戦後70年の夏が過ぎ去ろうとしている。平和と安全保障と憲法、核兵器と原発、歴史認識。多くのことが語られた8月の言葉から▼『敗北を抱きしめて』の著者で米国の歴史家ジョン・ダワーさんは、「反軍事の精神」こそ日本のソフトパワーだと説く。「国民は70年の長きにわたって、平和と民主主義の理念を守り続けてきた。このことこそ、日本人は誇るべきでしょう」▼だが、安保関連法案の審議は進む。長崎市の田上富久(たうえとみひさ)市長は平和宣言で指摘した。「70年前に心に刻んだ誓いが、日本国憲法の平和の理念が、今揺らいでいるのではないかという不安と懸念が広がっています」▼「原発ゼロ」が終わった。前茨城県東海村長の村上達也さんは川内原発再稼働を批判する。福島の事故を忘れたのか、と。「我々はあの日を境に、以前と別の世界を生きている。そのことをこの国はかみしめるべきだ」▼戦後70年の安倍談話の評価は割れた。アメリカ政治外交史が専門の西崎文子(ふみこ)・東大教授は、「安全運転」の結果と読み解く。「過去の首相談話から大きく逸脱しなかったのは、安倍政権の安保政策や歴史認識に不安をいだく『国民世論』を無視できなくなったから」▼「違憲」の安保法案に反対する若者の声が高まる。憲法学者の樋口陽一さんは彼らに希望を見る。「一人ひとりが自分の考えで連帯する、まさに現憲法がうたう個人の尊厳のありようです。憲法が身についている、ということです」。民意の力の見せどころが続く。