷機の短時間での戦場復帰を可能にする一方、コストの増加を招き、また前線において手に入るパーツを使用しての修理が行われる結果、前線ではX-1シリーズ各型の部品が入り交じった機体が見られることとなった。

駆動系

本機の駆動系には製造コストを度外視して燃料電池を動力源とするPAMが全面的に採用された。これは超伝導リニアモーターの戦傷時の脆さ(クエンチ等による2次被害の発生)を嫌ったものであるが製造コストもさる事ながら整備にも非常に手間暇が掛かる代物で整備兵泣かせであったといわれている。

装甲

そのいかつい外見とは裏腹に本機の装甲は軽量化の犠牲となっており、コクピットや燃料電池周辺を除けば軽量ライフル弾を防ぐのがやっとの強化プラスチック・セラミック積層装甲で、重点防御された部分でも軽量金属による補強がされているものの重機関銃の連射を受けると貫通される程度でしかなかった。これは戦闘の激化とともに問題となり、X-1C/Nに至る改良の中で各種装甲への換装を行った。

コクピット

前述の通り本機のコクピットは既存のPLDと異なり機体背面に設けられ、防弾のため密閉構造となっている。コクピットへの搭乗はシート後方のハッチ(下端をヒンジに下方まで開き、ラダーを兼ねる)から行い、シートは乗降を容易にするために90度右に回転する。この密閉構造のためパイロットはすべての外部状況をモニタ越しに得ることとなった。当初は正面に12inディスプレイが二つ縦に並び照準及び機体状況監視に使用され、その両脇に後方及び側方視界を確保する8inディスプレイが一つずつ並んでいた。しかしこれは死角を補うために多数のモニタ画像の切り替えを行う必要が発生し、パイロットのワークロードの増大を招くこととなる。この問題は障害物が多い地形で活動するPLDにとって致命的であり、PLD単独での行動を制限するものであった。コクピットは生産が進むにつれ段階的に更新されていったがX-1C シリーズで導入されるANVTGの導入まで決定的な解決を待つこととなった。
複座型(X-1/B)ではコクピット前面のモニタ類はそのままにコクピット背面を箱型に広げてサイドバイサイドに二つのシートを設けている。左側席はやや幅が狭くなっているものの単座型の装備をそのまま流用しすべての操作が可能であるが、右側席にはスペースの関係で最低限の操作系しか装備されていない。またモニタ類は共用である。このため単座型に比べるとやや操作性・状況把握に難があったが本機は基本操作が既存のPLDと変わらないことや(X-1運用中はパイロット資格者が機体よりもはるかに多かった)シュミレータの充実などから兵装操作練習機程度で十分であるとされた。また構造上シートを回転させる空間が無かったため、出入りはシートの背を後方に倒して行うよう変更された。

兵装・FCS

本機は固定武装を持たず、肩にある二つのパイロンに(X-3では降下ユニットを装備する位置に設けられている)武器を搭載した。このパイロンは後のX-3シリーズとは異なり仰角のみ変更可能で、目標への指向は機体姿勢を変更して行った。また作業肢にも武器を持ち、使用することが可能であった。本機の設計に当たっては開発期間の短縮のため極力既存の武器を最小限の改造で流用することが決定されていたが、前線の部隊では制式武器以外にも手近にある武器を簡単な改修を施した上で使用することも行われた。当初計画された武器を全て装備可能となったのは中期型以降であり、初期型は105mm無反動砲等の武器の装備テストは未了であった。FCSはこの後オムニ独立軍PLDのFCSを一貫して開発して行くこととなるシステム・データ社のデジタルコンピュータを中心に構成されていた。デジタルコンピュータの採用は計算精度を機体してのことであったが容量不足による逐次処理と肩パイロン装備武器の照準の一環として機体姿勢を変えざるを得ないX-1の武装システムが災いし、肩パイロンに装備された大火力兵器使用時の射撃態勢移行及びリカバリーには時間が掛かる事となった。この欠点は後にX-1C/Nが登場しても尾を引くこととなる。

ブロック概説

X-1シリーズは生産中の改修をブロックナンバーで表示したが、実質上単座・複座の差はコクピットブロックのみである上に両者は容易に転換可能であるため、両方のブロックナンバーを併記する独特の表記方法となった。

