世界的な株安の連鎖が9月に入っても止まらない。東京株式市場では、700円超下げた1日に続き、きのうも株価の乱高下が続いた。世界経済を引っ張ってきた中国の経済変調を前に投資家の不安が広がっており、市場の動揺はしばらく続きそうだ。

 心配なのは、不安が不安を呼ぶ展開になっていることだ。

 世界第2位の経済大国で「世界の工場」でもある中国が震源となっていることで、貿易や金融取引を通じて世界中の国々に問題が波及して、不安に歯止めがかかりにくい。

 悪くすれば、経常赤字が膨らんで資本流出や通貨価値の急落が深刻になる国が出てくるかもしれない。株価の急落が銀行の財務を悪化させて金融危機につながる恐れもある。

 7年前、米金融大手の破綻(はたん)がきっかけとなったリーマン・ショックは世界経済危機につながった。チャイナ・ショックが同じ轍(てつ)をふまないよう十分な警戒が必要だ。

 4~5日にはG20財務相・中央銀行総裁会議がトルコで開かれる。この機会に、危機を封じ込める備えを固めてほしい。不安の連鎖が大規模な通貨危機や銀行危機を招かないよう、各国の当局間の連絡を万全にし、いざとなれば通貨を融通し合ったり、外国為替市場で協調介入したりできるように体制を確立しておくべきだ。

 市場ではかねて中国が公表する経済統計に不信感があったが、G20ではその点を追及してこなかった。だが、危機対応には信用できる経済データが必須である。今回は、そうした懸念を中国当局に伝えて、必要があれば改善を求めるべきだ。

 世界経済の監視役はかつてはすべて主要7カ国(G7)が担っていた。だが新興国が存在感を高めるなかで、先進7カ国だけでは限界もあり、G20創設は必然だった。

 今回は、G20の主要メンバーでもある中国発の動揺である。G20すべての国の協力が欠かせないし、G20の真価が問われていると言ってよい。

 ここ数年、世界の株式市場は日米欧の大規模な金融緩和と新興国の急成長を背景に、バブルの様相を呈していた。そこに新興国経済が減速し、米国が金融政策を引き締めへと転換する局面が訪れている。となれば、株価がある程度調整されるのは避けられない。

 各国政府にいま求められるのは株価を下支えすることではない。世界経済を底抜けさせないための危機管理である。