TOMIさんの湯布院映画祭レポート03(第28回)

 私がネットデビューを果たしたのは、何を隠そう(隠すほどの事ではありませんが)この掲示板なのです。 2年前の8月に、【第26回湯布院映画祭】への参加報告を10回ぐらいに分けて掲載させてもらいました。 今でこそ映画祭は日本各地に恐らくは何十という程ありますが、その草分け的存在なのが【湯布院映画祭】。 昨年は残念ながら不参加に終りましたが、今年は2年振りに映画ファンにとっての古里のような場所【湯布院】に”帰ってこよう”と思います。 会期は20日(水)から24日(日)までの5日間。
 20日の前夜祭はパスして、21日(木)夜の特別試写作品の上映に間に合うよう現地入りする予定にしています。  *上映作品やスケジュール等は、湯布院映画祭のHPを 参照して下さい。 本映画祭で上映されるのは、日本映画のみ。その年の特集のテーマに合わせた昔の秀作と共に、 公開されるのはまだまだ先(秋から翌年にかけて)の新作映画が5〜6本『特別試写作品』として上映されます (今回は5本)。 ほとんどが、一般の観客の目にふれるのは初めての作品ばかり。 それ故、反応が気になり、関係者が数多くゲストとして参加することになるのです。
 毎夜10時から始まるパーティーでは、ゲストの皆さんと自由に歓談でき、好きなだけ映画談議を交わせます。 今年は女優陣の参加が少なく、華やかさに欠ける感じはありますが、その分純粋に(?)映画に関するトークに花を咲かせることが出来るでしょう。 ここ何年かは、試写作品の中から必ず『キネマ旬報ベストテン』に選出される作品を送り出している当映画祭。 私が参加した過去2回の映画祭でも、 2000年は4作・2001年は3作がランクイン。試写作品を選定する実行委員の確かな目が証明されています。 本年のラインアップで一番の期待作は「昭和歌謡大全集」。 村上龍の原作に、昨年公開された「命」でメガホンを取った篠原哲雄監督が挑んだ問題作です。 主演は、松田龍平(ゲスト参加の予定)。 その他の4作は、ちょっと地味かなという事前の印象なのですが、得てしてこういう期待してない時ほど傑作に出会えるもの。 そうなってくれるよう、密かに期待しています(やっぱり期待してるんだ!?)。

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湯布院映画祭レポート(1)

 好天にも恵まれ、2年振り3度目の【湯布院映画祭】を心から堪能してきました。 土産話が多すぎて、どれを紹介するかの取捨選択にこれから激しく悩むことになるでしょう。 出発前の上記書込みにもあるように、密かな期待は大当たり! 何と試写作品5本の内、4本までもが私にとって傑作レベルの作品となりました。 特にクロージングで上映された「油断大敵」(来年1月公開)は、ベストワンを狙えるほどの出来映え。 参加した過去3回の映画祭の中でも、最高の作品でした。
 女優のゲストは「ヴァイブレータ」に主演の≪寺島しのぶ≫さんのみで、人数的に華やかさに欠けた感は否めませんが、映画祭は肝心の作品の方が重要。 その意味からいくと、何の不満もありません。 それに、寺島さんお一人とはいえ、もしかして今回の映画祭は、 今年度の主演女優賞を争うことになる女優をお迎えできたのかもしれません。 「ヴァイブレータ」についても、前述の「油断大敵」についても、それぞれの項で詳述しますので。 また「ヴァイブレータ」は、上映後のシンポジウム(ゲストの監督や俳優・プロデューサーたちに直接、感想を述べたり、質問に答えてもらったり、製作の苦労話を語ってもらったりする場)の盛り上がりも、特筆もの。 今までのシンポで一番の面白さでした。 作品の内容はかなり身にしみる、しんみりとしたものだったのに、シンポは爆笑に継ぐ爆笑。 こんな展開になるなんて、誰が想像できたでしょう?! レポートは客観性が、大事なポイントの一つ。筆者が独りで面白がり、のめり込みすぎて書くと、 読んでくれる人は鼻白みますし、また、誰もが簡単に足を運べる映画祭ではありませんから、いたずらに羨ましがらせる記述なども避けるべきでしょう。 2年前のレポートは出来るだけそう努めましたが、今回については感じたそのままに書き綴っていくことをお許し頂きたいと思います。
 私が本映画祭に初めて参加したのは、評判を聞き、いつかは行ってみたいと念願するようになってから20年近くも経ってからのことでした。 遠方の為まとまった休みを取らなければなりませんし、費用もそれなりにかかります。 加えて、申込みや宿の確保の仕方などの情報もつかめていませんでしたから、 なかなか最初の一歩が踏み出せずにいたのです。(ちなみに私の初参加のきっかけは、 必ず消化しなければならないリフレッシュ休暇を与えられたことでした) それからは行くたび楽しさが倍増していき、”何でもっと早くから参加していなかったのか” と何度も後悔しています。ぜひ、あの雰囲気を一人でも多くの方に体験してもらいたい! 参加を決断するきっかけに、幾らかでもこのレポートが役立ってくれたなら...。 そう願いながら、次回の書き込みからプログラムの順番に従って具体的な内容をレポートしていくことにします。 興味のある方、しばらくの間お付き合い下さい。

湯布院映画祭レポート(2)

