大学の「2018年問題」が大きな関心を集めている。今は踊り場状態にある18歳人口が、この年から再び減少して大学経営を圧迫し、「淘汰の時代」が本格化するというのだ。「私立は半減してもおかしくない」との指摘さえある。厳しい環境に置かれている大学の現状と近未来を探った。
昨年9月、国立大学21校、公立大学2校、私立大学14校の計37校が「スーパーグローバル大学」に選定された。1大学当たり毎年1億円から4億円の資金を国が10年間投入して国際競争力を強化し、大学の世界ランキングでトップ100入りなどを目指す。
「選ばれた大学は国からトップ大学のお墨付きをもらったようなもの。ブランド力が高まり大幅な志願者増が見込めます」(大学関係者)。国による大学の〝格付け〟と言えなくもないが、延べ109もの大学が応募していたことで分かるように、多くの大学はその〝格付け〟にすがった。まもなく大学経営に「大きなハードル」(同)が訪れるからだ。「2018年問題」である。
大学入試の志願者は18歳人口と進学率に左右される。18歳人口のピークは、団塊ジュニアの多くが高校を卒業した1992年の205万人。「受験バブル」といわれたものだ。その後は減り続け、14年は118万人にまで落ち込んだ。それにもかかわらず、この間、4年制の私立大学は増え続けた。4年制にすれば志願者が集まると当て込み、短大からの転換が相次いだためで、92年の384大学から02年に500大学を超え、14年は603大学(国公立と合わせると、4年制は781大学)。
市場の縮小に逆行しており、経営破綻するところが続出してもおかしくなかったが、「かつて30%程度だった大学進学率が50%を超えるようになったため、経営はなんとか持ちこたえられた」(東京都内の私立大学長)。18歳人口の減少率ほど、志願者は減っていなかった。
しかも、多くの大学には「蓄え」があった。大学通信情報調査・編集部ゼネラルマネージャーの安田賢治さんが解説する。「受験バブルの際、浪人生が増えないようにと、文部科学省は大学に臨時定員増を認めました。それも教員や教室を増やさないままでよかったので、多くの大学は多額の利益を出せた。その蓄えを徐々に取り崩してきたのです」
だが、これからはそうもいかなくなりそう。18歳人口は横ばいでしばらく推移した後、18年度(118万人)から再び減少に転じ、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では31年には99万人と、ついに100万人を切る。あくまで予測だが、10年余りで20万人近くも減るというのだ。「進学率50%として10万人、1大学の入学定員を1000人とすれば、100大学分の入学者が消えることを意味します」。日本私立学校振興・共済事業団私学情報室長の菊池裕明さんはこう説明する。必然的に、志願者の獲得競争は激しさを極めることになる。これが「2018年問題」なのである。
「大学淘汰の波は静かに、だがヒタヒタと押し寄せている。2018年問題をきっかけに、その波が大きくなり、本格化する恐れがあります」と話すのは、大学イノベーション研究所所長で大学経営のコンサルタントをしている山内太地さんだ。
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