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【世界を読む】地球の裏側の「歴史戦」 海を求める内陸国ボリビアが敗れた「太平洋戦争」

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地球の裏側の「歴史戦」 海を求める内陸国ボリビアが敗れた「太平洋戦争」

ラパスで「海への出口」を求めるパレードに参加した子供たち。「私は海がほしい」と掲げている=8月3日(ロイター)

沿岸部手にしたチリとの経済格差は「5倍」

 太平洋戦争は黒色火薬の原料になる硝石が原因となって起きた。人口希薄な沿岸部で硝石は、この地に住むチリ人に掘り出されていた。ところが当時のボリビア政府が課した重税への反発が強まり、チリ政府が介入。主要港があるアントファガスタをチリ軍が制圧したため、両国間の戦争に発展した。

 4年にわたる戦争でボリビアはペルーとも同盟を組んで戦ったが、結局、チリに敗れた。

 戦後、チリに割譲された沿岸部では硝石に代わって銅鉱山の開発が進んだ。いまではチリの銅輸出は世界一で、太平洋貿易のおかげで経済は発展した。チリの1人あたりの国内総生産(GDP)は約1万5000ドルでボリビアの約5倍。経済力の差は圧倒的だ。

 南米最貧国に甘んじるボリビアにとって、「奪われた領土」で発展するチリは疎ましい。ボリビアもニッケルやスズなど地下資源は豊かだが、四方を陸に囲まれた国に輸出港はない。1904年の条約はボリビアにチリの港を通じた非関税輸出を認めてはいるが、ボリビアは、チリは恣意的な貨物検査を行っているなどと非難している。

 またボリビアは天然ガスも豊富だが、売り先はもっぱらアンデス山脈東側のブラジルやアルゼンチンで、太平洋側に抜けるパイプラインもない。持てる資源を有効に活用できないなか、他国に干渉されない「海への出口」への渇望は募るばかりだ。

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