 21日(木)は朝の内、用事があり、 午前10時半前の新幹線で岡山駅を出発です。 小倉駅で特急に乗り換え、大分駅まで。そこからは普通列車で湯布院をめざします。 到着は、午後3時半過ぎ。 当初は6時15分から始まる試写作品に間に合えばいいと考えていたのですが、 3時50分から東映のあの『岡田茂』氏のお話がたっぷりと聞ける企画が用意されているため、 何とか調整して間に合うことが出来ました。
  ≪東映京都・岡田茂氏 大いに語る≫
 東映の京都撮影所 及び 東京撮影所の所長を歴任し、第2代の社長を務められていた伝説的な人物です。 企画の題名通り、1時間以上大いに語って下さり、参加者からの質問コーナーが時間切れでカットされてしまう始末。 かくしゃくとしておられ、80歳間近なのにほんとにお元気でした。 岡田氏を始め、今回の映画祭のゲストで来られたプロデューサーの皆さんは、声がよく通る方ばかり。 製作に関する交渉は【喋りが命】なんでしょうね。 戦後間もなくの東映設立の頃の話はあまりピンときませんでしたが、文芸路線から任侠映画路線に移り、 やがて「仁義なき戦い」シリーズに代表される実録映画路線へと変貌を遂げていく辺りの語りは、 かなり引き込まれました。 カラーが次々変わっていくのが、東映のカラー。 「松竹は、駅を降りて家へただいまと帰る映画がヒットするけど、東映は金がかかるんだよな〜」−−随所でたっぷりと笑わせてもくれます。 「体を悪くして、酒はやめてるんだ。・・・全部やめてる訳じゃないけどね」、間も絶妙です。 今でこそアニメ映画はドル箱ですが、昔は赤字続きだったとか。海外へ売れることが分かってから、 儲かるようになったそうです。あの宮崎駿監督も東映アニメの出身。 子供向けのものを作らず、当時はやっかい者と思っていたが、周知の通り大人から子供まで楽しめる 【宮崎アニメ】を作り上げたことについては、素直に「偉い!」と賞賛されていました。 最後に『湯布院映画祭』について−−「28年も続けてきたことに、びっくり! 日本映画を愛する人たちが運営し、全国から訪れる映画祭ファンが支えているのが素晴らしい」
 特別試写の開始まで1時間余りの休憩。 試写の後はすぐシンポジウムが始まり、 その後はバスでパーティー会場へ移動しますから、 このタイミングで宿へ向かいチェックインを済ませておかなければなりません。 歩いて10分足らずの場所にある、映画祭の事務局を通して予約したいつもの宿です。 4〜6人程度の定員の離れが幾つもある所で、今年は早く予約したのが良かったのか、 MAXの日でも4人の相部屋でした(過去2回はいずれもMAX6人!)。 宿へ向かう途中、由布岳や涼しげな川の流れなど見慣れた風景を目にすると、ほんとに”帰ってきたな〜” という感じがします。 今回は、パーティー(1回分4千円)を含む全プログラムに参加できる全日券(2万5千円)を購入しての参加です。 前回2年前に参加したとき初めて、思い切って監督や女優ゲストに話しかけてみてパーティーの楽しみ方を会得。 全日券が特に割安という訳ではないのですが、全部のパーティーに出て『試写作品』だけ観ても券と同額 ぐらいはかかるし、何より次のような利点があるのでこの券に決めました(常連さんは皆、全日券です)。 [利点(1)会場への入場が@全日券 A前売券 B当日券 の順番であり、人気作でもほとんど並ばなくて大丈夫。 (2)個別のパーティー券は当日朝の発売であり、売切れの恐れがあるが、全日券は心配無用。 (今回も松田龍平くんがゲスト参加の土曜日の券は早々完売していました。また2年前はゲストが大人数の日に、 パーティー券が全く発売されなかったこともあったのです)] それからもう一つ、全日券はヒモのついたパス形式になっており、個人名も入れられるので、 一度はこの券を首からぶら下げてみたかったのです。使ってみて、やはり、この券に限りますね。 もう手放せ(?)ません。
この夜の『特別試写』は、観ながら”これ1本に出会えただけでも今年ここに来て良かった” と感じた「ジャンプ」です。

湯布院映画祭レポート(3)

  ≪特別試写作品「ジャンプ」≫
 1本目の試写は、佐藤正午の同名原作の映画化作です。監督はこれがデビュー作の竹下昌男氏。 本作の最大の売りは、主役のサラリーマンを『ネプチューンの原田泰造』が演じていることでしょう。 最近はちょっとクドさが鼻につくようになり、TVのままのタイゾウだといやだなと危惧していたのですが、 驚くほどの好演。彼が素晴らしくいいのです。上映前の舞台挨拶で監督が「見たことのない原田泰造をお見せします」 とおっしゃっていましたが、その通り、泰造オーラのない『原田泰造』が役に見事に命を吹き込み、 オーラを消すことで逆に光彩を放っていました。 7月31日に完成したばかり。一般の観客には初披露となります。プロデューサーからの挨拶の中でも、 こう紹介されていました−−「まだ完全には乾いていない、半分現像液がついているような出来立ての作品です」。 会場のキャパは確か260席。入りは、今日がまだ平日の木曜日ということで半分ぐらい。とはいえ、 客席が半分埋まっていれば、かなり入っている感じです。
 さて、映画は−−。 タイトルが出るまでのオープニングがスマートです。 笑いもわざとらしくなく、冒頭の5分ほどを観ただけで、この映画は絶対好みだと直感できました。 とにかく、流れている空気や登場人物のちょっとした仕草やセリフが心地いいのです。 カットつなぎのテンポも良く、完全に映画の世界に引き込まれて、後はもう身をまかせ漂っていくだけです。 題名の意味は『失踪』。 主人公(原田泰造)の恋人は、ある夜コンビニに林檎を買いに行き、そのまま姿を消してしまいます。 わずかな手がかりを元に、行方を捜し始めますが...。 コメディアンの演技は、侮れません。 舞台で鍛えられており、勘がいいのでしょう。 自然体の演技に唸らされ、”やるな、タイゾウ!”と何度も心で呟いてしまいます。 この日は用事で朝3時半起きでしたが、程よい緊張感が続き、また展開がラグビーボールのように 予測不能の転がり方をするため、睡魔の入り込む余地は全くありませんでした。 前回2年前の映画祭も1本目の「少女」に深く酔わされましたが、今年も最初の作品から十二分な満足感を獲得。 来た甲斐があったと思える作品に早々出会えると、気分が楽です。 過去2回に比べ期待が一番小さかった今回ですが、もしかして【当たり年】になってくれるのかもしれません。 上映後は2階へ移動して、シンポジウムです。
  ≪シンポジウム(「ジャンプ」)≫
 入口で冷たい麦茶の入った紙コップが渡されます。 以前はなかったサービスでは? 嬉しく頂きました。会議室のような部屋に折り畳み椅子が並べられており、空いている席に自由に座れます。 ゲストは前の長机の向こうに着席。 私は、初めて最前列に陣取りました(といっても端の方ですが)。 傑作だったという感想を、是非とも監督たちに伝えたくて。 そして実際に、挙手して発言してしまったのでした。  前回の映画祭では初めてゲストとのお喋りを体験したばかり。 今回はシンポで発言するまでになるなんて...。 恥ずかしさより、面白い映画を観た後の誰かと語り合いたい気持ちの方が強かったのです。鑑賞後すぐ、 その映画の監督やスタッフと直接話すことが出来るのですから、本当に贅沢な時間だと感じます。 「感覚的にノッて楽しめ、予測不能の展開に深く引き込まれた」旨お伝えし、 「主役は最初から泰造さんを考えていたのですか」と質問させてもらいました。 初期の段階から彼をイメージして進めてきたそうです。 公開は来年の2〜5月を予定。 全国で40〜50館規模になるとか。
  ≪パーティー(21日 夜)≫
 会場は、宴会場のある観光施設が日替りで割り当てられます。 立食形式での食べ放題・飲み放題。ゲストの皆さんも一般参加者に混じって飲食され、 自由に話しかけることが出来ます。 私は、プロデューサーの加藤氏に1点強くお願いしました。 氏は「はつ恋」や「ココニイルコト」・今春公開の「卒業」等を製作されているのですが、 それらはいずれも相性が悪くて岡山で劇場公開されていないのです。 「今度こそ岡山で上映されるようにして下さい!」−−「頑張ります」と約束して下さいました。 「ジャンプ」は前出の作品たちとは配給会社が違うため、大丈夫なのではと思っているのですが。 そうそう、本作は原作者の佐藤氏もまだご覧になっていないそうです。 夜中の12時前にお開きとなり、充実した1日目が幕を下ろしました。

湯布院映画祭レポート(4)

