伝説のMMO「神の道」を誰が墓場から蘇らせたのか
JOY祭り、エアロバキバキ、かつてのインターネットでは耳目を集める事件があればそれを「祭り」と呼びました。いつだって人々は一期一会のものとして祭りを楽しみ、そしていつしかそれがあったことすら忘れて毎日を生きています。
2003年に小規模MMO板で祭りとなった「神の道」のことを覚えている人はいるでしょうか。
「人智を超えろ 新MMO神の道」というタイトルで2chにスレが立ったのですが、ネットゲームの究極の進化系と謳うわりにファミコンみたいな画像しかない公式ページ、αテストの参加料になぜか4000円取られるという金額の謎、個人で取ってるドメイン、断片的に与えられる情報だけで見る人すべてを不安にさせました。
まるで「明らかに完成しそうにないRPGツクール」に金を取ろうとする心意気にスレ住民が戸惑っていたところに、なぜか作者本人が降臨。壮大な構想を語るも、スレ住人からはツッコミの嵐。それでも「ご安心ください。運営は必ず成功させます」「何から何まで斬新でしょ?」と謎の自信。ゲームもヤバそうだが、製作者はもっとヤバそうだと住民のテンションも上がります。
そして、カクカク動くカッパのGIFを公開して住民の笑いを誘ったり、お昼ごはん食べてきますと宣言したきり帰ってこなくなったり、製作者本人が自分で次スレを立てて周りを困惑させたりして住民に笑いを提供し続け、スレを去って行きました。
いつしかαテスト開始予定を翌月に控える11月が到来しました。
「いよいよ時が来た」「マジでこれサービス開始するのか…?」スレでは期待と不安が入り乱れた空気が流れました。
「αテスト延期と募集停止のお知らせ」
案の定、延期のお知らせが公式サイトに掲示され、事前に4000円を入金した人にはなぜか倍付けとなる8000円が返金されました。
そして製作者は姿をくらまし、「神の道」は永遠にサービスを開始することはありませんでした。
当時の2chのログを残してくれているサイトがあります。ログ取ってくれててありがたいことですね。今読んでも熱気が感じられて笑えます。
・伝説のオンラインゲーム
・伝説のオンラインゲーム・衝撃のgifアニメ編
・伝説のオンラインゲーム・壊れる製作者編
・伝説のオンラインゲーム・結末編
2chの小規模MMO板という辺境で、一時期に起きた少しの人たちの小さな祭り。
本来はこの程度のことではあるんですが、当時リアルタイムで見てたのであまりにインパクトが強すぎて、「こんなこともあったなー」とインターネット昔話的に、暇な時ログを読んで懐かしんでたりもしたんですよ。関係ないですけど、インターネット昔話って結構需要あるんで誰か時々思い出話をしてほしいです。
で、今回もふと思いついて「神の道」で検索してたんですけど、「神の道 MMO」というサジェストが出てきて、おぉ、いまだにサジェストされるような言葉なのかと感動していたところ、検索結果で見つけたのは公式サイトっぽいURL。
「あれ、公式サイト消えてなかったけか」と訝しみつつもクリックしてみると…。
バカな…、復活している……。
今2015年だよな。2003年じゃないよな…!? 念の為に時空が歪んでタイムスリップした可能性も検討するために、コンビニに行って「今何年ですか!?」と聞こうとも思いましたが、出かける前にパソコンの時計を見てみると2015年でした。どうもこれは本当に復活しているらしい……。
一体誰がこんな何の得にもならないようなことを。主犯、犯行動機ともに不明。せやかて工藤、何とか調べる方法はあらへんもんやろか。
WHOISでドメインの所有者を調べてみたところ、所有者は吉野何とかさんで、オリジナル版「神の道」を製作していた人物と氏名が一致しており、当時の事情を知る人物の一人による犯行なのは間違いないと思われます。住所は「東京都渋谷区桜丘町26-1セルリアンタワー 11階」で、GMOクラウドの本社と同じなので適当に入れてるんでしょうか。
