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【栃木】絵がいじめから救ってくれた 宇都宮の18歳に広がる共感の輪
いじめが原因で引きこもりになった経験を乗り越え、現代アートの創作に取り組む宇都宮市の森山馬好(まこ)さん(18)=本名・坪井麻里亜(まりあ)=の活動が、多くの人々を勇気づけている。新学期が始まる時期、いじめに悩む子どもへの支援や自殺予防が叫ばれる中、森山さんは「私は絵に救われた。苦しければ無理に登校せず、好きなことと向き合って」とまっすぐなまなざしで語る。 (大野暢子) 那須町の「那須高原私の美術館」で九月二十八日まで開催されている企画展「森山馬好 夢のアート展」では、小学生のころから最近までの作品を展示。昨年、東京で開かれた若手アーティストの芸術展で入賞し、その後の米国・ニューヨークの合同展に参加するきっかけとなった「アマリリス」など、生命力のあふれる約三十点を集めた。 武蔵野美術大の特修生として、同大通信教育課程への入学を目指しながら、自宅とアトリエで創作に励む。十月には、日光市の日光田母沢(たもざわ)御用邸で新作の企画展も控える。 森山さんは中学時代、同級生から教室の黒板に悪口を執拗(しつよう)に書かれたり、暴力をふるわれたりするようになった。現場を見ていたはずの先生も手を差し伸べてくれなかった。母親にさえ悩みを打ち明けられず、ストレスで円形脱毛症に。必死に通学を続けたが、中学三年の修学旅行での壮絶ないじめがきっかけで、自宅に閉じこもるようになった。 母親の純子さん(54)は「そんなに嫌なら無理に学校に行かなくていい」と声を掛け、森山さんの話を粘り強く聞いた。自宅で少しずつ好きな絵を描くようになった森山さんは、純子さんと一緒に公募展に出品するなどし明るさを取り戻した。 すると、各地のギャラリーから「うちに作品を出してみないか」という声が寄せられるように。広く作品を見てもらいたいとの思いが強まり、昨年、大好きな「森」「山」「馬」の字を入れた、海外の人でも発音しやすいペンネームにした。 企画展には「私は不登校だけど、将来は絵の仕事をしたい」と話す少女や、「三十代の息子が引きこもりになり、社会復帰できていない」と涙ぐむ母親など、葛藤を抱えた人々が訪れる。そのたび、相手の話にじっくりと耳を傾けてきた。 森山さんは、自宅に閉じこもっていたころに描いた「真っ暗な時間」という作品を指した。「当時は死を考えたし、暗い絵しか描けなかった。でも、たとえ死を選んでも、いじめっ子は平気で生きていくんですよね」。そして、色鮮やかな作品群を見て、こうほほ笑んだ。 「大好きなことを続けていかないと人生がもったいない。私の作品を見て、そう思ってもらえたらうれしいです」 PR情報
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