堀込泰三 - こころ,ニュース・コラム,モチベーション,人生,生活 10:00 PM
「ライフハックとは、努力から逃げることではない」米Lifehackerライターが語る、ライフハックの神髄
ダイエットや新しいスキルの習得、おいしい食事の作り方など、仕事を効率的にするテクニックは巷にあふれています。でも、作業の効率化と、作業のすべてを避けることは大きく違います。ありもしないショートカットを探すことにかまけて、本来すべきことをしないようでは本末転倒。時間の使い方を、イチから考え直すべきです。
効率化≠さぼること
「ライフハック」が流行るにつれて、安易なショートカットがもてはやされるようになりました。仕事をさぼる方法や、努力もせずにお金持ちになる方法など、その多くは目新しいものでないにもかかわらず、注目を集めるようになってしまいました。今や誰もが、「仕事の効率化」と「何もしないこと」を混同しています。
ライフハックを極めたら、週4時間しか働かなくてよくなるのか
例として、ティモシー・フェリスの『「週4時間」だけ働く。』を取りあげてみましょう。フェリス氏は、仕事をできるだけアウトソースし、ビジネスを自動運転させることで、週に4時間しか働かずに大金を稼ぐというアイデアを発信しました。新しくはありませんが、悪い発想ではありません。事実、自動積立をすれば貯金は楽に増えていきますし、雑用をアウトソースすれば、空いた時間を好きなことに充てられます。
だからといって、お金持ちになれるわけではありません。フェリス氏が週4時間だけ働けばよいライフスタイルを確立できたのは、恵まれた環境で育ち、いい高校に行き、いい大学に進み、いい仕事に就くことができたからです。そのうえで、エクササイズ用サプリメントを売るビジネスを立ち上げ、大成功を収めたからです。
フェリス氏は、努力をさも時間の無駄であるかのように語るふしがあります。ダイエットやスキルの習得について、次のように述べています。
- 「手早く痩せたいあなた、きつい食事制限や運動をしなくても痩せる方法がありますよ!」
- 「新しい言語を覚えたいあなた、1週間でできますよ!」
そんなうまい話、あるはずがない
ショートカットで得られた習慣は、決して長続きしません。短期的な結果は得られても、長期的には失敗しか残らないでしょう。そして、「どこで間違えたのかな?」と首をかしげることになります。そして、原因がわからず、自分のせいだと思い込み、また新たな自己啓発書に手を伸ばすという悪循環に陥ることでしょう。
具体的な例で考えてみましょう。カロリー制限は、よくあるショートカットです。食べる量を減らすのですから、体重は減ります。表面上はうまくいったように見えるでしょう。でも、通常の食生活に戻せば、体重は元通りになってしまうはずです。以前も指摘したように、食事は毎日するものです。つまり、ショートカットして一時的に痩せてもしょうがないのです。健康でいるためには、運動と健康的な食生活を一生続けなければならないのです。
「目標を達成するために必要な本当の努力」を回避することはできません。速く読むことはできても、内容をあとで思い出せるかどうかは別の話です。ハードなトレーニングで筋力を手早く鍛えることはできても、トレーニングを続けなければ元に戻ってしまいます。ライフハックとはスマートに無駄を省く方法であって、「仕事の本当にハードな部分」から逃げることではないのです。
「努力=やりたくないこと」という定義はやめよう
何かを成し遂げるために必要な努力に対し、不満を言ったり、弱音を吐いたりするのはやめましょう。ライフハックとは、散らかったマンションやどうしようもないほど忙しい仕事を、魔法のようになんとかしてしまうことではありません。ライフハックの神髄とは、投じた努力を無駄にすることなく、仕事を早く効率的にこなすことにあるのです。
何をするにも努力は必要ですが、努力にはポジティブな効果があります。本当に言語を学びたいと思っているなら、単語を1つ覚えたあとに、ちょっとした満足感を覚え、また単語を覚えようとするでしょう。努力は必ず、あなたを目標に近づけてくれるはずです。
仕事も同じです。大好きな仕事に就き、情熱を追求できる人はごく一部に過ぎません。だからと言って、仕事を嫌う必要もないのです。いつもさぼることばかり考えているなら、辞めることを考えた方がいいだけなのかもしれません。すぐに辞めるのが難しいのであれば、自分を見つめ直してみるのもいいでしょう。ここでも、ショートカットは存在しません。スマートに計画することが大切です。
魔法のように解決してしまえるほど、物事は単純ではない
- 「クリエイティブに感じられないなら、休みを取りましょう! 休みから戻ったら、100%クリエイティブになれますよ!」
- 「気分が落ち込んでいるなら、エクササイズをすれば解決です!」
こうしたアドバイスのとおりに行動したからといって、必ず結果が得られるわけではないのです。人間は、自分の努力を課題評価して、大げさな結果を期待してしまいがちです。幸せに生きるためには、そのための努力を避けて通ることはできません。努力を毛嫌いするのはやめたほうがいいでしょう。
Thorin Klosowski(原文/訳:堀込泰三)
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- 努力が勝手に続いてしまう。
- 塚本 亮ダイヤモンド社