出るでしょう。
・ベンガベンガ〜!
(実況)「スタート20秒前」。
(小山田博)ベンガベンガ〜!
(実況)「スタート10秒前」。
(掛け声)
(息を吐く音)
(ピストル音)
(実況)「第1回ツールド那須スタートです!地元の大声援を受けて那須ベンガーズの選手も踏み込むペダルに力が入ります」。
(解説廣瀬)「地元で初めて開くレースということで今年できたばかりのベンガーズの選手やスタッフは期するものがあると思いますよ」。
(実況)「そうですね。
さあゴールまでにどんなドラマが待ち受けているのか?」。
(平井守)頑張れ!ただいま戻りました。
(一同)ご苦労さまです。
(同僚)これ。
下半期の実績表。
はんこ押して回せって。
(同僚)どうだった?寺岡さん。
回想
(寺岡泰三)心配すんな!ちゃんとやってる。
まあ3年たったと言ってもな昔のようにはいかねえけどな。
でもよ俺が牛の数増やしたって聞いたら他の牧場はたまげっと?寺岡には負けちゃらんねえって動き出す。
そしたら那須の酪農は元気になっぺ!1,000万でいい。
力貸してくれ。
あの…この土地別荘地として貸してらっしゃいますよね。
ここを担保にすることは?駄目だ!ここはうぢのじいさまが開拓して代々大事に守ってきた土地だ。
だから何があったって売んなかったんだよ。
おめえだって知ってっぺ!担保が難しいって。
昔みたいに実績上げないと…。
いいかげんやばいぞ!お前。
そろそろ結婚だろ。
美弥子ちゃんと。
(上川正則)平井!ちょっといいか。
はい。
(ため息)
(上川)来週からロードレースチーム那須ベンガーズに君をマネージャーとして派遣することになった。
えっ!?今年できただろう。
自転車レースのプロチームだ。
その運営が厳しいらしい。
ベンガーズは地域密着をコンセプトにして那須と共に走る那須をPRするということで生まれた。
那須を活性化させる取り組みを全力でサポートするのは信金の大切な仕事だぞ。
しかし…なぜ私が…。
これは君にとって最後のチャンスだ。
失敗したら分かってんな。
期限は2か月だ。
2か月で結果を出せ。
(ドアの開閉音)期限は2か月。
たった2か月で赤字のチームを立て直す。
(佐野美弥子)でそれができなかったらどうなんの?戻れないかもね。
えっ!?美弥子ごめん。
結婚しばらく待ってくれないかな?信金に戻ったら必ず。
ごめん。
あっ。
大丈夫!全然大丈夫だから気にしないで。
じゃあ2か月後もう一回プロポーズし直してね。
なんかこないだのやつイマイチだったからさ。
待ってるから。
(受付嬢)いらっしゃいませ。
那須信用金庫の平井と申しますけれども。
小山田園長はいらっしゃいます?はい。
こちらにおります。
はい。
どうぞ。
行ってらっしゃいませ。
・
(小山田)ベンガベンガ〜!ベンガベンガ〜!ベンガベンガ〜!皆さんこんにちは!どうもどうも!ようこそ「那須どうぶつワールド」へ。
どうもどうも!皆さんこんにちは!あっ!どうもどうも!那須どうぶつワールド大王兼那須ベンガーズ監督の小山田です。
(馬のいななき)よしよしよし。
那須信用金庫の平井と申します。
ああどうもどうも。
あんたのように優秀な人が来てくれて助かるよ!那須だけに言うことナス。
なんて!アハハハハッ!
(羊の鳴き声)
(小山田)いろいろやってんだけどご覧のとおりお客さんは戻ってこねえ。
震災の風評被害はまだまだ残ってる。
今も那須は厳しいよ。
ベンガーズを作ったのは自転車を生かしたやり方で那須に観光客を呼び込めねえかと思ったからなんだ。
自転車でですか?この自然の中を自転車で走る。
気持ちいい汗をかいたあとは温泉に入るもよし高原のカフェで一服するもよし。
那須は自転車乗りにとっては最高の場所と思うんだ。
なるほど。
あとはベンガーズが広告塔になってくれればいいんだけどまだまだ地元の認知度が足りねえ。
だからこういう状況なんですね。
なかなか厳しいけど力貸してください。
おお!来た来た!