ともかくも得体のしれない意思を画面の向こうに感じながら、ゲームの説明を読んでいくと「GoogleChrome推奨です」の一言が。
「神の道」の説明文でChromeという文字列を見る時代が訪れるとは夢にも思いませんでしたが、ともかくもこの世界線の2003年にChromeは存在しなかったので、オリジナルの「神の道」とは違う、作りなおされた別の「神の道」であるようです。
リメイク版「神の道」はブラウザゲーで気軽に遊べるみたいなので、早速登録して遊んでみます。
登録者数は73人で同時ログインは8人。
ソシャゲでも何でもそうですが、どれだけマイナーなゲームでもそこに人間は(少数にせよ)いるもので、いつも不思議に思うんですよね。彼らは一体どこから来て、なぜ遊んでいるのか。過疎ゲーを遊べば遊ぶほど、世界には人が多いのだと逆説的に感じるところがあります。
ゲーム自体は選択式のブラウザゲーで、「神の道」を冠するだけあって貫禄のクソゲーです。敵と戦闘になっても60秒に1回しか行動できないので暇すぎますし、何をやっても非常に淡白なところがあります。
地味に更新されてるみたいなので、誰の犯行か知りませんが頑張っていってほしいですね。成長システムが普通にRPGしてるので、ポテンシャルは感じさせるところがあります。あの伝説の「神の道」がこうして何者かの手によって祭りから12年経って突如公開されるという事態そのものに、状況芸術として既になんだか完成された感がありますが。
ちなみに序盤の攻略なのですが、荘園1に移動して、「行動」から連続攻撃を設定しておいて一晩くらい放置しておくと良いです。するとある程度金が貯まるので商店街に行って装備を買いましょう。レベルは放っておくと永遠に上がりません。経験値が溜まったら自分の名前をクリックしてステータス画面を出して、そこでレベルアップを選択する必要があります。
説明がなさすぎてここまで理解するのに苦労しました。ある程度レベルが上がると、行ける場所も増えて多少遊びやすくなると思います。「神の道」の世界を自由に楽しみましょう。
かつて存在した「ノーステイル」というMMOは、ある日突如サーバー落ちしてアクセス不能になったと思ったら、実態は運営会社が夜逃げしており、そのままサービス終了になるというデスノートの心筋梗塞みたいな突然死を迎えました。
しかし、そんな大変な事態が起こってるわりには2chの本スレもそんなに伸びてなくて、サービス終了後に「伝説の終了になったとしても、伝説を語り継いでいくほど人がいない」とまで書かれてて笑ったことがあるんですけど、確かに関係者の少ない物事ほど、伝説的事件が起きたときにも語り部はおらず、いつしか広大なインターネットの地層に埋もれ、歴史から忘れられてしまいます。だからこそ、後世の誰かの目に少しでも止まる可能性のあるように記録を取っておくことは大事なのです。
悲劇は、それを繰り返さないために語り継ぐ必要のあるものですが、喜劇は、それが滅多に起きないことであるがゆえに語り継ぐ価値のあるものです。
ひょっとしたらこのリメイク版は、かつて人々から祭られた「神の道」が時を経てインターネットの記憶から消えてしまわないように、みんなに「神の道」のことを思い出してもらい、この先も末永く語り継いでもらいたいという願いを込めて作られたのかもしれません。
オリジナル版の製作者さんはもう記憶から消したいと思ってるでしょうに、12年も経ってわざわざ掘り起こしてくる畜生ぶりには頭が上がりません。
でもほんと、この今更ほとんど誰も覚えてないようなネタで、ドメインまで取って、こんな手がかかったもの作って…。
せっかく神さまが、金持ちにも貧乏人にも平等に時間というものを与えてくれたのに、その貴重な時間をわざわざ「神の道」に投入する判断についてはお母さんに一度謝ったほうがいいのではないかと思わなくはないのですが、こういう人がいるからこそ世の中は生きてて楽しくなるのだと思うのです。