  ≪東映京都撮影所特集U≫ 
  「北陸代理戦争」「十一人の侍」「新・仁義なき戦い/謀殺」
 今年の特集のテーマの一つは【東映京都撮影所】。昨日の昼間に≪パートT≫として3本が既に上映されており、 本日の≪パートU≫には上記の3本がプログラムされています。 「北陸代理戦争」は故深作欣二監督の77年の作品。フィルムがかなり傷んでいたのが残念でした。 その後での上映であった為ひと際クリアに見えたのが、ニュープリントで映写された「十一人の侍」。 集団時代劇の名匠・工藤栄一監督の67年の力作です。実はこの作品、プリントが現存していなかったのです。 けれど【東映京都】を特集する上で欠かせない監督ということで、参加者や関係者から7月末迄に寄付を募り、 ニュープリント化を実現。映像がほんとにきれいでした。今後も続けていってほしい試みです。
 「新・仁義なき戦い/謀殺」は、今年の公開作。評判をあちこちで聞いていた作品ですが、観る機会がなく、 試写作品以外では最も楽しみにしていた1本です。主演の高橋克典が、 2年前に映画祭で試写作品として上映した「竜二Forever」の数倍、 彼らしくない(?)渋くていい演技を披露してくれました。 東映京都から久しぶりに誕生した新人監督・橋本一(はじめ)のデビュー作です。 初メガホンとは思えない演出力でぐいぐい見せてくれ、かなりの満腹感を覚えながら観終わりました。 きっと2時間超の尺だったろうと映画祭のパンフで確認すると、110分という程々の長さに、ややびっくり。 あれだけの内容を1時間50分にまとめたとは、なかなかの手際の良さ。 私個人の、今年度のベストテン級の1本となりました。もちろん、お馴染みのあのテーマ曲も山場で流れます!
  ≪東映京都シンポジウム≫
ゲストは「謀殺」の橋本監督と、編集の米田氏(東映京都に勤務)、 東映京都のプロデューサー:厨子氏と妹尾氏の4人。橋本監督はテレビドラマを何本も撮っておられる方で、 失礼ながらどちらかといえば童顔。一見とてもヤクザ映画を撮るような監督には思えません。 「深作監督を絶対マネしないようにしよう!」と心掛けたそうですが、結果的にはやはり少なからず 似てしまったそう。でも、似せようとしても、なかなか似せられるものではありませんし、 デビュー作をこれだけのレベルのものに仕上げたのですから、それで十分なのでは。 実は2作目のクランクインが当初は一昨日の予定だったのだとか。事情で延期となり、 こうして幸いにも(参加者にとっては)ここでお会いできているのですが、来年早々にはほぼ 間違いなく製作開始となるみたいです。
 途中で、「バトル・ロワイアルU」を撮った深作健太監督が到着。 父親・欣二監督ゆかりの東映京都撮影所が特集されているため、公式ゲストではありませんが、 やって来てくれたようです。客席の後方につき、司会者から紹介されて、 前に並ぶプロデューサーたちと挨拶を交わしていました。 その様子が微笑ましくて、場内から笑いが漏れます。 「仁義なき戦い」の1作目が大ヒットすると、1年ぐらいの間に2作目・3作目が立て続けに公開されました。 「数年前『失楽園』が大ヒットした時、続編をすぐに作ればかなりのヒットが見込めたのに、 なぜ作らなかったのですか?」との客席からの質問が。 プロデューサー氏、「『失楽園2』とか『失楽園・最後の戦い』とか(笑)、ほんとは作りたかったんですけどね」。 出来なかった理由は、年間のプログラムががっちりと決まっていたり、製作の形態が数社と提携して 資金を調達する【製作委員会方式】のため、困難であったとのこと。 昔の自社製作なら、社長の前でプレゼンしてGOサインをもらえば、すぐ製作できていたんだけど...と残念そう。 ちなみに「バトル〜U」も、「深作組」(製作会社)に東映が出資している形なのだとか。
 最盛期の頃は東映京都で年間40本ぐらいの映画が製作されていましたが、近年はせいぜい 1〜2本という寂しい状況に。「熱い思いを持って何年も夢を追いかけ続けられる人が核となって引っ張り、 初めて映画というものは完成させられます。パッション(情熱)の結晶以外の何物でもないのです」−− プロデューサー氏の言葉に、多くの人が頷いていました。 客席からの意見で一番沸いたのは、 「映画の始まりに出る東映マークの岩に砕ける波しぶきが、何年かに一度撮り直す度に迫力が薄れてきて、 とうとうCGになったのは許せない!」という根っからの東映ファンからの声が上った時。 場内からも賛同の拍手が。若き頃ヤクザ映画の大ファンだった橋本監督も「同感。私も許せません!」。 「昨日(岡田茂氏がいる時に)、言ってくれれば良かったのに」、プロデューサー氏も苦笑い。 実行委員から「昨日は、参加者が発言する時間がなかったんです」−−爆笑させてもらいました。 プロデューサー氏は、前述のように最近はほとんどの作品が数社と提携しての製作のため、 東映マークの波には特に固執していないと正直な気持ちを打ち明けられました。 「でも、ここまで東映マークを愛する熱い声を聞けるとは思いませんでした。有り難い限りです」と、 前に並ぶ関係者全員で頭を下げられたのでした。いいシンポでした。

湯布院映画祭レポート(5)

