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性別知られたくない 「男」の記載、指で隠し提示

(2013年7月29日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

「気付かれるのが怖い」

 「男」と書かれた手帳の記載を親指で隠す−。九州在住の派遣社員田中美咲さん=仮名、40代=は、そううつ病と解離性障害と診断され、精神障害者保健福祉手帳を交付された。心は女だが、戸籍上は男。手帳提示で運賃の割引や税の控除などの支援を受けられるが、性別を知られたくないという葛藤が付いて回る。

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 「手帳を見せるのは、性同一性障害と告白すること」。肩を落として見つめた手帳には、長い髪に化粧をした写真が貼られている。性別欄には「男」。表紙を見るだけで済ませる人や、中の性別欄まで確認する人など提示を受ける側のチェック方法はまちまちだ。「気付かれるのが怖い」と利用を控えることもある。

 体に違和感を覚えたのは幼いころ。親に買ってもらったロボットや車のおもちゃで遊んでいても、自分が自分ではない感じだった。女の子向けのアニメを見て、人形で遊ぶ方が楽しかった。中学で丸刈りになった時は「死ぬほど嫌だった」。

 自分の体への不快感によるストレスに加え、家庭を顧みない親との対立などが原因で、数年前から精神科を受診。診療の中で性同一性障害の疑いがあると指摘された。

 ずっと気にしていた性別欄が手帳からなくなる見通しとなったことを知り「少しでも周りを気にせずに暮らせるようになる」と笑顔を見せる。

 一方で、健康保険証やパスポートなど性別欄がある証明書は多い。「医療関係は削除は難しいと思う。でも、用途と関係がないものは記載をなくしてほしい」と訴えた。

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