2015年8月31日月曜日

「フランスでは国にセクト(カルト)問題のミッションがある」UNADFIのピカール会長が講演=日本脱カルト協会創立20周年公開講座開催

公開講座でのピカール氏の講演
本紙既報の通り、8月29日に立正大学品川キャンパスに於いて日本脱カルト協会(JSCPR)創立20周年公開講座が開催された。約240人の聴衆が参加した会場では、協会員による発表の他、フランスの元国会議員で無知脆弱性不法利用罪の制定に尽力したカトリーヌ・ピカール氏の講演が行なわれた。

ピカール氏は講演と質疑応答の中で、フランスに於けるセクト(有害カルト)対策や被害者救済について触れた他、国がカルト問題に積極的関わり経済的な面を含め支援をしている状況を話し、カルト問題が人権の問題であることを強調した。

カトリーヌ・ピカール氏
第1部では 日本脱カルト協会のメンバーがそれぞれの立場から4つの報告を行なった。

・「元信者の抱える問題」(カルト団体の脱会者)
・「カルト信者の家族の苦悩」(カルト信者の子供を脱会させた経験を持つ親)
・「信者及び家族へのカウンセリングの展開と課題」(臨床心理士)
・「カルト予防対策と市民意識高揚の課題」(弁護士)


休憩をはさんで行なわれた第2部の講演でピカール氏は「多くのセクト(有害カルト)は全世界的で悪事をしている」「欧州でも『無関心』の障害に当たっている」と話した他、フランスではカルト対策の市民団体ADFIの連合会であるUNADAFIと国の機関が連携しセクト(有害カルト)問題に取り組んでいることが示された。また無知脆弱性不法利用罪の制定の経緯や実際の運用に至る過程や課題についても詳細な解説がなされた。

講演後の質疑応答に於いても、セクト2世が成長し脱会の意思を持つに至った際に市民団体UNADAFIが住宅・職業・自律的思考回復などの自立支援を行なっていること、そしてそのような活動を行なうUNADAFIを国が公益団体と認定し補助金も支給されていることが明かされた。UNADAFIには5名の専従職員が務めており、その給与は国の補助金から支給されるという。カルト問題に関わる識者らが身銭を切って対策組織を運営している日本のカルト対策事情とは雲泥の差である。

聴衆からの質問事項に応える質疑応答の時間も取られた
また、ピカール氏は「無知脆弱性不法利用罪の作成に際し『宗教』『政治』『仕会』をきっちり分離した。伝統宗教とセクト問題は別、人権問題としてしか捉えていない」とセクト問題が宗教問題ではなく人権問題であることを改めて示した。そしてフランスとアメリカでは自由と人権に対する考え方に大きな違いがあるとして「フランスでは国にセクト問題のミッションがある」「フランスでは国が市民を護らなければならないとの信念を持っている」と語り、国としての姿勢を解説した。


通訳を務めた仏在住のジャーナリスト広岡裕児氏によると、フランスでは国立大学に社会人を対象にした1年コースの修士課程『セクト的支配、脆弱性のプロセス及び倫理的課題』が設置されており、セクト問題に関心を持つ一般市民が講義を受ける体制が整備されているという。
そして、フランスでは市民団体が始めたセクト対策運動が、20年以上の時を経て行政が直接セクト(カルト)問題に関わる体制にまで結実しており、首相直属の MIVILUDES(セクト的逸脱対策警戒関係者間本部)の他、国民教育省にCPPS(セクト的現象予防室)、内務省にCaimades(セクト的逸脱関係扶助介入室)がありそれぞれがUNADAFIと連携しているそうだ。


日本脱カルト協会の西田公昭代表理事は公開講座修了時の挨拶でフランスと日本のカルト対策の実情を較べ「我々はまだ緒に就いたばかり」と締めくくった。

会場には統一教会や摂理の関係者の姿もあったが、特に混乱もなく公開講座は終了した。

様々な困難を乗り越え国レベルでカルト対策に取り組むカルト対策先進国・フランスに対し、政権与党を始め多くの政治家が選挙絡みでカルトと高い親和性を持つ我が国日本。フランス式自由主義と人権擁護概念がカルト対策後進国である日本に根付くために何が必要なのか、日本社会は大きな課題を突き付けられた。


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