2003年に小規模MMO板で祭りとなった「神の道」のことを覚えている人はいるでしょうか。
「人智を超えろ 新MMO神の道」というタイトルで2chにスレが立ったのですが、ネットゲームの究極の進化系と謳うわりにファミコンみたいな画像しかない公式ページ、αテストの参加料になぜか4000円取られるという金額の謎、個人で取ってるドメイン、断片的に与えられる情報だけで見る人すべてを不安にさせました。
まるで「明らかに完成しそうにないRPGツクール」に金を取ろうとする心意気にスレ住民が戸惑っていたところに、なぜか作者本人が降臨。壮大な構想を語るも、スレ住人からはツッコミの嵐。それでも「ご安心ください。運営は必ず成功させます」「何から何まで斬新でしょ?」と謎の自信。ゲームもヤバそうだが、製作者はもっとヤバそうだと住民のテンションも上がります。
そして、カクカク動くカッパのGIFを公開して住民の笑いを誘ったり、お昼ごはん食べてきますと宣言したきり帰ってこなくなったり、製作者本人が自分で次スレを立てて周りを困惑させたりして住民に笑いを提供し続け、スレを去って行きました。
いつしかαテスト開始予定を翌月に控える11月が到来しました。
「いよいよ時が来た」「マジでこれサービス開始するのか…?」スレでは期待と不安が入り乱れた空気が流れました。
「αテスト延期と募集停止のお知らせ」
案の定、延期のお知らせが公式サイトに掲示され、事前に4000円を入金した人にはなぜか倍付けとなる8000円が返金されました。
そして製作者は姿をくらまし、「神の道」は永遠にサービスを開始することはありませんでした。
当時の2chのログを残してくれているサイトがあります。ログ取ってくれててありがたいことですね。今読んでも熱気が感じられて笑えます。
・伝説のオンラインゲーム
・伝説のオンラインゲーム・衝撃のgifアニメ編
・伝説のオンラインゲーム・壊れる製作者編
・伝説のオンラインゲーム・結末編
2chの小規模MMO板という辺境で、一時期に起きた少しの人たちの小さな祭り。
本来はこの程度のことではあるんですが、当時リアルタイムで見てたのであまりにインパクトが強すぎて、「こんなこともあったなー」とインターネット昔話的に、暇な時ログを読んで懐かしんでたりもしたんですよ。関係ないですけど、インターネット昔話って結構需要あるんで誰か時々思い出話をしてほしいです。
で、今回もふと思いついて「神の道」で検索してたんですけど、「神の道 MMO」というサジェストが出てきて、おぉ、いまだにサジェストされるような言葉なのかと感動していたところ、検索結果で見つけたのは公式サイトっぽいURL。
「あれ、公式サイト消えてなかったけか」と訝しみつつもクリックしてみると…。
バカな…、復活している……。
今2015年だよな。2003年じゃないよな…!? 念の為に時空が歪んでタイムスリップした可能性も検討するために、コンビニに行って「今何年ですか!?」と聞こうとも思いましたが、出かける前にパソコンの時計を見てみると2015年でした。どうもこれは本当に復活しているらしい……。
一体誰がこんな何の得にもならないようなことを。主犯、犯行動機ともに不明。せやかて工藤、何とか調べる方法はあらへんもんやろか。
WHOISでドメインの所有者を調べてみたところ、所有者は吉野何とかさんで、オリジナル版「神の道」を製作していた人物と氏名が一致しており、当時の事情を知る人物の一人による犯行なのは間違いないと思われます。住所は「東京都渋谷区桜丘町26-1セルリアンタワー 11階」で、GMOクラウドの本社と同じなので適当に入れてるんでしょうか。
