【社説】雇用と成長を伴わない起業ブームの虚像

 韓国国内で先月新たに設立された法人の数は8936に達し、これは中小企業庁が統計を取り始めた2000年以降では最も多く、前月に続いて過去最高を記録した。このような流れが今後も続けば、今年設立される法人の数は9万を上回る、と中小企業庁は予測している。これも、年間設立件数ではもちろん過去最高となる。

 ここ最近の起業ブームは、朴槿恵(パク・クンヘ)政権が成長戦略の一つとして掲げている「創造経済の育成」に後押しされている部分が大きい。政府は2013年5月に発表した「ベンチャーの起業資金生態系善循環方案」を皮切りに、ここ2年間に10件以上のベンチャー支援策を発表している。今年も1月に100兆ウォン(約10兆円)の予算を、新たに成長が期待される分野への支援に投じ、全国17の特別市、広域市、道に「創造経済革新センター」を設立するなど、政府も引き続き起業を後押しする方針を明確にしている。

 ところがこのような起業ブームとは裏腹に、韓国経済は全体として今も活気が感じられず、実際に2011年以降は3%前後の低成長が続いている。しかも今年はそれがさらに落ち込み、2%台にとどまるとの見通しも少なくない。つまり、現在の起業ブームは国全体に雇用を生み出すことも、また成長を引き出すこともできていないというわけだ。グーグルやフェイスブックなどが世界のグローバル企業に成長し、経済成長を後押ししている米国とは事情が全く異なる。

 ちなみに韓国では企業が新たに立ち上げられた場合、雇用を生み出す前に閉鎖するケースが非常に多い。まず起業から3年後の生存率がわずか41%で、これはルクセンブルク(67%)、オーストラリア(63%)、米国(58%)など経済協力開発機構(OECD)加盟各国と比べると非常に低い。

 今や活力が失われつつある韓国経済にとって、新たな起業は、経済全体が生まれ変わるためにぜひとも必要だ。ただし、現在の起業ブームも、かつてのように経済全体に大きな傷を残すようなことがあってはならない。過去の政権もベンチャー企業育成のための政策を繰り返し進めてきたが、起業ブームは常に一時的なもので、バブルが弾けた後には巨大な負債だけが残った。つまり、起業は政府が資金を投入するだけで自然に成功するようなものではない。

 まず何よりも新たに生まれた企業が成長を続け、雇用を生み出すことができるよう、経済の生態系をうまく回さなければならない。また、ベンチャー企業が大企業に成長するに当たって障害となる規制も少なくない。政府の支援がなくなると同時に立ち行かなくなるような企業や、政権が変われば維持できなくなる企業は、経済全体にとって何のプラスにならないため、むしろ早いうちに整理するか、あるいは最初から起業しない方が良い。

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