ブロック0 (PD-207Y)
X-1の試作機。2534/12に2機(WA-22001/002)が相次いでロールアウトし、テストに従事した。両機とも量産ブロックのテストの為に頻繁に改造された他X-1Cの装甲テスト等にも従事している。
ブロック1/25 (PD-207A)
X-1シリーズ最初の量産型。実質的にはブロック0のテストが未了の内に生産が開始された増加試作型と言える。独立戦争勃発時には12機が完成しており、各種テストに使用されていた。開戦に伴い2535/6には独立軍開発局より器材・人員を引き抜く形で1個中隊が第2師団に配備されている。
本ブロックが配備された時点では一部武器はテストが終了しておらず、特に大火力を有する無反動砲、大口径狙撃銃等の装備ができない事から、戦力としては計画に満たないものであった。後に残存機はブロック30/50相当装備へ換装されている。生産数は27機(WA-23001/027)、内5機が複座型(Blk25)として完成した。
ブロック30/50 (PD-207B)
独立戦争初期の戦闘(主としてニペルヴフ防衛戦)のフィードバックを受けてアビオニクス及び行動時間の延長を中心に改善された中期量産型。本ブロックより当初予定されていた全武器が使用可能となり、火力的にも充実した支援を行えるようになった。
生産開始・実戦配備とも2535/11 から開始されたが、緒戦のナキスト陥落及び生産拠点の戦略疎開の実施と生産時期が重なったことにより生産ペースは月4機程度。生産数は40機(WA-23028/067)、内複座型として完成されたのは4機。(複座型の割合が少ないのはは前線における戦闘型機(=単座)の需要と訓練用シュミレータの完成によって練習機の必要性が減少した事による)
ブロック60/65 (PD-207C)
2536/8から前線に登場した装甲強化とFCSの改善を中心とした後期量産型。工業疎開による混乱がようやくなくなり、平均月産9機のハイペースで生産された。(最終機の引き渡しは2537/1/28)
装甲よりも運動性を重視した設計であったX-1も直接戦火を交える前に地球派遣軍の支援砲爆撃による損害が続出し、装甲の強化を迫られる事となった。本ブロックではセラミック装甲を基本装甲外面に追加装備する事で対策とした。なおX-1Cで採用されたリアクティブ・アーマーを装備して完成した最後期型16機をブロック60Aと呼ぶことがある。
FCSの強化はこれまでの光学式測遠機に加えてレーザー測遠機を追加し、照準精度の向上と時間の短縮を図ったもの。(測遠機の多目標捕捉能力は付与されていない)生産数は53機(WA-23068/120)、内複座型は5機。
2537/3頃ともなるとX-1C, X-1C/Nシリーズの部隊配備も軌道に乗り、陳腐化が始まったX-1は徐々に前線を離れることとなった。常に不足がちな戦闘用PLD戦力を少しでも補うべく始められた各種PLD転用計画Project Lion Heartの元、X-1の中で程度の良いものをX-1C, X-1C/N規格に再生する案が持ち上がった。フレームが事実上変更されていないため技術上の問題は無かったものの生産コストが新造とさして変わらないため、改造計画が立案された段階で中止された。
ブロック80 (PD-207T)
Project Lion Heart中止後、運用コストの高さから余剰器材と化していたX-1の利用計画としてX-1C, X-1C/Nの練習機として使用する案が持ち上がった。これはただでさえ少ないX-1C/Nシリーズの複座型に指揮管制機としての需要が高まり、練習機として複座機を確保しにくくなったことからただちに実行に移されることとなり、2537/5にはProject Tamerの名でブロック1/25から4機(いずれもブロック30/50改修機)、ブロック30/50から9機がX-1C/NB相当に改修され、転換訓練部隊へ配備された。その後同様の趣旨のProject Tamer II, 同 IIIが実施され、X-1C/N系練習機として改修されたX-1は総計31機に及んだ。Tamerにおける改修はコクピットのインターフェースこそX-1C/NBに準じたものであったがコスト削減を主な理由として機体は主としてセンサー関連の必要最小限の変更以外はオリジナルのブロックのままであった。そのため運用上の混乱を避けるため全機が訓練部隊に配備された。

X-1C (工業局管理コード:PD-298/301/303)

概説

本機はX-1に欠けていた全天候運用能力を加えることで、あらゆる局面に対応できるPLDを作り出すべくX-1の制式採用と同時にその開発が開始された。X-1にもまして複雑な電子装備はそのコストを釣り上げることが確実だったため開発初期より、必要最小限のセンサーのみを装備した廉価モデルとセンサー類をフル装備した指揮官機とで混成部隊を編成することが考えられていた。