(自転車の走る音)ベンガベンガ〜!ベンガ!ベンガ?スペイン語で「頑張れ」っつう意味だよ。
(小山田)ベンガベンガベンガ!ベンガ〜!40km。
レースだともっと速いぞ。
ちょっと顔出してみろ。
(風の音)
(小山田)選手はその風をいつも受けながら走ってんだよ。
先頭の選手はもろに風を受けて体力削られてきついよ!練習ではああやって交代してっけどレースではアシストっつう選手がエースの前を走って風よけをやったりするんだよ。
エースとアシスト。
エースを勝たせるためにチームの他の選手は力尽きるまでアシストとして働くんだ。
先頭走ってんのがキャプテンの遠山。
みんな「カズさん」って呼んでんだけどね。
カズさんはベテランのアシストなんだよ。
(車のエンジン音)ありがとうございます。
今日は150kmぐれえ走ったな。
150km!?150kmって那須から東京までありますよ。
そうだ。
あいつらはほぼ毎日その距離走ってんだ。
(遠山一成)これ持ってみな。
(OL1)えっ!いいよいいよ。
持ってみ。
(OL1)ああ軽い!でしょう。
ほら持ってみ。
(OL2)へぇ〜!軽い!軽いでしょう!これねなんとね6.8kgしかないの。
(永浜昴)カズさんが…。
俺らにも俺らにもちょうだい!
(岩谷幸人)OLだって!休暇で旅行に来てるって。
マジで?
(幸人)見て見て見て!右の子おっぱいプリンプリンしてる。
(昴)ああ揺れた!揺れた揺れた。
(小山田)幸人!お前らもケアやれ!悠里を見習え。
はい。
ほんじゃあみんなそのまま聞いてくれ。
この度ベンガーズにマネージャーとして入ってくれることになった那須信用金庫の平井守さんです。
平井守です。
(一同)お〜!
(拍手)おお!守!よろしくな!俺「カズさん」でいいから。
あっそれでこいつが中村悠里。
おい!悠里はうちのエース!
(悠里)よろしくお願いします。
えっマネージャーとか超うれしいし。
あっ洗濯とかだ。
いや。
あっ食事とかだ。
アハハッ。
これでゴミ捨てしなくて済むわ!よかったね昴!ああ。
おいおい先輩だぞ!ちょっと待ってください!違います。
私がここに来たのはあなたたちのチームの経営状況を立て直すためです。
一刻も早く収支を改善しないとベンガーズは来年存続できません。
(一同)えっ!?そしてロードレースのようなマイナースポーツではスポンサー収入を増やすのは困難です。
マイナースポーツ?収益の増加が見込めない場合支出を減らすしかありません。
一番効果が大きく確実なのは人件費のカットです。
(幸人)リストラ…。
(昴)えっ!リストラ!?それホント?ねえ。
まずは徹底的なコストカットをいたします。
その第一弾として行うのがこの事務所と選手寮の移転です。
(車のドアを閉める音)小学校!?この3月で廃校となったのでお話をして無料で借りることができました。
(幸人)おい!こんな所なら先に相談しろよ!相談したらどうなりました?そんな時間はこのチームにはありません。
(旅館の女将)カズさ〜ん!来たわよ〜!あっどうも。
どうも!あっどうも。
(ペンションオーナー)ああこんにちは。
こんにちは。
(旅館の女将)カズさん来たわよ。
何から運べばいい?金は出せねえスポンサーだけど手ぐらい貸せっから。
(笑い声)
(選手たち)ありがとうございます。
(幸人)カズさ〜ん!どうした?無理っす。
ここで暮らすの。
部屋広すぎ。
1人一教室十分だろう。
(昴)エアコンもないんっすよ。
大丈夫だよ。
那須の夏は涼しいぞ!家庭科室じゃ料理もできるし体育館じゃ夜のトレーニングもできる。
シャワーもある。
ものは考えようだぞ。
シャワーだけって。
湯船が無かったら疲労も取れないじゃないですか。
(舌打ち)まあまあまあまあほら。
(小山田)平井君この引っ越しかなりのコストカットになったんじゃない?
