PC のリカバリーの概要
更新日: 2013年10月
適用対象: Windows 8, Windows 8.1
Windows 回復環境 (Windows RE) には、データや重要なカスタマイズを保持したままユーザーが PC をすばやく修復できるようにする PC のリカバリー機能が用意されています。これは、サポートの義務を履行するうえで、平均解決時間の短縮とリソースの削減に役立ちます。
PC のリカバリー機能は、アプリをインストールしたり追加データを保持したりできるカスタム スクリプトを挿入してカスタマイズできます。これにより、カスタム回復ソリューションの開発コストを削減できます。場合によっては、開発の必要がなくなります。
PC のリカバリーで利用できる回復機能を次に示します。
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[PC のリフレッシュ] では、出荷時のイメージを再インストールすることでソフトウェアの問題を解決します。ユーザー アカウント、データ、Windows ストア アプリは保持されます。
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[PC を初期状態に戻す] では、すべてのユーザー データを削除して出荷時のイメージを再インストールすることで、所有権を再利用または委譲できるように PC を準備します。
PC のリカバリー機能は、Windows RE を含むハード ドライブ パーティション、または Windows RE を含む外部メディア (USB フラッシュ ドライブや DVD など) から実行できます。
ユーザーが独自の外部回復メディア (ベア メタル回復) を作成できるように PC を準備できます。ユーザーがハード ドライブ領域を解放して自分で利用できるようにするためのオプションも用意されています。詳しくは、「PC のリカバリー機能を実行するためのメディアを作る」をご覧ください。
ハード ドライブの領域を節約するために、PC のリカバリーのイメージを新しいファイル形式 (.esd) に圧縮できます。「PC のリカバリー イメージの縮小」をご覧ください。
[PC のリフレッシュ] では、ユーザー データ、重要な設定、既にインストールされている Windows ストア アプリが保持されます。
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[PC のリフレッシュ] を利用するには、Windows パーティションに、展開される回復イメージをインストールできる十分な空きドライブ領域に加え、バッファーとしてさらに 20% 相当の領域が必要です。イメージのサイズはできるだけ小さくすることをお勧めします。 |
[PC のリフレッシュ] で実行される処理を次に示します。
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PC で Windows RE が起動します。
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PC のリカバリーにより、ユーザー アカウント、設定、データ、Windows ストア アプリが収集されます。
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機能拡張ポイント: ここでカスタム スクリプトを追加できます。これを行うには、ResetConfig.xml の <BasicReset_BeforeImageApply> にカスタム スクリプトの場所を追加します。詳しくは、「PC のリカバリー機能へのスクリプトの追加」をご覧ください。
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PC のリカバリーにより、回復パーティションにある出荷時のイメージ ファイルが新しいオペレーティング システムの一時フォルダーに展開されます。
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PC のリカバリーにより、システムの重要な設定が新しいオペレーティング システムに適用されます。
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PC のリカバリーにより、古いオペレーティング システムが Windows.old フォルダーに移動されます。
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PC のリカバリーにより、新しいオペレーティング システムが一時フォルダーから現在のインストールのルートに移動されます。
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機能拡張ポイント: ここでカスタム スクリプトを追加できます。これを行うには、ResetConfig.xml の <BasicReset_AfterImageApply> にカスタム スクリプトの場所を追加します。詳しくは、「PC のリカバリー機能へのスクリプトの追加」をご覧ください。
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PC のリカバリーにより、PC が再起動され、新しいオペレーティング システムが起動されます。
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初回起動時に、PC のリカバリーにより、出荷時のイメージが構成され、保持されているユーザー データと設定が再適用されます。
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ユーザーがアカウントにログインします。
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PC のリカバリーにより、Windows ストア アプリが Windows ストアから再インストールされます。
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PC のリカバリーにより、PC に復元できなかったデスクトップ アプリの一覧が作成され、Windows デスクトップにファイルの形式で保存されます。
次の表に、保持されるデータ フォルダーと出荷時の初期状態にリフレッシュされるデータ フォルダーをそれぞれ示します。
保持 | リフレッシュ |
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次のフォルダーは、古い Windows インストールから新しい Windows インストールにコピーされます。
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次のフォルダーは、回復イメージによって初期状態にリフレッシュされます。これらのフォルダーのユーザー データは保持されません。