機体構造

基本的なフレームやブロック構造はX-1を踏襲しており、お互いに部品を共用できるなど運用面にも考慮した形となっていたが、これは同時に能力の飛躍的向上を阻むものでもあった。特に新たに採用されたRH社製燃料電池は大容量であると同時にPLD搭載用としては極めて大型であり、リアクティブ・アーマーの採用共々電子装備の追加に際してスペース不足という問題を投げかけることとなる。

駆動系

度重なる装備の追加(特に装甲の強化)によって低下した運動性を補うべくPAMの出力強化が図られ、総出力はX-1 Blk1/25に比べ4割増しとなった。また電子装備の強化による消費電力の増大は著しいものがありPAMの強化以上に電源容量を要求することとなった。これに対し、新技術の性急な使用(後にX-3においてPFCとして実用化される)によるトラブルを嫌ったレイランドダグラス社はルーグハイルトン社製の大型PFCを使用することで活動時間を確保した。

装甲

X-1の運用開始直後から問題となった装甲の不足に対処するべくX-1Cではリアクティブ・アーマーを採用することとなった。これは非常に場所ふさぎで機内容積を圧迫したが当時短期間で量産へ移行可能な装甲システムとしては有効なものであった。
捕獲された地球派遣軍の中戦車の増加装甲システムを参考に開発されたそれはX-1では対抗できなかった重機関砲による攻撃を耐え凌ぐなど目標を十分に満たした。
しかしX-1C/Nでは機内容積確保のため積層装甲を採用したが、量産体勢を確立する為にはしばらくの時間が必要となった。

コクピット

のちに戦闘用PLDの標準装備ともなるANVTGを採用し、X-1で問題であった戦闘時の視界の確保という問題に一応の決着を見る。またHOTASの採用は機種転換を困難なものにしたものの、それを上回る操縦性の向上を見ることとなり、ANVTGの採用と合わせX-1と比較した戦闘能力はコクピットシステムだけで倍増したと言われる。
開発の主眼でもあった全天候夜間運用能力についてはX-1Cではコスト削減のため視野が狭い照準用の暗視装置しか装備せずレーダーも装備しなかったがこれはセンサー類を完備したX-1C/Nと連携することで補いうると想定された。しかしX-1C/Nに搭乗する指揮官にはその様なゆとりも無く、当時使用可能なデータリンクシステムにも完全な連携を行うだけの能力が無かったためこの構想は破綻し、生産はX-1C/Nへ全面的に移行するとともに複座機の指揮官機としての運用が行われた。
ANVTG/HOTASと並ぶコクピットの変更として射出座席の採用があげられる。戦闘機用の00射出座席と同じシステムのもので、射出シークエンスに入るとまずコクピット背部と上部の装甲を爆発ボルトで排除した後に座席が30度後方へ傾き、開いた空間を斜め後方に射出される。パイロットは高度にして20m程度まで打ち上げられ、パラシュートにより降下する。このシステムは開発試験中は良好な成績を収めたものの、射出時のPLDの姿勢(正面から攻撃された場合かなりの確率で仰向けになる)や周辺の障害物の存在(PLDは基本的に開けた地形では使用されなかった)によっては地面や障害物に叩き付けられることになるためパイロットには不評で、誤動作を嫌って座席下の射出用ロケットモーターを取り除く例も多かった。なお複座型のコクピットではスペース不足から射出時のブラスト対策が十分に行えないため射出座席は装備されなかった。

兵装・FCS

兵装は基本的にX-1と同様であるが地球派遣軍の航空優勢下における作戦行動を前提とし、赤外線誘導型空対空ミサイルを改造したものを肩部パイロンに地対空ミサイルとして搭載できるようにされた。これに伴うFCSの改修は頭部主照準機の仰角増大と追従速度の向上を中心とし、火器管制コンピュータには大きな変更は行われなかった。

