発信箱:こちらも解釈変更=落合博(論説委員)

毎日新聞 2014年11月13日 00時44分(最終更新 11月13日 00時44分)

 オリンピックを「五輪」と言い換えたのは読売新聞運動部記者で、戦後はスポーツジャーナリストとして活躍した川本信正(かわもとのぶまさ)さんだ。五大陸を表すオリンピックのシンボルマークと宮本武蔵の「五輪書」から思いついたという。1936(昭和11)年のことだった。

 オリンピックは6文字で新聞の見出しには長く、限られた紙面を節約するための苦肉の策だったといわれている。同じ漢字圏の中国では通じないが、日本では他社も追随して70年以上が過ぎ、すっかり定着している。

 2020年に東京でオリンピックとパラリンピックが開催される。字数の関係からつい「東京五輪」と省略され、パラリンピックが抜け落ちてしまうことが多い。パラリンピックを無視もしくは軽視していると思われるのは意に反する。

 先日、パラリンピックの略称を考えている人に会った。障害者スポーツ大会のインターネット中継などを手がけるNPO法人「STAND」の伊藤数子さんだ。フェイスブックで募集したところ、いくつか集まった。まず「パ輪」。物が割れるようで縁起が悪い。3色(赤、緑、青)の曲線が描かれたパラリンピックのロゴマークから「三輪」のほか、「五輪」と「三輪」を足して「八輪」との案も出ているが、決め手に欠ける。

 五輪をオリンピックとパラリンピックを総称した言葉に捉え直す案が気に入った。解釈変更だ。最初は違和感があっても使い続けていれば6年後にはなじんでいるかもしれない。

 泉下の川本さんが賛同してくれるか不明だが、こちらは閣議決定の必要はない。読者のみなさんの意見を聞かせてほしい。

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