  ≪特別試写作品「ヴァイブレータ」・・・22日(金)夜≫
 ゲストは、廣木隆一監督と映画祭の常連・脚本の荒井晴彦氏、 そして主演女優の寺島しのぶさん(富司純子の娘さん)。 主演男優の大森南朋さんは、テレビドラマ「Dr.コトー診療所」の撮影が延びて、到着が明日になるとのこと。 廣木氏は、春に岡山県内の島でロケが行われた「機関車先生」(坂口憲二主演)の監督です。 荒井氏は言わずと知れた名脚本家。昨年の話題作「KT」は、氏の作品です。
 上映前の舞台挨拶。 シャイな監督は、ごく普通の挨拶を。「KT」で阪本監督に脚本を変えられた事にご立腹の荒井氏は「阪本とは10年の付き合い。廣木とは26年。その違いを見てほしい」。寺島さんからは「この映画では丸裸にされた感じでした。1回目の試写は心ここにあらずの状態でしたから、今日は少しゆっくり観たいと思います」。 ゲストは客席中央のゲスト席で、観客と一緒に鑑賞します。さて上映開始−−。
 題名からエロティックな連想をしてしまいがちですが、素直に訳してみると−−【震動】。 携帯電話の呼び出しの震動。 それから、アイドリングしている車のシートで感じる震動。 ある冬の夜、コンビニで出会った女と男(トラック運転手)が束の間【道連れ】となり、東京〜新潟間を往復する道中の出来事を描いたロードムービーです。 音のない振動は、触れなければ確かめられません。 女はトラックの助手席で「あなたに触れたい」と泣くように訴えます・・・。 大部分が、寺島しのぶと大森南朋との二人芝居。 両名の演技は、きっと高い評価を受けることでしょう。 特に素晴らしかったのが、寺島さん。その女優根性に大拍手です。服を全て脱ぎとっての、心をぶつけ合うような情熱溢れるラブシーンに体当りで挑んでいます。 何人もの女優が断わった役。彼女の熱演は、それら多くの女優たちを激しく後悔させることでしょう。 3年前「顔」で藤山直美が主演女優賞に輝きましたが、「ヴァイブレータ」を観た後の寺島さんの演技に対する感想は、「顔」のエンドマークが出たとき藤山さんに抱いた印象に近いものがありました。【大人の映画】と呼ぶにふさわしい、胸にしみ込んでくる作品です。
  ≪シンポジウム(「ヴァイブレータ」)≫
 前に並ぶゲストたち、特に寺島さんの顔はかなりの緊張感を漂わせていました。スクリーン上の役と実際の彼女とは全くの別物とはいえ、あそこまで自分をさらけ出すと、鑑賞直後の観客の前でじっと座ったままいるのは、かなり大変なことに違いありません。 ましてや、サポートし合える存在の相手役の大森さんが不在なのですから、随分心細かった筈。(ほんとによく出席して下さったものです。寺島さんがいなければ、女優ゲストがゼロという寂しい事態になった所ですから) 最初は、そんな重苦しい空気で始まったのに・・・。
いったい誰が、あんなに楽しいシンポになると予想できたでしょう?! 最大の功労者は、女性司会者(実行委員)のKさん。 本作に惚れ込んだ彼女は、自ら初めての司会役に名乗りを上げたのです。 そういう経緯をKさんが、いい意味で少しおっとりした口調で話す内、場内の空気が目に見えて和らいでいきました。 歳の近い同性Kさんからの主人公の女性に対する共感の声は、寺島さんの頬の強張りもほぐす役目を果たしたようです。 女性の参加者からも好意的な発言が続き、寺島さんの表情はかなりリラックスしたものに−−。「今日はちょっとだけ落ち着いて観られました。3回目はお金を払って劇場で観たいです」。
 Kさんは、司会ずれしていないのが何よりの長所。 初めてなのに、ニコニコと落ち着いてトークできるのは、天然キャラの為せる業?! 毒舌で鳴る荒井氏が皮肉まじりの辛口発言をした時も、Kさんは自分がマイクを持っているのを忘れたかのように「へ〜え」と素のリアクション。 大爆笑の客席は、もう完全に彼女の味方です。 荒井氏も、Kさんの同様の反応を2度3度と受け、遂に「負けた」と白旗を掲げました。 廣木監督のちょっとカッコつけた発言にも、「ほお〜っ」と素直に感心。 「すごい切り返し!」と寺島さんが感嘆したように漏らしていました。 来年もまた、是非とも司会を!
 本作は「新鮮な内に公開したい」との意向で、東京では11月下旬か12月上旬より上映されるそうです。(その前に、現在開催中のベネチア映画祭にも出品されるとの事) ということは、今年の映画賞の対象に。 【寺島さんに1票!】の気持ちです。 最初は断わるつもりだった寺島さん。 廣木監督のつぶらな(?)瞳に見つめられ、断われなくなったのでしょう。 「それに私、『あなたしかいない』という言葉に弱いんです」(笑)。 受けることに決めた後も、「事務所と母親(富司純子さん)がネックでした」。 それらも何とかクリアし、「演じている内に自分と同化してきた」という見事な捉まえ方で、この難役を演じ切りました。
女優ゲストに華が足りないと思っていましたが、ごめんなさい! もう1本の主演作「赤目四十八瀧心中未遂」も10月に公開されますし、今秋最も旬な女優は『寺島しのぶ』になりそうな気配です。 

湯布院映画祭レポート(6)

  ≪パーティー(22日 夜)≫
 この夜のパーティーも、会場までバスで移動します。(歩いても15分ほど。終了後は現地解散。明日・明後日の会場は歩いて10分足らずだし、分かり易い場所にあるため徒歩での移動になります) 会場内には、明日のゲストの滝田洋二郎・金子修介・中原俊監督らの姿も。 それから昼間到着した深作健太監督や、「ヴァイブレータ」組ももちろん参加してくれています。
まずは腹ごしらえ。 午前10時から夕方5時まで短い休憩を挟んで上映やシンポが続きますから、全部のプログラムに出ようとすると、昼食をお店で食べることはまず無理。 朝食をしっかり取って、お昼はおにぎりやパンで済ませ、晩飯はパーティー会場でたっぷりお皿に盛り会費の元を取るというのが、常連のパターンのようです。 私も5時過ぎに遅い昼食を軽くお腹に入れただけなので、パーティーが始まって15〜20分はゲストより料理が大事。 目当てのものを一通り食してから、ゲストの姿を求めて会場内を歩きだします。
 「ヴァイブレータ」は荒井氏には珍しく、ほぼ原作に忠実にシナリオ化したらしく、「どうせ俺の仕事は(寺島)しのぶを口説いた事と、原作を(シナリオに)移しただけだから・・・」とシンポでいじけてみせたりしていましたが、映画祭は毎年のように参加しており、すっかり溶け込んでグラス片手に常連さんたちと話し込んでいます。「とにかく廣木は、音楽のセンスだけはいい!」と微妙な褒め方をし、バックで楽曲もたっぷりと流される本作を「日本一シナリオの移し変えの上手い脚本家と、日本一選曲の上手い監督の作った映画」と表現していました。 その内、健太監督とツーショットになる機会が。 実はこの2人、師弟関係にあると言ってもいいのです。 荒井氏の監督デビュー作「身も心も」は湯布院を拠点にして製作されたのですが、この映画で初めての現場を体験しカチンコを叩いていたのが、数年前の深作健太だったのです。 「バトル・ロワイアルU」について、シンポの終りで荒井氏は「テロを堂々と描いており、正直感動した」と評し、「一方で俺はこんな小さな映画(「ヴァイブレータ」のこと。半分は冗談で)を作っているなんて・・・。今度はまた『KT』のような社会派の作品を作るぞ」と宣言しておられました。 その新作が、来年の湯布院で観られますように!
 どちらかと言えば小柄な健太監督はほんとに気さくで、女性にもてもてでした。 私は1作目より「バトル〜U」の方がお気に入り。 女性陣からの写真撮影のおねだりが一区切りつくのを待って、映画の感想を手短に伝えると共に「今度は一から手がけた自分の企画を映画化して下さい」と話させてもらいました。 ずっと笑顔を浮かべておられ、私も監督自身のファンになってしまいました。
パーティーも半ばに差し掛かる頃、オークションが始まります。「来年の映画祭の資金(たぶんゲストの交通費等?)にしますので、高く買って下さい!」−−ゲストや関係者から提供された映画のプレスシートやTシャツ(いずれもサイン入り)、その他映画に関するグッズ類が次々競り落とされていきます。 今夜の会場が、4夜の中で一番小さな所。 数歩行けば、ゲストの誰かがそこかしこでお喋りしています。 直接話せなくても、輪に加わって話を聞いているだけでも充分。
映画祭も半分が終了。明日からは後半戦です。