ブロック概説

PD-298Y
X-1制式化と同時に開発が始められたX-1機体性能向上型試作機。2機が製作され(WB23111/112)X-1C,C/Nシリーズのテストに従事した。
X-1C
ブロック 5 (PD-301A)
PD-301Yの実績を元にした初期量産型。PD-298Yにおいてテストされたアビオニクスの内、X-1C/Nとの連係を前提にレーダーや一部の赤外線映像装置を除き、量産性を優先させたベーシックモデル。2536/7月に1号機がロールアウトした。
ブロック15 (PD-301A)
緒戦において周辺に展開する歩兵部隊にリアクティブ・アーマーによる自傷事故が相次いだため装甲形状を変更したもの。機体自体はブロック5と変わらないためブロック5も随時装甲を換装してブロック15仕様となった。2536/11末より生産ラインの転換を開始。2537/8までの間にブロック5/15合計で97機生産された。
(WB-24001/24097)
ブロック25 (PD-301E)
ブロック5/15で露呈した夜間全天候能力の不足を補うべくデータリンクの強化を行ったモデル。効果は期待されたほどではなく、以後X-1Cの生産は全面的にC/Nへ移行することとなる。また本ブロックは全機がブロック65/75改修を受けている。2537/8から2537/9に掛けて13機製造。(WB-24301/24313)
X-1C/B
X-1Cのコクピットを複座にした練習機。X-1C,C/NはHOTAS/ANVTGを採用した結果操作性が既存のPLDとは大きく異なり、パイロットの転換訓練には多大な訓練を必要とした。これはシュミレータの充実だけではカバーしきれず、X-1に比べて複座練習機の重要性は増すこととなっためX-1Cシリーズの初期生産においてはX-1C/Bが重点的に生産された。またPLDの単独運用に伴う指揮管制機としても使用された。
ブロック10 (PD-301B)
X-1Cブロック5に対応する複座型。2536/7に生産を開始し、2536/10までは転換訓練の必要性からブロック5に優先して生産された。ブロック15登場後は同様の装甲の変更を行っている。26機が生産され、後に10機がブロック20仕様に改造されている。
ブロック20 (PD-301D)
X-1C/N用練習機としてセンサー類をブロック35同様としたもの。機体自体はブロック10と同様であるため他のブロックに比べ行動時間等が低下している。
生産数24機。
ブロック22
指揮管制用としてブロック10/20を改造したもの。これらの改造は主として野戦修理廠で行われたため機体によって改造の度合も異なり、ブロック番号も識別上設けられたもので正式に生産計画を認められたものではない。サブシートに通信機を追加装備しただけのものから装甲・動力系統まで変更してX-1C/NDも同然になったものまであり総数は不明。
X-1C/N
ブロック35 (PD-303C)
ブロック5をベースに指揮官機としてPLD部隊の夜間行動能力を確保するためにレーダーを搭載し、赤外線映像装置を強化したモデル。PD-298Yでテストされたアビオニクスのほとんどを装備した「本当の」X-1Cとなった。大型PFC搭載の容積確保のため、コストの観点から採用が見送られていた積層装甲を採用した。
2536/7より2537/8の間に33機が生産された。(WB-24201/24233)
ブロック45 (PD-303E)
X-1Cブロック25に対応したデータリンク強化モデル。前述の通りX-1C,C/N混成編成の限界から主としてX-1C/NDと混成で運用された。また本ブロックは燃料電池用増加タンクを使用可能であるが、配管は特殊部隊向け(第177大隊第1中隊)の機体を除きプロビジョンのみとなっている。2537/9から2539/1の間に103機が生産された。(WB-24234/24299,24401/24463、ブロック55を含む)
ブロック55 (PD-303F)
ブロック45をベースに局地戦(主として都市攻略戦)向けに装甲を強化したモデル。
肩部パイロンを固定式に変更または撤去して浮いた重量を装甲に回したため一部重火器の使用に制限がある。また増加燃料タンクは配管はされているもののタンク自体に装甲が無いため通常は使用されず、作戦目的に対し運用時間が不足気味と言われた。2538/6より2539/1の間に26機がブロック45の生産ラインより引き抜かれ改修された。当初はそのほとんどが第177大隊第2中隊に配備された。
ブロック60 (PD-303G、計画のみ)
派遣軍も汎用PLDを前線に展開しつつあることから対PLD戦の発生が予想された。
そのため対PLD近接戦闘能力の強化を狙って装甲や作業肢の強化を図ったモデル。並行してアビオニクスの一新を目的としていたブロック65/75と統合され日の目を見ることはなかった。実戦配備は2538/12を予定していた。
X-1C/NB (ブロック37、PD-303T)
X-1C/Nのコクピットを複座にした練習機、計画のみに終わった。設計自体はX-1C/Nと平行して完成していたものの、PLD生産の生産占有率の絡みから生産は無期延期となった。このためX-1C/Nへの機種転換訓練はX-1C/Bを使用して行われていたが、X-1C/Bの指揮管制機への転用による不足及びPLD生産のX-1C/Nへの本格的移行を前に2537/3に再度生産計画が立案された。しかしProject Tamerの開始により1号機が生産ラインに乗った時点で生産計画は破棄され、同機はX-1C/ND先行量産1号機として完成された。
X-1C/ND
PLDの単独運用を行うに当たって問題となった部隊の指揮管制を行うためにX-1C/NBの設計を母体にデータリンク系を強化して指揮管制機としたもの。右側シートの操縦系統はすべて撤去され、専用の戦況表示装置や通信機に置き換えられた指揮官席となった。増大した電力消費を賄うため燃料電池を増設したため、武器搭載量がかなり減少している。(通常は自衛用SMGと対空ミサイル1発)生産時期や生産工場によって電子機器の違いが大きく、生産数も少ないため一つとして同じ機体が無いとまで言われるが生産計画上は以下のように分類される。またシリアルはX-1C/Bのものを流用している。
ブロック37 (PD-303D-0)
X-1C/NBの基本設計をそのままにサブシートの操縦系を指揮管制用電子機器に置き換えた先行量産機。生産数2機。(WB-24151/24152)
ブロック39 (PD-303D)
ブロック37に短波系中距離通信機を増設したベーシックモデル。ブロック35/45をベースとして7機が生産された。(WB-24153/24159)
ブロック52 (PD-303H)
ブロック39が小隊より大きなレベルでの指揮能力が不足したことから戦術コンピュータを強化したもの。ブロック45ベースの新造5機及びブロック37/39からの改修機9機。(WB-24160/24164 & WB-24151/24159)
ブロック57 (PD-303J)
ブロック52をX-1C/N MkIIの設計完成に合わせて同機と同等の作戦行動能力を持つよう改良したモデル。主として駆動系の強化と燃料電池のPFCへの換装を行ったが、機体構造としては未成に終わったブロック60にもっとも近い。生産数は新造23機。(WB-24165/24187)
X-1C/N MkII
装甲及び近接戦闘能力の強化により地球派遣軍の新型PLD(TS-2シリーズ)への対応を図ったもの。またアビオニクスを一新し、新型データリンクの搭載により夜間全天候下での部隊運用能力を向上した。増大した電力消費を賄いつつ行動時間を確保するためにPFCの初期モデルを採用している。装甲の強化に当たっては上部装甲を複合素材中心にするなど、軽量化を図ったが自重の増加は避けられず、トップヘビー気味であった。X-1C/NDとの連携を前提としており、通常本型3乃至4機とX-1C/NDで小隊を編成した。
ブロック65/75 (PD-303G)
2539/1より35機が生産された。(WB-24501/24535)当初計画では指揮管制機としてコクピット以外は同一装備の複座型が計画されたためX-1以来の2重ブロック番号となった。複座型はX-1C/NDの後期型の登場により生産されなかったが2重ブロック番号が残されたのは情報撹乱のためと言われる。
ブロック65A (PD-301K)
X-1C/N MkIIは新造機に加えX-1C及びX-1C/Nからも改修された。ブロック65A/75AはX-1Cからの改修機で43機が改修された。
ブロック65B (PD-303L)
同様にX-1C/Nから改修されたもの。初期ブロックの内68機が改修された。

