私たちの生活を地獄に陥れる暴力犯罪の主役は、ヤクザから「彼ら」にとってかわられた。『ヤクザ崩壊 半グレ勃興』(講談社+α文庫)を上梓したノンフィクション界の重鎮が彼らの生態を解き明かす。
文/溝口敦(ノンフィクション作家)
過去最悪の被害額
去年、全国の警察が把握した振り込め詐欺など特殊詐欺全体の被害額は約559億円に及び、過去最悪を更新した。
だが、この数字も実際の被害額の半分ぐらいだろうと、詐欺グループのリーダーは見ている。オレオレ詐欺などは、被害者がカネを詐取された次の日には本物の子や孫などと連絡がつき、「騙された」と気づくことになるが、未公開株詐欺やイラクの通貨、ディナール詐欺では、騙された後2~3年も騙されたことに気づかない被害者が多いというのだ。
「ややこしい話ですが、警察が『特殊詐欺』といっているのは『振り込め詐欺』と、『それ以外の特殊詐欺』なんですね。
『振り込め詐欺』には『オレオレ詐欺』『架空請求詐欺』『融資保証金詐欺』『還付金等詐欺』が含まれ、『それ以外の詐欺』には『金融商品等取引名目の詐欺』、『ギャンブル必勝法情報提供名目の詐欺』、『異性との交際あっせん名目の詐欺』、『その他の特殊詐欺』を含めている。
このうち特に『金融商品等取引名目の詐欺』には『いい金融商品を買わせてもらった。来春には上場するようだし、初値が買値の10倍は固いらしいから、間違いなく大儲けだ』と喜んでいる人がいる。こういう人が警察に被害を訴え出るのはまだまだ先の話です」
なるほど。詐欺と確定するまでに時間がかかる詐欺がある。つまり特殊詐欺の年間被害額は559億円に留まらず、1000億円以上に上るかも、と詐欺を仕掛ける側は観測している。罪悪感などは毛ほどもなく、恐るべき自信といえよう。
詐欺に限らず窃盗や強盗、恐喝や横領などカネを取る犯罪を「財産犯」というが、去年、全財産犯の被害額は約1130億円だった。ということは、警察の把握する被害額で見ても、特殊詐欺は全財産犯の約半分を占める。恐喝は暴力団を代表する犯罪だが、特殊詐欺から見れば、恐喝などはごくごく些末な犯罪にすぎない。
そしてこの特殊詐欺をもっぱら仕切っているのが半グレである。
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