湯布院映画祭レポート(7)

  ≪編集マン・冨田功の人と仕事≫
  「僕らはみんな生きている」・「濡れて打つ」・「櫻の園」
 本日23日(土)の特集は、昨年の秋に惜しくも亡くなった名編集マン『冨田功』氏の追悼企画です。 彼は毎年のように当映画祭に参加し、実行委員の良き相談相手にもなられていた方。 遺作は、同じ仕事をしておられる奥さんの伸子さんと共同で編集した今年公開の「壬生義士伝」でした。 具体的な作品名を挙げていくよりも、シンポジウムのゲストとして人気監督の滝田洋二郎・金子修介・中原俊氏のお三方がわざわざ駆けつけられたということで、冨田氏がどういう存在であったか、おおよそお分かり頂けるのではないでしょうか。
私も過去の参加時に、会場ロビーで氏を何度かお見かけした事があったのですが、まだ映画祭の雰囲気に馴染んでいなかったため、一度もお話する機会は持てずじまい。 シンポでゲストの皆さんからのトークを色々聞いていくにつれ、その事をすごく残念に感じられるようになったのでした。
 上映される3本は、それぞれの監督とのコンビ作。間もなく「陰陽師U」が公開される滝田監督の「僕らはみんな生きている」は、”ごめんなさい”パスさせてもらいました。 公開時に観ていますし、前日は合計10時間以上も椅子に座り、いささかお尻が痛くなっていたのと、映画祭のパンフレット(800円で100頁以上。読み応え満点です)にじっくりと目を通しておきたかったので。 「濡れて打つ」は、平成ガメラシリーズの金子監督のデビュー作。 「エースをねらえ」のパロディーとして高評価を受けた作品です。 楽しませてもらいました。 中原監督は代表作の「櫻の園」−−今回は、劇場公開時とはほんの少し編集の違う版での上映です。 一旦は完成段階までいきながら、プロデューサーからアドバイスがあり、指摘されたのが迷いながら編集した箇所だったため、あっさりと乗り換えて改訂し、最初の版は冨田氏の手元でずっと眠ることに。 公開されてから、「あれも有りだよな」と2人でいつか見比べてみようと言い交わしながら、実現できずにいたもの。 シンポでも説明されましたが、私にとっては正直どちらでも構わないと感じるバージョン違いでした。 ただ、監督がそういう細部にまでこだわる気持ちは十分理解できるし、常にそうあってほしいと思います。
  ≪『冨田功』シンポジウム≫
 ゲストは前述の3監督と、冨田氏の妻・伸子さん、それから「僕らは〜」のプロデューサー・小林氏。 この中で、冨田氏と一番付き合いが浅いのが、奥さん(笑)。 もう少ししんみりとしたものになるのかと思いきや、冨田氏の人柄なのでしょう、笑いの絶えない、そして興味深いシンポになりました。
滝田監督は「シナリオの段階から意見を出してくる人だった。現場にまでやって来るんだけど、監督のそばを素通りして、役者の所へばかり。女優とすぐ仲良くなる奴だったね」(笑)。 中原監督からは「ラッシュの際、2〜3シーン勝手に(冨田氏が要らない or 使えないと判断し)消されてしまうことがあった」(笑)。 滝田監督も同意−−「よくフィルムを隠すんだよ。役者の演技に力のないシーンを見せようとしなかったね」。
金子監督からは「褒めるのが上手かったな。僕は揉めた記憶がなく、褒められてばかりだったけどね(笑)。それから中山美穂の映画(「どっちにするの。」)の時は、2人ともファンだったからフィルムを切れなかったね。もう少し短くすれば、映画としてはもっといい出来になったんだろうけど。でも中山美穂を観に来る作品だから、あれで良かったんだと思うよ」。 小林氏は「私をスキーに連れてって」もプロデュースした人。 同作は素人監督が演出し奇跡的に大ヒットを飛ばした作品ですが、その大きな要因は何と冨田氏の編集のお陰だったそうです。 撮影途中で業界向けの15分程のプロモーションビデオを披露することになり、撮影済みのフィルムをチェックした冨田氏が「とにかくスキーシーンを大量に撮ってくれ」とリクエスト。 結果、ユーミンの歌を見事にかぶせスキーの楽しさに満ち溢れたプロモは大評判となり、ヒットへと結びついたのでした。
 奥さんは冨田氏との馴れ初めを追及されました。編集協会の総会で受付をしていた際、彼に目をつけられ(?)話をするように。 当時、彼とは別の職場で助手をしていた彼女の元に、彼から実際にテレビで放送するための素材が送られてきます−−「よければ、編集してみたら」。 実作業に飢えていた彼女は喜んでフィルムをつなぎます。 「なかなかいいんじゃない」。 そんな風にして2人は付き合いだしたのでした・・・。
会場には、前日のシンポ≪東映京都≫ゲストの編集マン・米田氏の姿も。 司会から東映での編集のやり方等を尋ねられた氏は、「質問の答えとは別なのですが、裏方の編集という作業について、これだけのそうそうたるメンバーが語り合っていることに、びっくりしています」と感激していました。
 数え切れぬエピソードと、語り尽くせぬ想い出の一端に触れられたシンポでした。冨田氏の核の部分がおぼろげにではあっても窺えたような気がします。 映画祭の企画にも助力されてきた冨田氏。 彼への餞(はなむけ)は、冨田氏がいなくなって映画祭の企画がつまらなくなった、と言われないようにする事ではないでしょうか。 来年、どんな内容の映画祭になるか、注目度大です!

湯布院映画祭レポート(8)