X-2 (PD-S401)

概説

オムニ・マイスター開発計画においてプロトタイプとして開発された。これに伴いYD-540はYX-2と呼称されることとなった。X-3の生産ライン立ち上げ試験を兼ねて23機が2539/7から/8の間に生産された。これらの機体はYD-5401号機と同じ仕様で作られており、センサー類は操縦訓練に最低限必要なものしか搭載していない。主としてX-3への転換訓練に使用されたが一部の機体はYD-540と共にX-3搭載機器のテストにも使用されている。

ブロック概説

ブロック5
YD-5401号機仕様。23機生産、主として操縦訓練に使用された。
ブロック10
YD-5402号機仕様。2機がブロック5より改造され、のちにX-3R,X-32Rのプロトタイプとして搭載機器テストに使用された。
ブロック15
YD-5403号機仕様。3機がブロック5より改造され、兵器搭載テストに従事した。
ブロック20
YD-5404号機仕様。改造された数は不明、必要に応じ適当な機体に一時的にセンサー類を追加したものと思われる。機体姿勢制御コンピュータのパターン学習用に使用された。また、この機体よりコクピットはシステム50が装備されている。
ブロック20/10
降下ユニット開発に準じて、ブロック20より6機が改造され、輸送機からの高高度降下、密集降下などあらゆる空挺降下テストに使用された。
ブロック30/5R
ブロック20より3機がR型の構想実験機として改造された。

