北京=林望 ゾルゲ県=金順姫
2015年9月2日23時32分
中国チベット自治区は、成立から50年を迎えた。習近平(シーチンピン)指導部は共産党がもたらした「豊かさ」と民族の団結を訴える一方、宗教への介入を強める構えだ。チベット族居住地域を訪ねると、信仰と民族の誇りを守ろうとする人々が抑圧への抵抗を続けていた。
1965年9月1日、チベットで初めての人民代表大会(議会)が開かれ、自治区が成立した。50年を祝う式典には党指導部メンバーが出席し、自治区の発展と民族団結の必要性をアピールする見通しだ。
同自治区は新疆と並ぶ中国の民族問題のアキレス腱(けん)だ。党は8月末、チベット政策を固める重要会議「中央チベット工作座談会」を5年ぶりに開催。習主席は手厚い経済優遇策を続ける姿勢を強調した。
しかし、インフラや人材などの不足から国営メディアも今後の成長には悲観的な見方を伝える。発展という「アメ」に限界が見える中、座談会で習氏は「寺院の管理システムの建設を進める」などとして、宗教統制を強める姿勢を示した。
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の継承者問題は大きな火種で、中国は「決定権は中央政府以外の誰にもない。ダライ・ラマ本人にもない」(全国政治協商会議民族・宗教委員会)との立場。党は民族政策を担う統一戦線工作を強化し、7月に中央統一戦線工作指導小組を立ち上げた。ダライ・ラマ継承者問題を含め、党最高指導部が直接チベット政策のかじを取る態勢を固めている。(北京=林望)
■抗議の焼身自殺、120人超す
チベット自治区では外国メディアの立ち入りと取材が厳しく制限されている。標高約3500メートルに大草原が広がる四川省アバ・チベット族チャン族自治州ゾルゲ県に8月下旬、記者が入った。
県中心部のチベット寺院では、全身を地面に投げ出す「五体投地」を続けて一心に祈りを捧げるチベット族の姿があった。人口約7万8千人のこの県で、これまでにチベット僧ら10人が焼身自殺を図ったと伝えられている。
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朝日新聞国際報道部
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