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[PC のリフレッシュ] の処理が完了した後、保持されなかったファイルを C:\Windows.old フォルダーから取得できます (取得できる期間には限りがあります)。たとえば、C:\ProgramData フォルダーは C:\Windows.old\ProgramData フォルダーに移動されています。 C:\Windows.old ディレクトリのほとんどは Windows タスク スケジューラの自動メンテナンスで削除されますが、C:\Windows.old\Users\ フォルダーはユーザーが手動で削除しない限り保持されます。 |
次の表に、保持されるアプリ、出荷時の初期状態にリフレッシュされるアプリ、ユーザーによる再インストールが必要なアプリをそれぞれ示します。
保持 | リフレッシュ | 保持されない |
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Windows ストア アプリ 。これらのアプリは、古い Windows インストールから新しい Windows インストールにコピーされます。これには、プレインストールされたアプリと Windows ストアから購入したアプリが含まれます。これらのアプリはインターネット接続なしで保持できます。 |
あらかじめ読み込まれたデスクトップ アプリ。回復イメージに含まれるアプリは、ユーザーが既にアンインストールしたアプリも含め、出荷時の状態に戻されます。 PC のリカバリーのスクリプトを構成することで、特定のアプリの設定やデータを後で復元できるように保存することができます。詳しくは、「PC のリカバリー機能へのスクリプトの追加」をご覧ください。 |
ユーザーがインストールしたデスクトップ アプリ。 [PC のリフレッシュ] の処理が完了した後、ユーザーは保持されなかったアプリの一覧を確認できます。この一覧は、デスクトップにファイルの形式で保存されます。 |
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Windows 8 から Windows 8.1 にアップグレードした x64 ベースおよび x86 ベースの PC でリフレッシュを実行すると、PC は Windows 8 に戻ります。このシナリオでは、Windows ストア アプリは保持されません。 |
[PC のリフレッシュ] 機能では、PC の再構成が最小限で済むように、システムの実行を継続するために必要な多くのシステム設定とユーザー設定が保持されます。次の表に、保持される設定を示します。
設定 | 説明 |
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ユーザー アカウントと資格情報 |
各ユーザーのオペレーティング システム設定とアプリ設定。 |
ドメイン参加の設定 |
ドメイン メンバーシップ。 |
ローカル ユーザー アカウントとドメイン ユーザー アカウントのローカルのグループ メンバーシップ |
ローカル ユーザーとドメイン ユーザーのアクセス レベル。 |
Windows Update の設定と自動更新のオプトインの設定 |
推奨される更新プログラムの通知方法と、更新プログラムをインストールできるユーザーに関する設定。自動更新が有効になっている場合、その設定は変更されずに保持されます。 |
データ保護 API (DPAPI) ストア |
キャッシュに保存されたユーザーの秘密情報 (ブラウザーで保存されたパスワードなど)。 |
ライブラリ設定 |
各ユーザーの AppData フォルダーにある \Roaming\Microsoft\Windows\Libraries に .library-ms ファイルの形式で保存されているライブラリ設定。 |
暗号化ファイル システム (EFS) の証明書とキー |
EFS で暗号化されたファイル。 |
ドライブ文字の割り当てとマウント ポイント |
ディスク パーティションとマウント ポイントの一貫したビュー。 |
従来のデスクトップの個人用設定 |
テーマなどのデスクトップに関連する個人用設定。 |
製品利用統計情報のクライアント ID とオプトインの設定 |
製品利用統計情報システム (Windows エラー報告 (WER)、ソフトウェア品質基準 (SQM)、信頼性分析コンポーネント (RAC) など) の設定。製品利用統計情報システムには、オペレーティング システムを初期状態に戻した場合でも、継続して PC の情報が表示されます。 |
マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項の同意状況、プロダクト ID、ライセンス認証の状態 |
ライセンス条項、プロダクト キー、ライセンス認証に関する情報。詳しくは、後の「ライセンス認証の状態」をご覧ください。 |
接続されているアカウント |
Microsoft Online Services (Windows Live など) に接続されているアカウント。接続されているアカウントを保持するには API が必要です。 |
Windows BitLocker ドライブ暗号化と BitLocker To Go の自動ロック解除の設定 |
BitLocker が有効なデータ ボリューム。これらは、基本的なリセットの完了後すぐに利用できます。ボリュームを手動でロック解除し直す必要はありません。 |
地域と言語の設定 |
各ユーザーの UI 言語、ロケール、キーボード/入力方式の設定。 |
ホームグループ設定 |
PC をホームグループに参加させる機能を制御する設定。 |
シェルの設定 |
一部の個人用設定。 |
プログラムとファイルの種類の既定の関連付け |
プログラムとファイルの種類の既定の関連付けに対する変更。 |
ワイヤレス ネットワーク プロファイル |
ワイヤレス ネットワークのパスワード。 |
イベント ログ |
アプリ、セキュリティ、システムのイベント ログ。 |
Out-Of-Box Experience (OOBE) で構成された設定 |
ユーザーが OOBE で構成したすべての設定。 |
[PC を初期状態に戻す] では、出荷時のイメージが再インストールされます。ユーザー データ、設定、アプリはすべて削除され、PC が出荷時の既定の状態に戻されます。[PC を初期状態に戻す] で実行される処理を次に示します。
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PC で Windows RE が起動します。
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ユーザーがアクセスできるパーティションが複数ある場合は、ハード ドライブ全体をフォーマットするか Windows パーティションだけをフォーマットするかをユーザーが選択します。詳しくは、「PC のリカバリー機能を実行するためのメディアを作る」をご覧ください。
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ハード ドライブ パーティションのフォーマットだけを行うか (クイック オプション)、既にあるユーザー データの上書きを試行してハード ドライブのクリーン アップを行うか (完全オプション) をユーザーが選択します。
メモ
どちらのオプションも、政府や業界のデータ消去標準を満たすことを保証するものではありません。 -