  ≪特別試写作品「昭和歌謡大全集」・・・23日(土)夜≫
 この日の試写は個人的に最も期待していた作品。 「はつ恋」でファンになった篠原哲雄監督の問題作です。 売れっ子の監督は現在、北海道で新作「天国の本屋」を撮影中。 色々交通機関を検討するも、やはりゲスト参加は無理となりました。 その代わり、主演の松田龍平くんは予定通りやって来てくれます。 一番の人気作は、今回のように土曜日に組み込まれるのが常。 朝に発売されたパーティー券も早々と売り切れに。
『冨田』氏のシンポが終って、2階から1階ロビーに下りて来た時には、開場まで1時間近くあるのに、既にかなり長い列が出来ていました。 私も、全日券用の列に15分ほど並んで入場。 席は間もなく全て埋まり、壁際に補助イスが並べられていきます。 上映開始間際には、通路に座る人も多数−−。
やがて、龍平くんとプロデューサー氏のゲスト2人が登場。 龍平くん、さすがに大きいです。 肩までの長髪で、シンプルにTシャツとジーパン姿。 裾を切る必要、全くなし!の体型です。 舞台挨拶時は写真撮影フリーのため、前方の席に陣取った女性ファンから一斉にフラッシュが焚かれます。 挨拶は、イメージ通り言葉少なな龍平くんでした。 一般の観客には、今夜が初披露です。
 映画は、若者と主婦のグループ同士の集団殺戮劇。 感想をひと言にまとめると、【ブラックユーモアに満ち溢れた怪作】といった所でしょうか。 最近は小説以上にぶっそうな事件が頻発していますから、全くのブラックユーモアと言い切れぬ部分もあるのですが、デリケートな演出であくまでも虚構の世界に踏みとどまり、からっと笑わせてくれます。 「地球が滅亡する時、最後まで生き残るのはゴキブリだと言われてるだろ。あれ、嘘。−−おばさん!」など綾小路きみまろばりの毒舌も至る所に。 印象的なセリフもあちこちに。「誰があたしたちを、都はるみにしようとしてるのか?!」−−意味は内緒にしておきましょう。
全体は8章に分かれ、各々に昭和の歌謡曲の題名がつけられて、物語の中でもその曲が実際に登場人物によって唄われたり、原曲のまま流されたりします。ある時は、ゴスペルの代りとして・・・。 報復合戦はエスカレートしていき、そこまでやるか!というラストには、もう呆然とスクリーンを眺めているしかありません。(キューブリック監督のある作品を連想させます) やがて、”んな、バカな”と解放感に包まれてきて、後味は悪くありません。 まずは、期待通りの出来映えでした。満足です。
  ≪シンポジウム(「昭和歌謡大全集」)≫
 通常、2階の会場に移動して行われるシンポですが、この日は観客が多く、 入りきらない恐れがあるためか、映画の上映ホールで引き続いて実施されました。
映画化に動き始めた当初、周囲は「やばいんじゃないの?」とかなり引いていたそうです。 原作の村上龍氏も「ほんとに映画になるの?」と心配していましたが、それだけに完成作を観て絶賛しているとの事。 ほんとに過激な内容ですから、よく歌の使用許可が取れたものです。 原作に出てくる曲の内、何曲かはやはり不許可だったので、代りになる曲を探したのだとか。 ただ、最も重要な2曲は幸い、何とかOKを貰えたそう。 若い女性の観客からは「知らない曲が多かったので、登場人物の歌が上手いのか下手なのかよく分かりませんでした」(笑)との声も。 龍平くんが出演を決めた理由は「シナリオを読んで、笑えた。やりたい、と思った。それに、篠原監督の作品を何本か観ており、この作品をどういう風に撮るんだろうと興味を持った」から。 コスプレで歌うシーンについては、「ほんのちょっと踊りながら歌うだけなのに、ほんとに難しかったです」。
 シンポは残念ながら、いまいち盛り上がりに欠ける内容でした。 いつもと会場が違い、舞台上と客席の参加者との間に距離があった事もあり、発言がどうも活発になりませんでしたし、龍平くんもあまり喋る方ではありませんでしたから。 それに−−。 何しろ、前夜の「ヴァイブレータ」のシンポが楽しすぎたので、その反動もあったのかもしれません。 篠原監督に参加して頂きたかったなあ。

湯布院映画祭レポート(9)

  ≪パーティー(23日 夜)≫
 開始時、龍平くんはすぐ隣りのテーブルに。最初の頃は特に混乱もなかったのですが・・・。 途中で、取材のため彼は一旦会場を退席。 何十分か後に戻って来た辺りから、 待ち兼ねた女性ファンたちが少し集中して彼の写真を撮り過ぎたようです。 マネージャーや関係者が「ご遠慮下さい」と制止するもなかなか収まらず、 とうとう宴半ばにして引き上げてしまった模様。(映画祭のHPへの書込み等によると、こういう事だったようです)  混乱というほどひどい状態ではなかった筈ですが、後から事情を知り、残念に思いました。 ちなみに私は、荷物にもなるし、落ち着いてパーティーを楽しめないと思い、カメラを持参したことはありません。
 この夜は、「ヴァイブレータ」主演の大森南朋さんが一日遅れで参加してくれています。 龍平くんとも知り合いらしく、取材から戻ってきた彼と軽くハイタッチし、夢の2ショットになる場面も! さすがにこの時ばかりは、周りを囲む参加者たちのざわつきが大きくなっていました。 女の子たちの包囲網が解けるのを辛抱強く待って、大森さんに話し掛けます。 まずは、昨夜のシンポがすごく盛り上がった事、主に若い女性たちから共感の声が続出していた事などをお知らせ。「寺島さんとのコンビは、1プラス1が3にも4にもなっていたように思います」との私の感想に、嬉しそうに頭を下げてくださいました。 シンポで、彼の演技について「優しさに涙が出そうになった」との女性からの声を、大森さんに生で聞かせてあげたかったなあ。 役者さんと直接会話する機会を持つと、自然とファンになってしまいます。
大森さんの到着を待っていたのか、寺島さんの姿が今夜のパーティーにも。 夕べ喋れなかった彼女とも、会話に成功。「昨日のシンポは大森さんがいなくて 最初は随分心細かったでしょうが、ほんとによく参加して下さいました。寺島さんがおられなければ 女優ゲストがゼロになる所でしたから」とお礼を申し上げ、「年内公開を喜んでいます。 各映画賞で評価されるよう応援していますので!」とエールを送らせてもらいました。 会釈で「ありがとうございます」と応じてくれた彼女は、もう完全にリラックスして映画祭を楽しんでいるよう。 そういう姿を見ると、何だかこちらも嬉しくなってきます。
 もう、ゲストの皆さんと話をするのが当り前、喋れないと物足りないほどになってしまったようです。 金子修介監督はアイドル評論家(?)としても有名。 その話題で攻めてみました。「監督の映画のヒロインは、かなり私好みです。 いま起用してみたいと狙っている女優は誰ですか?」−−「特にいないけど、 ハセキョー(長谷川京子)とか今が旬の女優は、いいよね」。 明後日(25日)の映画会社での会議により、新作にGOサインが出るかどうかが決定するのだとか。 胸に手をやりドキドキだとの仕草で周りの人たちを笑わせてくれました。 企画が通り、近日中に新作決定のニュースが聞こえてきますように!
 いよいよ、残りは一日。 明日も天気は良さそうです。

湯布院映画祭レポート(10)