X-3A (PD-505)

概説

オムニ軍がPLDを本格的に兵器として研究に着手したのは2532年初頭の事である。
そして様々な経緯を経てPLDは進化を続け、2539年12月に正式採用されたX-3A型により兵器としてのカテゴリーを築き上げる。
第3世代型と言われるX-3A型は、航空機からの空挺降下による緊急展開、展開後の単独ミッション遂行能力を可能にし、PLDのプロファイルに大きなキャパビリティをもたらした。軍の要請によりPV(初期生産機型、ブロック5、39機生産)からPLD単独編成の特殊部隊に配備され、性能向上型の研究開発においても実戦データの積極的なフィードバックにより、他の機体と比べて、より実戦的な進化を続けていったのも本機の大きな特徴の一つである。

機体構造

プロトタイプであるYD-540を継承し、さらに洗練されたスタイルはブロック0から完成度の高さを見せていた。今回の全規模開発によるX-3型のスタイリングは、後のPLDに多大な影響を与え、継承されていくことになった。

駆動系

従来のPAMに変わるBEPAMとルーグハイルトン社製PFC「H-120-PPU」とのカップリングにより、単なるマニューバビリティの向上だけでなくPLD単独による特殊部隊編成という構想を見事に実現させた。

装甲

X-3Aに採用されている複合装甲は、3段階に積層されたラミネイテッド・アーマーで、X-1C/N型運用の経験から得たデータにより新たに研究開発された物。また、コクピットの外部装甲にはスペースチタニウム、CNMF(金属カーボンナノチューブ系炭素繊維)のFRM(繊維強化金属)を使用している。

コクピット

オートバイに酷似しているコクピットは、PD/S-401を継承したシステム50と呼ばれるレイアウト。2世代型と呼ばれる
ANVTGとフロントパネル全面に及ぶ大型MFDの併用、さらにWANTISの使用によりX-1C/Nの3倍に近い情報量をリアルタイムで取得可能。

ブロック概説

ブロック0 (PD-504A)
2539/6に4機が生産されたX-3A試作機。3号機と4号機はそれぞれX-3C、X-3Rの試作機として改修された。X-2の量産試験による生産性向上のためのフィードバックを受けてX-3A (PD-505)として量産化される。なお、1号機がテスト中の事故で失われている。
ブロック5
初期生産モデル。2539/12から2540/1に掛けて39機が生産され、第177特務大隊第1及び第3中隊へ配備された。
ブロック15
第177大隊第1中隊向けに空挺降下関連の装備を省き、空いたスペースに予備バッテリー及び備品収納庫を増設した長期作戦遂行能力向上型で2540/1から49機が生産され、外装増加バッテリー用ケーブル等を省略した機体は通常部隊にも配備された。
ブロック25
第177大隊第3中隊向けに画像データリンクを強化するとともに姿勢制御コンピュータをカーゴバードに対応させたモデル。2540/2から20機が生産されたほか第3中隊配備のブロック5の内7機がオーバーホールの際に改造されている。
ブロック27
ブロック25の機体にX-32同様のルーグハイルトン社製PFCJ5-3M-220C」を換装した出力向上型。X-32の開発母機として使用され、後にX-32の生産が軌道に乗るまでのタイムラグを埋めるため、第3中隊のブロック25は全てブロック27に改造された。
ブロック35
ブロック15をベースに通常部隊向けに必要でないとみなされた各種装備をストリップダウンする一方でコクピットのパッド類の調整幅を広げ、パイロット毎の設定を容易にしたモデル。2540/3から2541/1の間に138機が新造されたほか、ブロック5/15/25から34機が改造されている。取り外された主な装備としては
  1. 空挺降下ユニット取付部及び関連アビオニクス(ブロック15で省略済み)
  2. 増加燃料タンク取付部及び配管
  3. DRu35用管制レーダー
がある。ただしブロック5/15/25からの改造機ではこれらの装備取り除くことはせずにそのまま残してある機体が多い。対空能力が低下していることを補う意味で空挺降下ユニット取付部にX-1Cシリーズ向けの対空ミサイルポッドを取り付け可能にしてある。