機能拡張ポイント: ここでカスタム スクリプトを追加できます。これを行うには、ResetConfig.xml の <FactoryReset_AfterDiskFormat> にカスタム スクリプトの場所を追加します。詳しくは、「PC のリカバリー機能へのスクリプトの追加」をご覧ください。
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PC のリカバリーにより、データ パーティションがフォーマットされます (省略可能)。
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PC のリカバリーにより、回復パーティションの出荷時のイメージが Windows パーティションに適用されます。
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PC のリカバリーにより、システム パーティションにブート構成データ (BCD) ストアが再作成されます。
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機能拡張ポイント: ここでカスタム スクリプトを追加できます。これを行うには、ResetConfig.xml の <FactoryReset_AfterImageApply> にカスタム スクリプトの場所を追加します。詳しくは、「PC のリカバリー機能へのスクリプトの追加」をご覧ください。
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PC のリカバリーにより、PC が再起動され、新しいオペレーティング システムが起動されます。
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Out-Of-Box Experience (OOBE) が開始されます。
ユーザーがハード ドライブを交換する必要がある場合や、完全にワイプする必要がある場合、起動可能な回復メディアを使うことができます。ベア メタル回復で実行される処理を次に示します。
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PC で Windows RE が起動します。
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PC のリカバリーにより、システム ドライブが特定されます。
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PC のリカバリーにより、diskpart スクリプトで指定された各パーティションが再作成され、フォーマットされます。
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PC のリカバリーにより、出荷時のイメージ ファイルが Windows パーティションに適用されます。
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PC のリカバリーにより、Windows RE とディスク上の回復イメージが構成されます。
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Windows が OOBE で再起動します。
詳しくは、「ベアメタル リセット/回復: ユーザーがメディアの作成やハード ドライブ領域の回復を行えるようにする」および「PC のリカバリー機能を実行するためのメディアを作る」をご覧ください。
PC のリカバリー機能を構成するには、パーティションを作成し、イメージをキャプチャして適用することで、Windows を展開する必要があります。Windows セットアップでは、PC のリカバリーの回復イメージの構成や回復イメージ パーティションの準備は行われません。
PC のリカバリーの回復イメージは、ハード ドライブの最後の専用のパーティションに追加することをお勧めします。このようにすると、ユーザーがそのパーティションを削除することで、Windows RE ツールに影響を及ぼすことなく、必要に応じて数 GB 単位でドライブ領域を解放できるようになります。この場合でも、起動に関する一般的な問題は解決できます。
回復イメージ パーティションに対するユーザーによるアクセスやフォーマットを防止するには、次の属性を設定します。
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Unified Extensible Firmware Interface (UEFI)
: パーティションの種類として PARTITION_MSFT_RECOVERY_GUID を設定します。さらに、パーティションの属性として GPT_ATTRIBUTE_PLATFORM_REQUIRED と GPT_BASIC_DATA_ATTRIBUTE_NO_DRIVE_LETTER を設定します。詳しくは、PARTITION_INFORMATION_GPT 構造体に関するページをご覧ください。
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BIOS: 種類の値を 0x27 に設定します。
詳しくは、「PC のリカバリー機能を展開する」をご覧ください。
ハード ドライブ パーティションの構成について詳しくは、「UEFI/GPT ベースのハード ドライブ パーティションの構成」または「BIOS/MBR ベースのハード ドライブ パーティションの構成」をご覧ください。
回復イメージは、Recovery という名前のルート フォルダー内のフォルダーに格納しておく必要があります (例: R:\Recovery\install.wim)。
次のイメージを回復イメージとして使うことができます。
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install.wim という名前の単一の Windows イメージ ファイル。
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install.swm から始まり、以降 install2.swm、install3.swm と続く、一連の分割 Windows イメージ ファイル。各ファイルは 4 GB 未満とし、同じフォルダーに格納する必要があります。「Windows イメージ (.swm) ファイルを複数の DVD にまたがるように分割する」をご覧ください。
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install.esd という名前の圧縮済み Windows イメージ ファイル。「PC のリカバリー イメージの縮小」をご覧ください。
PC のリカバリー機能では、ライセンス認証の状態を保持し、更新とリセットの両方でこれらの設定を保存して移行しようと試みます。移行に成功すると、更新操作後もライセンス認証された状態のままになります。
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ライセンス認証の状態は、いくつかの理由で移行できないことがあります。
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関連項目