  ≪東映京都撮影所特集V≫
  「緋牡丹博徒」・「股旅 三人やくざ」
 最終日の最初の上映作品は、寺島しのぶさんのお母さん・富司純子(映画出演当時は、藤純子)主演の 「緋牡丹博徒」です。母娘の映画が揃い踏みとなり、寺島さんも余計に嬉しかったのではないでしょうか。 予期していた通り、オールドファンの男性たちから随所で「よっ、お竜さん!」とかの掛け声や拍手が湧き上がり、 なかなか楽しい鑑賞となりました。
 ≪特別試写作品「福耳」・・・24日(日)昼≫
 「GO」の脚本で各賞を総なめにした、役者としても活躍中のクドカンこと宮藤官九郎と、 田中邦衛の共演したファンタスティックなコメディー作品です。 この世にやり残した事を抱えたまま急死した老人(田中邦衛)が、やりたい事の見つからない若者(クドカン)の 体を借りて、甦ってくる物語。
製作費を出しているのが、高年齢層向けのビジネスを展開している会社であり、主にその層をターゲットにした映画作りがなされたようですが、完成品は若者にも楽しめるものになっており、当初より規模を拡大して上映されることになったそうです。 東京では、明後日13日からの公開。
また昔のスターたちが脇役として華を添えており、主役たちに負けないぐらいの見ものになっています。
 ≪シンポジウム(「福耳」)≫
 ゲストは、監督の瀧川治水氏と、脚本の冨川元文氏のお二人。 監督はこれがデビュー作ですが、失礼ながら年齢は既に40代半ば。 今回脇役として出演したかつての有名俳優たちをよく知っているのは、監督の年代ぐらいまででしょう。 それより年下になると、現役バリバリの時を知らず、活かし方も分からなかった筈。−−適任だったのでは。 特に、宝田明のオ○マ役、最高でした!
 クドカン起用の理由について監督は、彼の所属する劇団『大人計画』の舞台で昔から存在を知っており、 受けの芝居の出来る役者ということで、今回の第一候補に。ただ、彼は脚本家としても超売れっ子なので、 スケジュールが心配でしたが、タイミングよく体が空いていて決定となったのだそう。相手役の田中邦衛さんは、 クドカンの希望でもあったとか。 前から一緒に仕事したい人だったみたいです。
邦衛さんは「1週間しか出ないよ」ということで出演を引き受けますが、監督の欲張りで出番が数倍に。 だんだんノッて演じてくれたそうです。 スクリーンからも、それがよく分かりました。
主役は、福耳の設定。実際に福耳を持った役者を探したりもしましたが、簡単に見つかる筈もなく、 クドカンもやはり違ったため、特殊メイクで福耳をつけたのだとか。
 冨川氏からは、「試写で自分は、なぜか映画の筋とは関係のない、 小道具とかのつまらない部分ばかりを見てしまう。あと半年ぐらいは冷静に見られそうもない」と、 がっしりした脚本家らしくない体に似合わない可愛い感想が漏れてきました。 今年は「黄泉がえり」「星に願いを。」等、死者の甦りを題材にした映画が集中しているみたいだが、 という質問に対しては、「そういう時流なのでしょう」。
尚、シンポの内容は全て、本格的な機材で録音されており、後でテープ起しを行い、 資料として文書の形にまとめられているようです。
 5時すぎにシンポが終わり、公民館の外へ出ると、涼しさを含んだ微風が吹き抜けていきます。 過去2回の映画祭では、まだまだ暑さにうんざりしていた時間帯ですから、当地でも冷夏を実感しました。 次は、いよいよクロージング作の上映です−−。

湯布院映画祭レポート(11)

  ≪特別試写作品「油断大敵」・・・24日(日)夜≫
 2年前の映画祭で「少女」(奥田瑛二監督)・「笑う蛙」(平山秀幸監督)の2本の脚本作が上映された、 成島出(いずる)氏の監督デビュー作。 役所広司と柄本明ががっぷり四つに組んだ、 刑事と筋金入りの大泥棒との10年を超える因縁の物語です。柄本さんは今、湯布院へ向かっている途中で、 上映後のシンポには間に合う予定。 映画祭では顔なじみと言っていい成島氏が、 上映前の舞台挨拶で初めて監督として登場。 「6〜7年前、『シャブ極道』(役所広司主演)の 脚本家としてこの舞台に上った時、次は監督として帰ってきますと約束しました。 ずいぶん時間がかかってしまいましたが、宣言通り、今夜はここ湯布院で初監督作が上映されることになり、 誇りに思います」。盛大な拍手が送られます。けれど、それも上映後の熱狂的な拍手には、 遠く及ばぬものだったのです−−。
 映画は刑事ドラマでありながら、優れたホームドラマにもなっています。 妻を亡くし、8歳の娘を男手一つで育てる関川。 父娘の情愛が胸を打ちます。そして、 何くれとなく父娘の世話を焼く女性(夏川結衣)と関川との、微笑ましくも切ないロマンス。「逮捕して下さい・・・」 −−夏川さん、最高!思わず拳を作ってしまうぐらい可愛いです。 ここ2〜3年の彼女はほんとに良くて、出演作の全てで輝いています。
 本筋の刑事ドラマの方では、前半は爆笑につぐ爆笑です。 妻と死別したため駐在所勤務から刑事に転身せざるを得なかった新米の関川は、聞き上手の大泥棒に 人生相談にのってもらったり、つい悩みを打ち明けたりします。「話してみな、楽になるから」(笑)。 『泥棒に素直に礼の言えるバカな刑事』が、やがて泥棒事件のエキスパートになっていきます。 10年後、取調室で再び対峙した2人の対決シーンは、物語の白眉。
 いつも通りに素晴らしい役所さん(大抵の人にはこれで通じてしまうのが、すごい!)。 脇役の多い柄本さんは、久しぶりに主役級の出番の多さで、存在感を遺憾なく発揮しています。 身じろぎもせず、黙って椅子に座り続ける無言の名演には、ただただ見惚れるばかり。 間違いなく、2人の代表作となるでしょう。
 関川がキャリアを積んだ10年間は、娘の美咲が8歳から18歳の女性に成長する歳月でもありました。 10年前、体を張った抗議で自分のわがままを押し通した娘は、好物のパンを父親に差し出すことでしか 詫びる術を知りませんでした。18歳の美咲はしっかりと自分の言葉を持ち、 10年間引きずり続けた思いを短いひと言に込め、父親の元を巣立っていくのです−−。 家族愛・ロマンス・男同士の思いやり・プロとしての刑事と泥棒の駆け引き・・・等々、 色んな要素が見事なハーモニーを奏でる堂々たる傑作の誕生です。参加した3回の映画祭でのベストムービー! クロージングが本作で本当に良かった。 いつまでも余韻に浸っていたい映画です。 試写作品は普通、エンドクレジットが流れ終わってから拍手が起こるのですが、 本作では流れ始めると待ちきれずに最初の拍手が湧き起こります。2度目は監督の名前が出た時に。 そして流れ終わってからひと際大きく、3度目の拍手が場内に響き渡ります。
 何分間でも拍手を送り続けたい映画。 けれど、シンポでいい席を取らなければ。 最後に激しく手を叩いてから、2階へダッシュです。
  ≪シンポジウム(「油断大敵」)・・・前半≫
 最前列を確保。 間もなく柄本さんらが入場され、長机の向うに着席されます。 映画を観た直後のため、その風貌からは貫禄さえ漂ってくるかのようです。 歳を取るほど、もっといい役者になっていくのではないでしょうか。 それにしても、傑作に出会ってすぐ、その作品の監督や俳優たちと語り合えるなんて! −−以前にも書きましたが、何という幸せ。 監督たちは、ゲスト側からの挨拶より、 まず観客の感想を一番に聞く事を希望し、早速に参加者たちからの発言が求められます。 私も勢いよく挙手したのですが、同時に10人近い人の手が! 今回この地へやって来るまでシンポで発言するなど全く思ってもいなかったのに、 発言したくてたまらなくなるなんて。
 ≪湯布院映画祭≫、恐るべし!
 私も尋ねたかった脚本に関する質問が、他の発言者から出されます。 本作はとにかく、映画の背骨となるシナリオが非常に優れていますが、 脚本家出身なのに監督は今回自分では一切執筆せず、他のライターに任せたのです。 小松與志子・真辺克彦両氏の共同脚本。 お二人もゲストとして前に座られています。 小松さんは女性でありながら、昨秋公開の「宣戦布告」という骨太の軍事ドラマを執筆された方。 まず、共同脚本のやり方について−−3〜4稿までは小松さんが書き進め、その後を真辺氏が担当したそう。 小松さんいわく「ダンゴの内側を作ったのが私で、外側を担当したのが真辺さんでしょうか」。 また、監督が執筆しなかった訳については−−「シナリオは苦しいしね(笑)。大きな理由は、 初監督なので演出に専念したかったこと。それから、別の人に書いてもらうと、自分では絶対思いつかない シーンが描かれてくるので、それに期待して」との事。
 監督からは主演のお二人について、こんな話も。「2人が出演をOKしてくれていなければ、 この映画はクランクインしていませんでした。 柄本さん・役所さん以外に、この役を演じられる俳優は考えられません」。 主演2人の演技を撮影するのが、毎日ほんとに楽しかったそうです。 そういう楽しさが演出の余裕となって作品に表れたのか、とにかく緩急のつけ方が見事。 デビュー作にして既に、いい意味で老成しています。

