【コラム】「抗日」も「抗米」も活用する中国

【コラム】「抗日」も「抗米」も活用する中国

 中国が9月3日に行われる抗日戦勝記念式典に朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を招待したのは、今年3月ごろのことだった。その後中国は韓国に対し、かつてないほど友好的かつ丁重に接してきた。韓国で中東呼吸器症候群(MERS)が猛威を振るっていた時期も、中国は韓国への旅行について特別な注意を呼び掛けなかった。それどころか、中国を訪れた韓国人MERS患者に治療を施し、韓国に帰国させた。病院で掛かった費用14億ウォン(約1億4000万円)は一銭も受け取らなかった。中国で研修中だった韓国の公務員10人が交通事故で亡くなった際も同じだった。中国で死亡した外国人の遺体を本国に搬送する場合、通常は複雑な手続きが必要だが、今回はわずか一日で遺体を飛行機で移送することに同意した。

 上海や重慶などにある大韓民国臨時政府庁舎の敷地は非常に地価が上がっているケースが多い。地方政府の立場では、再開発した方がはるかに利益を上げられる。しかし中国の中央政府は、臨時政府庁舎を取り壊すどころか再開館することを決めた。そんな中、官営「環球時報」は、朴大統領が中国を訪問すべき理由として「大韓民国臨時政府」に言及した。「中国は(第二次世界大戦の際)臨時政府に潜伏先を提供した」。臨時政府への言及部分は、北朝鮮ではなく韓国に向けた招待メッセージだった。韓国は臨時政府の法統を継承しているが、北朝鮮は臨時政府を低く評価しているからだ。

 ここまで見る限り、最近の韓中関係は「蜜月」ムードだ。しかし中国は、抗日戦争記念日の約50日後、6・25戦争(朝鮮戦争)参戦を正当化する内容のドラマを放映する予定だ。中共軍の「抗美援朝(米国に対抗し北朝鮮を助ける)戦争」参戦から10月25日で65周年を迎える中国は、『三八線』と題する全36話の連続ドラマを制作し、現在撮影を終えた状態だ。ドラマは、中朝国境への米軍の爆撃によって友人を失った中国人の若者が、中共軍(人民支援軍)に志願入隊するところから始まる。「米国の中国侵略を阻止するため6・25戦争に介入し、最終的に勝利した」という中国の従来の立場を繰り返す内容だ。習近平国家主席は、副主席時代の2010年10月、6・25戦争参戦60周年を迎え「(抗美援朝は)正義の戦争」と述べた。今年10月10日には北朝鮮の朝鮮労働党が創建70周年を迎えるが、中国がこの北朝鮮の記念行事に高官を派遣するとの見方も出ている。

 トウ小平氏の時代以降、中国は理念より実利を追求する傾向が顕著だ。現在の中国の対外戦略は、日本を抑えてアジアの覇権国としての地位を固めつつ、米国との競争に本格的に備えるというものだ。中国の立場からすれば、抗日戦勝記念式典への朴槿恵大統領の出席は、今回の式典のキーワードである「抗日」を強調する上で絶対に必要だ。しかし「抗美(抗米)」ドラマを制作していることを考えると、米国をけん制するために依然として「北朝鮮カード」が必要と判断しているように思える。最近の北朝鮮による韓国への挑発についても、中国はこれまでと同様に「双方とも自制すべき」との立場を示した。中国は「歴史」「友好」「兄弟」など、大義名分を重視するような言葉を掲げながらも、徹底的に実利を追求する。中国は抗米・抗日・韓国・北朝鮮をそれぞれ別個に考えてこそ国益にプラスになると見ている。一方で韓国は、朝・米・中・日を複雑に絡み合わせているようだ。

 朴大統領の抗日戦勝記念式典出席によって「韓中が密接になり過ぎた」と懸念する必要はないし、50日後に始まるドラマ『三八戦』を見て「中国がなぜこんなドラマを放映するのか」と怒る必要もない。トウ小平氏が貫いた「実事求是(事実に基づいて、真実を追求する)」の精神が今必要なのは、中国ではなく韓国だ。

北京= アン・ヨンヒョン特派員
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