福祉手帳の性別削除へ 性同一性障害者に配慮
厚労省 2014年にも
厚生労働省が「精神障害者保健福祉手帳」の性別欄を2014年にも削除する方向で検討に入ったことが厚労省などへの取材で分かった。性同一性障害(GID)の人の一部が所持しており、心と異なる性別の記載を苦痛に感じていることに配慮した。
GIDの人らでつくる団体によると、マイノリティーの苦痛に目を向け国がこうした文書から性別を削除するのは初めてとみられ、国所管の他の証明書や公文書にも広がることが期待される。厚労省によると、保健福祉手帳は精神疾患によって生活に支障が出ている人に交付される。GIDは精神疾患の1つとされるが、診断だけでは交付の対象とならない。
手帳によって税の控除や一部交通機関の運賃割引などの支援を受けられるが、厚労省は「割引などは性別とは関係ない」と判断。今後省令の改正作業を進め、パブリックコメント(意見公募)などを経て都道府県と政令市が新しい手帳を交付する。
厚労省などによると、保健福祉手帳は障害者手帳の一種で、昨年3月時点で所持者は約63万5千人。このうちGIDの人の数は分かっていないが、心に重い悩みを持ち続けた結果、別の精神疾患を発症するケースもあるという。
GIDの人らでつくる「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」(東京、山本蘭代表)は保健福祉手帳のほか、パスポート、健康保険証といった公的な証明書などの性別欄の削除や表記変更を国に求めている。ただ健康保険証は、性別が不明となることで治療に支障が出るとの指摘もある。
会によると、現在は手帳を提示する際、戸籍上の性別が明らかになる恐れがあるため、利用を控える人が多いという。
研究者の調査を基にGIDの人は全国に約4万6千人いるとの推測もあるが、詳しい実態は分かっていない。
障害者手帳には他に身体障害者手帳と知的障害者のための療育手帳がある。身体障害者手帳は省令で性別の記載を求めていないモデルが定められているが、一部の自治体では独自の判断で性別を記載しているケースもある。一方で療育手帳は厚労省の通知で性別欄のあるガイドラインを示しているが、記載の有無は自治体ごとに異なる。
性同一性障害(GID) 心理的な性と身体的な性が一致しない障害。自分の体を不快に思い、心の性に従って生きたいと望む。原因は未解明だが胎児期のホルモン異常などの説がある。治療法にはカウンセリングやホルモン療法、性別適合手術などがある。2004年施行の特例法で家庭裁判所に性別変更を請求できるようになり、12年までに約3600人が認められた。性別変更をした人はほとんどのケースで、証明書や公文書に性別の記載があることの苦痛から解放されるが、性別変更をしたと分かる記載がされる例などもある。
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