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【アジアの目】独立50周年迎えたシンガポールに陰り…経済は下り坂、指導者一族に疑惑も

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【アジアの目】
独立50周年迎えたシンガポールに陰り…経済は下り坂、指導者一族に疑惑も

独立50周年を祝い、シンガポール国旗を振る人々。式典の翌々日、政府は経済成長見通しを下方修正した=9日、シンガポール中心部(ロイター)

指導者一族の疑惑

 シンガポール政府は外国人の就労基準を厳しくするなどで、こうした国民の不満の高まりを抑える姿勢を打ち出しているが、経済成長を続けてこられたのも、外国人労働者に多くを頼ってきた結果だけに、制限すれば経済低迷に拍車をかけることになる。

 一方、国内ではこれまで、新聞やテレビ、雑誌をすべて政府の事実上の監視下に置き、言論・表現の自由を制限してきた。政府批判、とくにリー・クアンユー一族に対する批判は一切許さなかった。シンガポールの政府系ファンドGICの社長はリー・シェンロン首相。さらにソブリン・ウエルス・ファンド、テマセク・ホールディングスの最高経営責任者(CEO)はリー首相のホー・チン夫人が務める。シンガポールの中央積立基金(CPF)の運用をめぐる不透明性を指摘したブロガーは、リー首相の名誉を毀(き)損(そん)したとして裁判にかけられている。

 マレーシアのナジブ首相が国家ファンドから資金提供を受けたとされる疑惑が取り沙汰されているが、国の指導者一族がファンドと直接関わり合いを持つことは縁故主義だけでなく、シンガポールが信奉する能力主義に対する批判を招きやすい。かつてリー・クアンユー氏は、息子が首相になるのは、能力に基づくもので息子だからではないと主張したが、こうした主張が通ったのも、国民の生活が日々、豊かになっていた最中だったからだ。経済が落ち目になれば、政権は厳しい選挙を強いられるのはどこも同じだ。シンガポールも例外ではない。(編集委員 宮野弘之)

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