湯布院映画祭レポート(12)

  ≪シンポジウム(「油断大敵」)・・・後半≫
 やがて私の番になり、マイクが渡されます。 まず、作品が過去3回を通じてもベストワンであった事、 主演のお二人にとって代表作の1本になるのは間違いないだろうという賞賛、 「夏川さんが本当に良かったので、ラストでもう一度登場させてほしかった」 (場内からも同意のざわめき)という唯一の不満などの感想を述べた後、柄本さんに質問を... 「一番の演じ所はどこだったんでしょうか?」。 取調室での役所さんとの対決シーンかと思いきや−−、「特にないんだけど」。 やや拍子抜けしてしまいました。 でも、こういう力を抜いたスタンスにこそ、柄本さんの良さがあるのだろうと納得。 「もっともっと言いたい事は有りますが、他にも発言したい人が一杯いらっしやると思うので、これぐらいで止めておきます。素晴らしい映画をありがとうございました」とマイクを返しました。 いくらでも語り続けたい映画です。
 最後にゲストからの挨拶が。 柄本さんは「自分の出演作の試写にはあまり行かないんだけど、これはもう観たので、さっきは温泉につかってました。この監督がこれからどんな作品を撮るのか楽しみだね。結構、本格派なんじゃないかな」とエールを送っておられました。 脚本の小松さんは「観客の反応を生で見られて嬉しかったです。また、笑い声を聞けて(反応を体感できて)良かったと思います」。 東京での初日は、来年の1月17日。 公開されたなら絶対もう一度、劇場で観ます!
  ≪パーティー(24日 夜)≫
 今夜のファイナル・パーティーには、当地の各ホテル・旅館から何十人もの若き料理人たちが集結し、色々な創作料理が振る舞われます。 嬉しいもてなしです。 たっぷり頂いた後、脚本家の小松さんとかなり長くお話できました。 映画は父娘のホームドラマにもなっているため、女性の参加者たちも熱心に彼女に話しかけています。 娘が8歳の時の、父親への体を張った抗議の場面で泣かされたという感想が一人から出ると、「私も」という複数の同意の声。 私も、落涙寸前でした。 何とか我慢したものの、今度観る時にはきっとこらえきれないでしょう。 名場面もじっくり楽しめるし、「2度目の方がもっと面白く観られそうですよね」−−私の発言に、周囲の人も頷いていました。 「ヴァイブレータ」脚本家の荒井晴彦氏は女性・・・というより”女”の描写に定評があります。 「『宣戦布告』といい『油断大敵』といい、こんなにも男を活写できる小松さんは言わば【逆『荒井晴彦』】ですね」。 テレビドラマは脚本家の名前でチャンネルを合わせる事が少なくありません。 これから、小松さん脚本の映画は必見作になっていきそうです。
 成島監督とは、地元マスコミの取材が終るのを待ってから、お話を。「評論家筋にも評価されると思うが、1点ケチをつけられるとすれば、柄本さんと役所さんが素晴らしすぎたこと。あの2人に頼った部分が大きいので、監督の手腕は2作目をみてみないと分からない、とか言われるかも。でも本作レベルのものを2作続けると、そんな声も封じ込められると思うので、次も1作目に負けない作品を完成させて下さい!」。 ところで、監督は真っ黒に日焼けしておられます。「もしかして映画の現場でそうなったのでしょうか?」−−その通り、奥田瑛二監督の2作目の撮影で、奄美大島のロケ現場についているのだそう。 こちらも楽しみです。 奥田監督のデビュー作「少女」は2年前の映画祭で上映され、私の心を鷲づかみしてくれましたから。 今度の新作も、来年の映画祭で上映されるような予感が・・・。 そうなりますように!
 閉幕の挨拶では、映画祭の実行委員長から、参加者やゲストの皆さん(特に名前を挙げていたのが、まさか来てもらえると思ってなかったという岡田茂氏)・協力してくれた関係者の方々への謝意に続き、内輪話が披露されました。 実は今年の映画祭は、毎年中心になって進めていたベテランの実行委員の多くが仕事等の関係で時間が取れず、例年通りの開催が危ぶまれていた時期があったそうなのです。 けれど、それを救ったのが若手の、特に女性の実行委員たち。 「ほんとによく頑張ってくれた」と委員長は、壇上から頭を下げておられました。 −−頷けます。 会場の受付や、バンフ等の販売コーナー、ゲストのお世話など至る所で女性委員の溌剌とした姿が目立ちましたし、何より象徴的だったのが「ヴァイブレータ」のシンポを大成功に導いたKさんの存在。 世代交代も順調に進んでいるようで、外部の人間としてもひと安心です。
 「映画祭も2年後に節目となる【30回】を迎えます。まだ、非公式ですが...」。 30周年を記念して映画を製作しないかという話が、応援してくれている人たちの間で上っているそうです。 簡単に実現できるものではないですが、もし実際に走り出したなら、カンパの一口でも応援したいと考えています。
 「今回も、3人の新人監督の作品を上映できました。デビューの場が湯布院だったことが、 何よりの喜びです!」−−打ち上げの拍手が鳴り終った後も、立ち去りがたい雰囲気が辺りを包み込んでいました。
 [最後に] レポートしたい事が多すぎて、予想の何割か増しの書込み量になってしまいました。これでも自重して、ネタの半分以上はカットしたのですが・・・。 参加の度、楽しさが倍増してきて、今ではどっぷりと映画祭にはまり込んでいる状態。 気持ち的にはもう、来年の連続参加を決意しています!