(チャイム)
(校内放送・小山田)「え〜テステス。
おお!聞こえてる。
え〜ベンガーズの選手の皆さんに…」。
…お伝えします。
選手の皆さんは速やかに3年生の教室にお集まりください。
ウハハハッ。
(小山田)はいお疲れさん。
(選手たちの話し声)
(笑い声)お忙しいところすいません。
急を要する話と思いお集まりいただきました。
再来週の「甲州ロードレース」ですがこのレースエントリー取り消して下さい。
あはっ?平井君何言ってんの?今回の遠征費を計算した結果出場を取りやめるだけで25万円のコストカットになることが判明しました。
今回は費用のことを考えると棄権した方が…。
(モノが当たる音)
(悠里)いいかげんにしてくれよ!俺たちはレースに勝つために毎日毎日練習してんだよ。
出なくていいレースなんてあるわけねえだろう!じゃあホントに勝てるんですか?これまで3回のレースに出場して全て10位以下。
今レースに出ても意味ないじゃないですか。
あるよ!意味はある。
応援してくれる人がいる。
えっ!?今日手伝ってくれた人たちも来てくれる。
応援してくれる人がいるなら俺たちは走らなきゃいけない。
(肩をたたく音)
(雷鳴)
(荒い息遣い)
(実況)「甲州ロードレースファンの皆さん楽しんでますか?盛り上がってますか?どうですか?」
(歓声)
(実況)「いい感じですね!さあいよいよ栗村さん残り3周へと突入していきます。
見えている今は6名ですね。
どこまで粘っていけるのか注目ですね」。
(解説栗村)「そうですね。
そしてその6人の中でも遠山一成選手が注目です。
39歳になったばかりの大ベテランがまさしく背中で那須ベンガーズを引っ張ってます」。
(実況)「そうです。
さあその逃げ集団どうでしょうか?そろそろ来るのか?選手の皆さん来た来た!来ました来ました。
来ました!さあ皆さん大きな拍手を選手に送ってください!」。
(小山田)お〜い!カズさん!行け!頑張れ!行け!
(歓声)
(小山田)おお!ベンガベンガ〜!どうだ?平井君。
すごいだろう!ひょっとして勝てるんですか?いやロードレースはそんなに甘くね!カズさんのやってる逃げっつうのは体力を使うから最後まで足がもたねえと思う。
じゃどうして逃げるんですか?チームのため。
逃げの集団に選手を出してるチームは後ろのグループで風よけをやんなくていいっつう暗黙のルールがあんだ。
(実況)「続いてはプロトンですよ。
そろそろ来るか?来ましたか?」。
(栗村)「来ましたね」。
(実況)「来たか。
来たか」。
(栗村)「さあ残り3周。
この集団の中でも激しい位置取りが始まってます」。
(実況)「だいぶ縦に長くなってますよね。
(栗村)「来ました」。
(実況)「来た来た来た!さあタイムギャップ見てみましょう。
タイムギャップ30秒。
30秒ということは先ほど50秒。
一気に詰めてきましたねこれは」。
おい!行け行け!
(実況)「タイムギャップ30秒というのはこれ先頭5名に伝わってますかね?」。
(スタッフ)今落車が1人…。
「落車ですか」。
(栗村)「ゼッケンは?」。
(実況)「152番は那須ベンガーズの遠山一成選手が落車!」。
(観客たち)え〜っ!?「先頭集団にいた遠山選手が…」。
あ〜!あっ!立て立て!うわっ!大丈夫か?
(小山田)ああカズさん。
ああ。
ベンガベンガカズさん。
ああ!
(スタッフ)出番が迫ってます。
大丈夫ですか?大丈夫!
(小山田)よしよし!行け行け行け!「ブワ〜!」。
(小山田)走り出したんだよなあ。
復帰復帰!カズさん復帰だ!うっ。
うわっ!
