【北京=大越匡洋】中国の習近平指導部は社会不安の封じ込めへ情報統制を一段と強めている。株価の急落などを巡ってインターネット上で「デマ」を流したとして、公安省は31日までに197人を摘発し、165のサイトを閉鎖した。官製メディアは「中国発の世界株安」との見方への反論を一斉に報じ、党体制の威信が揺らぐことに神経をとがらせている。
公安省が摘発したのは、株価下落、天津の爆発事故、9月3日の抗日戦争勝利70年の軍事パレードに関して、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」や、約5億人が利用する無料対話アプリ「微信」などで「デマ」を流したとされる人々だ。
公安省は8月30日の声明で「民心を惑わし、悪意をもって共産党や国家の指導者を攻撃した」として、摘発の理由に「指導部への攻撃」を挙げた。さらに「ネット空間は公共空間だ。デマは社会の調和や安定に重大な影響を与え、党や国家のイメージを損なう」として、今後も「絶対に手加減しない」と警告した。
公安省が「デマ」の具体例として列挙したのは「株価が急落し、北京の金融街で男性が飛び降り自殺した」「指導者の親族が香港で悪意ある空売りをした」「天津の爆発事故で北京に有毒ガスが拡散している」――といった内容だ。3日の軍事パレードに絡んだテロの情報も流れたという。
9月は軍事パレードに加え、習国家主席の訪米を控える。一連の重要な政治イベントを意識し、習指導部は共産党の支配体制に動揺を生じさせかねない社会不安の種に過敏になっている。それが「デマ」の一斉摘発という強硬策につながった。
「中国は国際資本市場の混乱の震源ではない」。党機関紙の人民日報が最近載せた論説だ。中国の株価急落や人民元の切り下げをきっかけに世界的な株安が広がったが、官製メディアはこぞって「米利上げへの警戒にこそ原因がある」といった反論を展開している。
習氏の晴れ舞台である軍事パレードの翌4日、トルコで20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。中国経済に世界の注目が集まるだけに、国を挙げて市場に広がる中国不安説を打ち消そうと躍起だ。
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