古本のおはなし。
September 02 [Wed], 2015, 19:15
今日はお仕事のアナウンス…ではなくて、「古本」についての私個人の見解をば。
「あなたの単行本が本屋で見つからないので、古本で買いました」というコメント。1年に一度くらいの頻度でいただくものなのですが、実はとても、回答に困るコメントです。
その都度、ツイッターで私の考えを書いたとしても、すぐにタイムラインは流れていってしまうものだし、意図せぬ煽動的なアオリと共にまとめ記事にされるのも本意ではありません。
一度ちゃんと、考えをブログにまとめておこうと思って書きます。
まず最初に、結論から。
私は、古本で単行本を買うな、とは言いません。
古本で探してまで出逢ってくれたことはとても嬉しいです、ありがとうございます。
ただ、古本で買った事実をわざわざ筆者に伝えなくていいんですよ。
ということ。
ツイッターなど、その他の公の場所で投げかけられると、困ってしまう言葉というのがあります。
それは、
「あなたの本が書店で見つからない」
という言葉。
だいぶ前に出版された本で、部数もそんなに刷られていなくて…となると、どうしても手に入りづらい事と思います。大変ご迷惑をおかけしています。
しかし、本の刷り部数の決定権・どの本屋さんに卸すか・卸したとしてもいつまで置いておくか…これらすべてのことに関して、筆者には一切の権限がありません。残念ながら。
なので、どうしても「書店さんに注文してみてください」・「出版社さんに問い合わせしてみてください」といった、当たり障りない回答しか出せないのです。
出版の守秘義務の関係で「ここまでしか言えない」ラインというのも存在します。
直接コメントを投げかけられていないのであれば、そのままにさせていただきますが、直接なんどもご質問を投げかけられた場合、回答できることにも限界があるので困ってしまいます。
(その場合、多くはスルーさせていただくことも多いです。あらかじめご了承ください)
そうやってお問い合わせいただいた「見つからない本」、ただ単に行き渡っていない場合もあれば、ほぼ絶版状態でもう手に入らないものもあります。
絶版状態の場合、古本屋さんで買っていただくのもアリでしょう。
古本屋さんはもう刷られていない、手に入らない本と出逢う為の場所です。学生の頃など、お金のない時期にずいぶん助けられた方もいるかと思います。かくいう私もそのひとりです。
古本でないと出逢えなかった本がたくさんありました。今でも、神保町の古本祭りの時期にはワクワクしています。
ただ、昔はそうやって新刊と古本が持ちつ持たれつだった均衡が、最近は少しちがってきました。
紙媒体では絶版状態でも電子書籍版なら今でも新刊が買えるという状況が存在するのです。
もちろん、電子書籍を取り巻く環境は、まだ完全に整っているとは言いがたいです。
端末を持っていないと読めない・モバイルやPCでは読んだ気がしない・出版社側の都合でせっかく買ったデータが消えてしまうこともある…などなど、問題は山積しています。
ですので、電子書籍では読まない派の方がいらっしゃることはすごくよく理解できますし、その人たちにとっては「電子版なら新刊がある」という状況も「絶版」に等しいと思います。
そういった方がご自身のこだわりをつらぬいて、紙媒体の単行本を古本で探して買われるのは全然アリだと、個人的には思っています。
私もまだまだ、電子書籍より紙媒体の本の方が好きです。
たくさんこだわりを持っていただきたいと思っています。
ですが。
古本で流通している書籍の売上は、出版社にも筆者にも1円も還元されません。
新刊を入手する手段がまったく無いのであればどうしようもないことですが、電子書籍で新刊が買える状況が残されている場合、どんなに何度も「紙の本が見つかりません」「紙じゃないと読みたくないです」とご意見いただいても、筆者である私は電子書籍版を推奨することしかできないのです。
お世話になっている出版社さんに1円も利益がいかない抜け道的なルートを、筆者自ら、公の場所でオススメするわけにはいかないからです。
読んでいただけたことは何より嬉しいです。
でも、御礼を言いたいのに、公の場所で新刊がまだ買える作品の古本を推奨するわけにいかない、という板ばさみの気持ちにおちいります。
仕事で描いている以上、出版社さんに売上を還元できなければ、次の仕事には繋がらないのです…。
昔はこんなこと少なかったですよね。
私はこの仕事を始めてからもう15年になりますが、その間だけでもとんでもなく変化していってます。自分が学生の頃の常識なんてもう頼りにならない。
電子書籍のおかげで、本はいつでも買える時代になりましたが、逆に、紙の本との出逢いの多くは「あとで買おう」がきかない一期一会になりつつあります。
皆さま、どうか後悔されないよう、本との出会いを大切になさってください。
最後にもう一度。
古本で買ってくださっても、全然かまいません。
私の本と出逢ってくださってありがとうございます。
ですが、電子版で新刊が流通している以上は、出版社の利益にならない古本で買われることを、筆者自身が公の場で肯定することは立場上できません。
古本で買っていただいてもかまいませんので、ただ、その事実はわざわざ筆者には伝えず、どうか、あなたの胸の内にだけ、そっとしまっておいていただけませんでしょうか。
以上です。
こうやって一度まとめたので、今後は「古本で買いました」コメントへの返信は控えます。
「よかったら感想ください」てことも余計なひとことを招くので、私からは言わない方がいいかな。
こんなことを言わなくて済むくらい、全国津々浦々の書店さんでいつでも手にとっていただけるような本を出せるよう、がんばって売れたいですね。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
