イラン:ムハンマド描いた映画人気 スンニ派は批判的
毎日新聞 2015年08月30日 22時14分
【テヘラン田中龍士】イスラム教シーア派国のイランで、イスラム教の預言者ムハンマドの生涯を描いた映画「神の使者、ムハンマド」が27日からテヘランなどで公開され、大きな話題となっている。同国の映画興行収入の記録更新が期待される一方、偶像崇拝を禁じるイスラム教でムハンマドを描くことはタブーとされていることから、アラブ諸国のスンニ派聖職者から批判的な意見が出ている。
この映画はイランで過去最高額となる製作費4000万ドル(約48億円)の大作。国内の劇場247カ所のうち143カ所で上映中。最高指導者ハメネイ師が映画の撮影現場を訪れており事実上、公開を支持している。地元紙は、公開初日に人々が映画館に殺到したと報じている。
監督は「運動靴と赤い金魚」などでモントリオール世界映画祭グランプリを3回受賞したイラン人のマジッド・マジディ氏。今月17日の記者会見で「イスラム教への侮辱に反論するより、イスラムの文化を紹介する行動の方がより良いと考えた」と語り、7年前に製作を始めたとしている。171分の映画では、ムハンマド役の俳優の顔は見えないよう工夫されている。
しかし、ロイター通信によると、カイロにあるイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルは「シャリア(イスラム法)は預言者を具現化することを禁じている」として、批判的な見方を示した。