ともかくも得体のしれない意思を画面の向こうに感じながら、ゲームの説明を読んでいくと「GoogleChrome推奨です」の一言が。
「神の道」の説明文でChromeという文字列を見る時代が訪れるとは夢にも思いませんでしたが、ともかくもこの世界線の2003年にChromeは存在しなかったので、オリジナルの「神の道」とは違う、作りなおされた別の「神の道」であるようです。
リメイク版「神の道」はブラウザゲーで気軽に遊べるみたいなので、早速登録して遊んでみます。
登録者数は73人で同時ログインは8人。
ソシャゲでも何でもそうですが、どれだけマイナーなゲームでもそこに人間は(少数にせよ)いるもので、いつも不思議に思うんですよね。彼らは一体どこから来て、なぜ遊んでいるのか。過疎ゲーを遊べば遊ぶほど、世界には人が多いのだと逆説的に感じるところがあります。
ゲーム自体は選択式のブラウザゲーで、「神の道」を冠するだけあって貫禄のクソゲーです。敵と戦闘になっても60秒に1回しか行動できないので暇すぎますし、何をやっても非常に淡白なところがあります。
地味に更新されてるみたいなので、誰の犯行か知りませんが頑張っていってほしいですね。成長システムが普通にRPGしてるので、ポテンシャルは感じさせるところがあります。あの伝説の「神の道」がこうして何者かの手によって祭りから12年経って突如公開されるという事態そのものに、状況芸術として既になんだか完成された感がありますが。
ちなみに序盤の攻略なのですが、荘園1に移動して、「行動」から連続攻撃を設定しておいて一晩くらい放置しておくと良いです。するとある程度金が貯まるので商店街に行って装備を買いましょう。レベルは放っておくと永遠に上がりません。経験値が溜まったら自分の名前をクリックしてステータス画面を出して、そこでレベルアップを選択する必要があります。
説明がなさすぎてここまで理解するのに苦労しました。ある程度レベルが上がると、行ける場所も増えて多少遊びやすくなると思います。「神の道」の世界を自由に楽しみましょう。
かつて存在した「ノーステイル」というMMOは、ある日突如サーバー落ちしてアクセス不能になったと思ったら、実態は運営会社が夜逃げしており、そのままサービス終了になるというデスノートの心筋梗塞みたいな突然死を迎えました。
しかし、そんな大変な事態が起こってるわりには2chの本スレもそんなに伸びてなくて、サービス終了後に「伝説の終了になったとしても、伝説を語り継いでいくほど人がいない」とまで書かれてて笑ったことがあるんですけど、確かに関係者の少ない物事ほど、伝説的事件が起きたときにも語り部はおらず、いつしか広大なインターネットの地層に埋もれ、歴史から忘れられてしまいます。だからこそ、後世の誰かの目に少しでも止まる可能性のあるように記録を取っておくことは大事なのです。
悲劇は、それを繰り返さないために語り継ぐ必要のあるものですが、喜劇は、それが滅多に起きないことであるがゆえに語り継ぐ価値のあるものです。
ひょっとしたらこのリメイク版は、かつて人々から祭られた「神の道」が時を経てインターネットの記憶から消えてしまわないように、みんなに「神の道」のことを思い出してもらい、この先も末永く語り継いでもらいたいという願いを込めて作られたのかもしれません。
オリジナル版の製作者さんはもう記憶から消したいと思ってるでしょうに、12年も経ってわざわざ掘り起こしてくる畜生ぶりには頭が上がりません。
でもほんと、この今更ほとんど誰も覚えてないようなネタで、ドメインまで取って、こんな手がかかったもの作って…。
せっかく神さまが、金持ちにも貧乏人にも平等に時間というものを与えてくれたのに、その貴重な時間をわざわざ「神の道」に投入する判断についてはお母さんに一度謝ったほうがいいのではないかと思わなくはないのですが、こういう人がいるからこそ世の中は生きてて楽しくなるのだと思うのです。