長文、失礼致しました
「あなたの単行本が本屋で見つからないので、古本で買いました」というコメント。1年に一度くらいの頻度でいただくものなのですが、実はとても、回答に困るコメントです。
その都度、ツイッターで私の考えを書いたとしても、すぐにタイムラインは流れていってしまうものだし、意図せぬ煽動的なアオリと共にまとめ記事にされるのも本意ではありません。
一度ちゃんと、考えをブログにまとめておこうと思って書きます。
まず最初に、結論から。
私は、古本で単行本を買うな、とは言いません。
古本で探してまで出逢ってくれたことはとても嬉しいです、ありがとうございます。
ただ、古本で買った事実をわざわざ筆者に伝えなくていいんですよ。
ということ。
ツイッターなど、その他の公の場所で投げかけられると、困ってしまう言葉というのがあります。
それは、
「あなたの本が書店で見つからない」
という言葉。
だいぶ前に出版された本で、部数もそんなに刷られていなくて…となると、どうしても手に入りづらい事と思います。大変ご迷惑をおかけしています。
しかし、本の刷り部数の決定権・どの本屋さんに卸すか・卸したとしてもいつまで置いておくか…これらすべてのことに関して、筆者には一切の権限がありません。残念ながら。
なので、どうしても「書店さんに注文してみてください」・「出版社さんに問い合わせしてみてください」といった、当たり障りない回答しか出せないのです。
出版の守秘義務の関係で「ここまでしか言えない」ラインというのも存在します。
直接コメントを投げかけられていないのであれば、そのままにさせていただきますが、直接なんどもご質問を投げかけられた場合、回答できることにも限界があるので困ってしまいます。
(その場合、多くはスルーさせていただくことも多いです。あらかじめご了承ください)
そうやってお問い合わせいただいた「見つからない本」、ただ単に行き渡っていない場合もあれば、ほぼ絶版状態でもう手に入らないものもあります。
絶版状態の場合、古本屋さんで買っていただくのもアリでしょう。
古本屋さんはもう刷られていない、手に入らない本と出逢う為の場所です。学生の頃など、お金のない時期にずいぶん助けられた方もいるかと思います。かくいう私もそのひとりです。
古本でないと出逢えなかった本がたくさんありました。今でも、神保町の古本祭りの時期にはワクワクしています。
ただ、昔はそうやって新刊と古本が持ちつ持たれつだった均衡が、最近は少しちがってきました。
紙媒体では絶版状態でも電子書籍版なら今でも新刊が買えるという状況が存在するのです。
もちろん、電子書籍を取り巻く環境は、まだ完全に整っているとは言いがたいです。
端末を持っていないと読めない・モバイルやPCでは読んだ気がしない・出版社側の都合でせっかく買ったデータが消えてしまうこともある…などなど、問題は山積しています。
ですので、電子書籍では読まない派の方がいらっしゃることはすごくよく理解できますし、その人たちにとっては「電子版なら新刊がある」という状況も「絶版」に等しいと思います。
そういった方がご自身のこだわりをつらぬいて、紙媒体の単行本を古本で探して買われるのは全然アリだと、個人的には思っています。
私もまだまだ、電子書籍より紙媒体の本の方が好きです。
たくさんこだわりを持っていただきたいと思っています。
ですが。
古本で流通している書籍の売上は、出版社にも筆者にも1円も還元されません。
新刊を入手する手段がまったく無いのであればどうしようもないことですが、電子書籍で新刊が買える状況が残されている場合、どんなに何度も「紙の本が見つかりません」「紙じゃないと読みたくないです」とご意見いただいても、筆者である私は電子書籍版を推奨することしかできないのです。
お世話になっている出版社さんに1円も利益がいかない抜け道的なルートを、筆者自ら、公の場所でオススメするわけにはいかないからです。
読んでいただけたことは何より嬉しいです。
でも、御礼を言いたいのに、公の場所で新刊がまだ買える作品の古本を推奨するわけにいかない、という板ばさみの気持ちにおちいります。
仕事で描いている以上、出版社さんに売上を還元できなければ、次の仕事には繋がらないのです…。
昔はこんなこと少なかったですよね。
私はこの仕事を始めてからもう15年になりますが、その間だけでもとんでもなく変化していってます。自分が学生の頃の常識なんてもう頼りにならない。
電子書籍のおかげで、本はいつでも買える時代になりましたが、逆に、紙の本との出逢いの多くは「あとで買おう」がきかない一期一会になりつつあります。
皆さま、どうか後悔されないよう、本との出会いを大切になさってください。
最後にもう一度。
古本で買ってくださっても、全然かまいません。
私の本と出逢ってくださってありがとうございます。
ですが、電子版で新刊が流通している以上は、出版社の利益にならない古本で買われることを、筆者自身が公の場で肯定することは立場上できません。
古本で買っていただいてもかまいませんので、ただ、その事実はわざわざ筆者には伝えず、どうか、あなたの胸の内にだけ、そっとしまっておいていただけませんでしょうか。
以上です。
こうやって一度まとめたので、今後は「古本で買いました」コメントへの返信は控えます。
「よかったら感想ください」てことも余計なひとことを招くので、私からは言わない方がいいかな。
こんなことを言わなくて済むくらい、全国津々浦々の書店さんでいつでも手にとっていただけるような本を出せるよう、がんばって売れたいですね。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
長文、失礼致しました
[ この記事を通報する ]
- URL:http://yaplog.jp/namazudou/archive/482