防衛省が来年度予算の概算要求を公表した。総額は過去最大の5兆911億円。要求増は4年連続である。

 安倍政権は今月半ばにも安全保障関連法案の成立をめざしている。成立すれば、自衛隊の任務は増え、活動範囲は広がる。当然、防衛費もさらにふくらむ可能性がある。

 限られた予算のなかで防衛費をどこまで負担するかは国民の理解が欠かせない問題だが、国会での議論は足りない。

 政府は防衛費の将来見通しを国会審議などを通じてしっかり説明すべきだし、野党は政府にただしてもらいたい。

 政府は、安保法案が成立すれば抑止力が高まると強調するが、予算の裏打ちなしに抑止力が高まるはずはない。

 法案が成立すれば、日ごろの教育訓練はもとより、他国軍との共同訓練にかかる費用など、自衛隊の海外展開に向けたコストは増えるだろう。

 例えば、中東からインド洋、南シナ海を経てくるシーレーン(海上交通路)防衛や、過激派組織に対する軍事行動への兵站(へいたん、後方支援)など、コストのかかる海外派遣に加わる可能性も出てくる。

 安倍首相は、中期防衛力整備計画(中期防、14~18年度)で5カ年の防衛費の総額を明示しているとして、安保法制の整備が防衛費には影響を与えないという趣旨の説明をしている。

 そうだとしても、次の中期防に向けて、防衛費拡大の議論が浮上する公算は大きい。新安保法制で日米同盟の強化を言いながら、実際は自衛隊が動けないようだと、かえって日米の信頼を傷つけかねないからだ。

 安倍首相は4月の訪米時に、アベノミクスで経済が良くなれば「当然、防衛費をしっかりと増やしていくことになる」と語っている。

 今回の概算要求で目立ったのも、米国製兵器の購入を優先させる姿勢だ。

 新型輸送機のオスプレイ(12機、1321億円)▼戦闘機F35A(6機、1035億円)▼滞空型無人機グローバルホーク(3機、367億円)▼新早期警戒機E2D(1機、238億円)▼水陸両用車AAV7(11両、74億円)――。

 兵器が高額なら、維持費や修理費もかさむだろう。政府は今後の費用対効果もふくめ、明確に説明すべきだ。

 中国の軍備拡張や海洋進出への対応を考えれば、一定の負担が避けられないのは確かだが、未曽有の財政難のなか、予算に「聖域」はあり得ない。