(ため息)
(引き戸の開閉音)どうでした?左手首の骨折だとよ。
えっ!?骨折して最後まで走ってたってことですか?かなわねえよ!20年間ずっとアシストで走ってきた男にはよ。
ハハッ。
どうして…そこまでして走るんですかね?本人に聞いてみたら。
あっイテテテッ!よし!アッ。
お帰りなさい。
おお!ビックリした。
お前いきなり声かけんなよ。
すいません。
あの…。
ん?大丈夫ですか?手。
全然大丈夫!すぐ治るよ。
レースどうだった?那須でもさあんなレースできたら絶対盛り上がると思わないか?ん?僕はここまでコストカットされたらリストラなんかしなくても誰か「辞めたい」って言ってくると思ってました。
初めて守の本音聞いたよ。
僕には理解できません。
給料も高くない。
アシストだと個人の勝利を期待されるわけでもない。
それでも走るのはなんでですか?フン。
ちょっとつきあって。
うん!母ちゃん久しぶり。
俺さ一度だけエースに選ばれたことあんだよ。
えっ!?チームのエースが落車して骨折してな。
たなぼたでエースの座が回ってきた。
自分が1位になれるかもしれない。
母ちゃんに表彰台に上がった姿を見せてあげられる。
絶対勝ってやるって。
フン。
そんな時にさ…。
レース棄権して那須に戻って葬式挙げて。
そしたらさどっかでホッとした自分がいたんだよ。
怖かったんだよな。
エースとして走ることが。
チームの勝利を背負って走るのが怖かった。
まっそんなやつは一生エースにはなれない!器じゃないって心底気付いたよ。
ロードレースをやめようとは思わなかったんですか?思わなかったんだよね不思議と。
まあ好きだからかな。
アシストすることが。
全力でアシストしてレースのあと監督やチームメートに「ありがとう!」って言われるのが。
ん?回想ですがやらなければ可能性すら生まれません。
地方がジリ貧になってるこの時に信金が臆病になると地方は滅びてしまいます。
ああ!回想大森さん!大森さん大森さん!審査通りました。
お〜っと!
(大森)ありがとう!いいえ。
平井君君のおかげだよ。
いや。
ホントにありがとう!ここからです。
頑張りましょう!回想大森さん。
(ノック)大森さん!
(荒い息遣い)那須にですねベンガーズというプロのロードレースチームがありましていろんな方に声をかけて協力して…。
(薬屋)那須は元気にしたいけどうちはあんまり関係ないので。
(和菓子屋)ご協力したいのはやまやまなんですがちょっと平井さんの頼みでも申し訳ないんですけども。
(経営者)勘弁して頂きたいんですけども。
まあ選手たちの走っている姿を見たらまあこう…。
どうかよろしくお願いします。
(経営者)こっちもなかなかね。
悠里!そこから行け!あ〜!
(荒い息遣い)おいおい。
知り合い?あっ!女?あっ!守さんじゃないですか!ウ〜!
(ブランコをこぐ音)廃校を使うのっていいね。
なんか学校が生き返ったみたいだし。
(ブランコをこぐ音)そういうとこ気付けんの守らしいよね。
違うよ。
聞いたらタダで借りられるっていうから。
でもいろいろ見て回ったんでしょ?うん。
公民館とか他の廃校になった小学校とか。
だけど公民館だと選手一人一人に部屋をあげられないし他の廃校になった小学校だとシャワーがない。
まあここもエアコンがないから夏はどうしようかと思ってるんだけど。
フン。
なんだよ。
ねえ私がさ東京から帰ってきた時のこと覚えてる?うん。
な〜んか疲れちゃって毎日ぼ〜っと過ごしててさ。
でも守はそうやって人のために一生懸命走って考えて。
守見てたら「頑張ろう!」って思えたんだよね。
あれ〜?てれてんのけ?てれてないよ。
ウフフッ。
守はその笑顔が一番!やめてよ。
あっ!てれてる。
てれてないよ。
ニヤニヤしてるじゃん。
えっ?いや…。
アハハハッ。
てれてる。
かわいくないよ。
(カラスの鳴き声)
(引き戸の開閉音)
(小山田)そっちはどうだった?そっか。
やっぱり厳しいよな。
ハハハハッ。
小山田さん。
