米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる、安倍政権と沖縄県の集中協議が9日の期限に向けて最終盤を迎えた。すでに4回の協議を終えたが、溝はなかなか埋まらない。

 それでも、一連の協議が無駄だったわけではない。

 狭い沖縄県に、なぜ在日米軍基地の74%が集中しなければならないのか。在沖海兵隊の抑止力は本当に必要なのか――。

 翁長雄志知事が投げかけた質問や疑問から、沖縄県民が県内移設になぜいま強く反対しているのかが、これまで以上に明確になったのではないか。

 たとえば抑止力論議。

 県はこれまで、普天間飛行場の海兵隊がなくても、羽田空港の1・3倍ある空軍嘉手納基地や、原子力潜水艦も寄港する海軍ホワイトビーチの抑止力が機能しているはずだと問いかけてきた。なのに、なぜ辺野古の海を埋め立ててまで県内移設が必要なのか、と。

 中谷防衛相は協議に絡めた沖縄訪問で「地上、航空、後方支援各部隊が連携を深めて即応性を維持する。沖縄にまとまっていた方が対応能力がある」と海兵隊の存在理由を答えた。

 だが、海兵隊部隊を運ぶ強襲揚陸艦は長崎県の米軍佐世保基地に、海兵隊の垂直離着陸攻撃機ハリアーは山口県の米軍岩国基地に配備されている。米軍再編で主要部隊も沖縄からグアムやハワイなどに分散する。

 翁長氏は「抑止力の原点である一体性、即応性、機動性の点で大変おかしい」と反論した。

 こうした沖縄の疑問に、政権は真摯(しんし)に向き合うべきだ。

 政権は、辺野古移設によって「力の空白をつくらない」と強調する。これに対し、翁長氏は「沖縄と日本の間に心の空白ができている」と指摘した。

 県民の4人に1人が命を落とした沖縄戦。日本国憲法の枠外に置かれた米軍統治。普天間返還問題が動き始めるきっかけとなった、20年前の海兵隊員による少女暴行事件……。

 長い歴史と数々の基地被害による「心の空白」を埋めるためにも、複雑な曲折をたどってきた基地移設の答えを探るためにも、わずか1カ月の協議で足りるはずがない。

 協議をこのまま決裂させ、双方が対抗措置を繰り出す泥沼の衝突に発展させてはならない。

 協議を早期に打ち切ることなく、双方が納得できるまで続けることを政権に求める。

 そうでなければ、やはり安保法案審議による内閣支持率低下を懸念した時間稼ぎだった、と言われても仕方がない。