泰斗のトランス的第六感

トランスジェンダー(性同一性障害)と自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群やADHDなどの発達障害)の問題を中心に、セクシュアリティや障害について考察っぽく。


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初めての方は注意事項に目を通してからお読みください。


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ちょっと前のニュースだが、まずはこちらをご覧あれ。

性別記載なしの保険証交付 性同一性障害の団体代表に…松江市(読売)
性同一性障害の男性の保険証 性別「女性」に変更 厚労省容認方針(産経)




まずは性別表記を裏にしてもらったようだ。

で、今度は表に性自認と同じ「女」と記載される模様。




中身の話をする前にちょっとこちらを。

GIDの保険証(表)から性別表記が消えた件(脳内日常妄想毒本)


この記事にあるように、NHKのサイトでは「性同一性障害の『男性』」という表記をしており、それは注意が足りないと指摘があったばかり。

そのせいかわからないけど、現在はリンク先のNHKのサイトは閲覧できなくなってる。




で……、




産経さん。


人のふり見て我がふり直せって言うでしょ?

「性別」の表記が苦痛だってニュースなんだからさ、少しは考えようよ。




他にも「性同一性障害の『男性』」という表記をしてるサイトはあるんだけど、真面目にニュースとして伝えるならこれはまずいと思う。


MtFという言葉が当事者用語で一般的ではないことはわかるが、だったら他にわかりやすい表現を作るべきだろう。

MtF=男性体の女性、FtM=女性体の男性ぐらいで。


まぁ、MtFを女性と表記することにはまだ抵抗がある人も多いという証拠なのかな。






で、本題。


この上田さんが言う「病院を受診しづらい」というのが、何を指しているのかちょっとわからない。


もし、反対意見にあるように、医者に対してまで体の性別を隠したいと思っているなら、やっぱりちょっと問題ではある。

元の体が男であることや女性ホルモンの投与履歴などは、他の疾患同様告げることが必要なときがある。

全て隠して何かあっても自己責任だとは思うが、医療機関も迷惑するので、俺も一当事者として性同一性障害の評価が悪くなることはやめてほしいと思う。




一方で、受付で驚かれたり疑われたりするのが嫌だと言うなら、よくわかる。


俺は現状、戸籍の名前は男性、性別表記は女性。

当事者がよく言う、「性同一性障害だと説明するのが面倒」というのが如実に現れる状態。

性同一性障害を知ってる人ばかりではないというのも、気を重くする。






しかし、俺が一番困っているのは、説明に場所を選べないことだ。


男性名で「女」の保険証を怪しむのは当然だし、驚かれることにも慣れた。

一見不可思議な保険証も、それが正式なものなので俺は堂々としていられる。


問題は、受付などで当然のように聞かれて説明を迫られることだ。




例えば、病院を受診して表記について質問された場合、隣の受付や支払い窓口に他の患者がいるかもしれない。

また、待合室にも人はいる。

関係ない人にはまず聞かれたくない。


さらに、揉めてしまったら、話の内容まで聞こえなくても目についてしまうので、凝視されて性別を疑われるかもしれない。

「別室でお話します」というのも仰々しいし、果たして対応してもらえるのかどうか。


病院以外で身分証として使うなら、表面に性別表記がない自動車免許証がいいと思うが、俺は現状それもない。








では、どうするのが一番良いのか。


俺の場合なら、保険証の性別は一般男性と変わりなく「男」で表記してほしい。


なぜなら、戸籍上の性別や体の性別を明かさなければいけない場面は、かなり限られているから。

病院では正直に体の性別を明かすべきというなら、診察の時に医師に告げればいい話。

風邪ぐらいで性別は関係ないし、性同一性障害を知ってるかもわからない受付の人に説明する必要はない。

他人に覗かれるリスクもある。




個人データとして戸籍や元の体の性別が必要なのであれば、医療機関や役所のみで閲覧できるように出来ないものか。


もう10年ほど前だが、性同一性障害のカウンセリングで通っていた病院では、診察券の名前も性別表記も男にしてもらったことがある。

もちろん、どちらも正式には女性だった時なので、保険証に基づく明細などは女性でもらう。

医師のカルテには両方記されている状態だったと思う。


しかしこれだけでも、病院で名前を呼ばれる時の苦痛からは解放された。


でも何より不思議だったのは、俺の前に100人以上の性同一性障害当事者が受診しているのに、誰もこの程度のことを訴えていないことだった。

苦痛を緩和するために通っている場所のはずなのに、何で言わないの?








保険証だけでなくあらゆる書類に言えることだが、性別など関係ないのに惰性で表記されていることが多いように思う。

本人確認に性別がそこまで重要だとも思えない。

性別だけなら偽装することはそんなに難しくないし、もし性別に頼るなら逆に犯罪に利用されそうだ。




また、性同一性障害に限って言えば、どちらの性別を表記しようが正しくないだろう。


「性別」という「体の性=性自認」の概念に当てはまらないのが性同一性障害。

だから、表面的には体の性だろうが性自認だろうが注釈が必要になると思う。




特に改名前の俺なら、いつものくせで男子トイレに入ってしまいそうだし、検査着が女性用になるのも嫌だ。

問診時に女性だと思われていることがわかるだけで気分が悪い。


この程度で苦痛だから、風邪ぐらいで病院へは行かない。

お陰さまで体は強いようなので助かってるが。






十数年前に一度、風邪が悪化して喘息になり、病院に行ったことがあった。

改名も治療も一切していない頃だ。


胸に聴診器を当てる時になって、医者が「ん?」という顔をしてカルテを見直した。


「ああ、女か」


『今頃気づいたんか!』とツッコミたい気持ちは一杯だったが、それどころではない体調。

こんなところでパスしたことに喜ぶ余裕もなく、何でもいいから早くしてくれという感じだった。




医師も看護師も何となく察してくれて何事もなかったが、こんな状況で揉めたら最悪だろうと思う。

医療関係者が性同一性障害だと知って対応してくれれば、やっぱり楽だとは思うなぁ。




⇒続報
続・性同一性障害における保険証の性別表記
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