ネットバンク被害:上半期15億円超 信金で急増
毎日新聞 2015年09月03日 11時18分(最終更新 09月03日 14時14分)
警察庁は3日、今年上半期(1〜6月)にインターネットバンキングの口座から現金が不正に引き出された被害が754件、約15億4400万円に上ったと発表した。昨年下半期は減少傾向も見えていたが、一転して過去最悪だった昨年1年間の被害額(約29億1000万円)を上回るペースになっている。地方銀行に代わって信用金庫の被害が急増し、同庁の担当者は「詐欺グループが次々に新しいターゲットを探しているのではないか」とみている。
判明している被害の手口は、利用者が気づかない間にパソコンなどの端末にウイルスが仕込まれるケースが9割程度を占めていた。ウイルスが作動してIDやパスワードを盗み取るなどし、詐欺グループの口座への送金処理が行われていた。
被害を受けた金融機関は昨年1年間と比べ42機関増えて144機関になった。地方銀行がほぼ半減して34機関になった一方、信用金庫は4倍以上の77機関に急増した。信金の被害額は昨年同期の約15倍となる約5億1700万円に増えていた。
信金の被害の7割は法人口座が占める。背景には、昨年被害が増えた地銀で本人確認を徹底するため、法人口座から新規の相手には依頼当日に送金しない「当日送金停止サービス」の導入が進んだのに対し、信金は対策が遅れがちな現状がある。このため各都道府県警は、防止対策の徹底を要請している。
不正送金先の口座は中国人名義が55%、日本人名義が32%だった。全国の警察は58事件で計88人を詐欺などの容疑で摘発したが、多くは現金引き出し役や口座提供者で、リーダー格は浮かんでいない。ウイルスが海外のサーバーを経由して送られていることが捜査を困難にしているといい、警察庁は中国など海外の捜査機関との連携を図るとしている。
また、不正送金の被害に遭わないために、ウイルス対策ソフトをパソコンに入れ、こまめに更新することや、1度しか使えないワンタイムパスワードなど金融機関が提供するサービスを使うことなどを呼びかけている。【長谷川豊】