X-32

概説

優秀機と称されたX-3型であっても、陸海空軍と海兵隊を含めた四軍の異なる要求を全て満たす事は困難であった。特にX-3A型は開発時から航空機からの空挺降下能力付加に焦点が置かれたという事もあり、軍のRFPも空軍よりに傾いていたのも事実。そうして、他の3軍の意向を反映し追究した結果がX-32型である。
陸軍の意向であるサバイバリティの強化には上部装甲の追加、それに伴う重量増加対策にルーグハイルトン社製の新型PFC「J5-3M-220C」を採用。フリクションロス等の改善により総合機動性能の向上が図られている。また、海軍の複合任務の運用能力向上という意向には、アビオニクスの強化に伴うコンピューターのソースコードの、MSW、EW、CNI等の大幅増加で対処している。また、X-32型はX-3型の制式採用時に生産コストと量産体制の確立までに時間を要する関係で採用を見送られた複合螺旋型BEPAM(通称E-BEPAM)及び新型アビオニクスをX-3のフレームに搭載したものである。
YX-3ロールアウトと時を同じくして開発が終了したE-BPAMは2539/9にX-2ブロック20の2機を改造して実機試験が行われ、YX-3に比較して格段の機動性・出力の向上を実証した。しかし試験終了時点(2539/11)ではX-3への生産ラインの変更がようやく目処がついたところでもあり、E-BEPAMの使用は無期限延期となった。しかし2540/1に情報部よりもたらされた派遣軍の次期戦闘用PLD (TS-3シリーズ)のスペックがX-3すらも凌駕するものであったため新型アビオニクスと合わせて急遽採用に移されることとなる。しかし懸念されたとおり肝心のE-BEPAMの量産体制が整わず、独立戦争がTS-3の本格的運用前に終結したことと合わせ、特殊部隊向けとして小数が生産されたに留まった。専用の生産ラインは設けられず、OMI社のX-3生産ラインから抜き取り、隣接したダイブワークス試作ラインで以後の組み立てを行なった。事実上増加試作機のみの生産のため明確なブロック分けはなされていないが、第177大隊ではベースモデルをブロック5、空挺降下ユニット使用可能な機体をブロック10、水密改修を行いシールドスーツを使用可能とした機体をブロック25と称していたようである。
X-32型は生産コストの面から最後まで量産には移行せず、独立戦争終結後に第177大隊が解散した後は原隊復帰したパイロットの一部が引き続きX-32型を使用したものの、補給・整備の困難と合わせ短期間の使用で終わった。なお独立戦争終結後X-4の導入までのつなぎとして、X-32/Rと同様のアビオニクスの改修がX-3A/Rブロック35に対して行われている。

ブロック概説

X-32 (PD-6051)
X-3Aと共通のフレームにE-BEPAMを使用した駆動系と新型アビオニクスを搭載したもの。2540/4から2540/11の間に計35機が生産された。全機第177大隊第1及び第3中隊に配備されたが前述の半ば家内制手工業的な生産形態から大隊からの要求に応じて増設タンクや空挺降下装備などを随時変更した上に大隊内での装備の融通もあるため時期によって装備の差が激しく、ブロック別の生産数は不明。
X-32C (PDC-6052)
X-3CのフレームにE-BEPAM駆動系を装備した機体。X-32と同様の期間に29機が生産され、第177大隊第2中隊を中心に配備された。生産ブロックの内訳が不明なのはX-32と同様。
X-32R (PDR-6053)
新しい送受信系の全面採用により機体表面のアンテナ面積を半減させ、装甲で置き換える事でX-3Rの脆弱さをX-3Aとほぼ同等なまでに改善した索敵機。
E-BEPAMの採用による駆動出力の増大は装甲増加による重量増で相殺され、機体性能自体はX-3Rと変わらない。肩部アンテナの半減により右肩武装パイロンが復活している。ただし、荷重バランスや衝撃がセンサー類に与える影響の関係で一部武装に制限がある。アビオニクスの調整に時間が掛かったためロールアウトはやや遅く、2540/6から2540/10の間に11機が生産され、第177大隊第1及び第3中隊で使用された。

(POWER DoLLS DATA BASE Ver.1.00 より抜粋)

閲覧数: 3653 / 最終更新:2008年3月7日 / 表示にかかった時間:0.0072675秒