ん?あの…那須でレースを開ける可能性はあるんですか?レース…。
あっいや。
競技連盟は乗り気だよ。
ただねちょっとね。
何かあるんですか?レースを開催するにはよコース周辺の全ての住民の許可が必要なんだよね。
ここ!この別荘地の住民が連絡が取れなくてよ。
ここは…。
ん?回想ここの土地別荘地として貸してらっしゃいますよね。
この土地を担保にすることは?あっいや。
何?すいません。
変なこと聞いて。
(引き戸の開く音)期限は…2か月って言ったはずだぞ。
君一体何やってたんだ?これぐらいの経費削減は誰だって思いつく。
他にやれることないか?もう一度よく考えてみろ。
あと1週間だぞ。
(水の出る音)
(幸人)あっ分かった!知名度を上げるならあれしかないんじゃないですか。
(昴)あれって?決まってるでしょ。
那須でレースを開きましょう!ねえ!アハハッ。
「ツールド那須」!そうだよ!「ツールド那須」。
(小山田)確かに今交渉はしてる。
けどいろいろと難しい問題があってね。
(幸人)難しい…難しい。
(悠里)平井さん。
チームを立て直すにはリストラが一番効果的だって言ってましたよね。
はい。
なら…俺を切ってください。
おい!俺ロードやめて他の道探します。
(小山田)何を言ってるんだ!君はま〜だこれからの選手だ。
俺が今辞めれば払わずに済む残りの給料で赤字も減るでしょう。
それに…レースで成績が出ないのは俺の責任です。
もっと成績がよければスポンサーも集まったかもしれない。
それは違うよ。
お前だけのせいじゃない!私も…賛成です。
(幸人)おい。
お前何言ってんの?ベンガーズを存続させるにはそれしかありません。
守!いいんですよカズさん。
ただし…辞めていただきたいのは…。
俺!?何だと!いいかげんしろよおい!カズさんのいないベンガーズなんかありえねえんだよ!おい!
(小山田)どういうことだ?平井君。
ベンガーズの将来性を考えてこそです。
昴さん幸人君亘輔さん隆広さんは給料が低くてリストラの効果はありません。
そうなるとキャプテンか悠里さんのどちらかに辞めてもらうしかない。
しかし悠里さんがいなくなればチームの戦力は大きく落ちてしまう。
それにキャプテンの年齢もあります。
衰えるだけの選手にお金は払えません。
なに!
(昴)幸人!手首もまだ痛むんじゃないんですか?お願いします。
ベンガーズのために辞めてください。
分かった。
少しだけ時間くれないか。
(昴)カズさん。
・
(悠里)クソッ!リストラってなんで?しかたなかった。
しかたないって…。
だってあの人もう39だよ。
引退したっておかしくない年なんだ。
これで守は信金に戻れるの?美弥子…。
信金に戻ったら結婚しよう。
これで元どおりだ。
美弥子?元どおりなんかじゃないよ!ずっと待ってたんだよ。
昔のような守が帰ってくるのをずっとずっと待ってたんだよ!美弥子…。
こんなプロポーズなんか要らないよ!
(荒い息遣い)
(ペダルをこぐ音)
(風車の回る音)
(引き戸の開閉音)守。
守!はい!?
(荒い息遣い)アッ!
(荒い息遣い)ウッ!
(荒い息遣い)俺…。
辞めたくねえ。
俺にはロードレースしかねえんだ。
でも…。
チームのためって言われたら…なんも言えねえよ。
すいませんでした。
僕がキャプテンのリストラを提案したのは…チームのためじゃありません。
自分のためです。
回想
(大森)平井君君のおかげだよ。
いや。
ホントにありがとう!大森さん。
(ノック)大森さん!それ以来何もかも怖くなって理由を付けては融資を断ろうとしてきました。
そんな僕を見かねた上司から言われました。
「2か月でベンガーズを立て直せ」と。
「そして改善できなければ信金には戻れない。
これが最後のチャンスだ」と。
僕は…自分がクビになりたくなくてキャプテンのリストラを…。
最低だな。
はい。
そこで認めたら本当に終わりだぞ。
どうしたらいいですか?
(ため息)
(肩をたたく音)そんなの俺にも分かんねえよ。
ただ人生…追い風の時もあれば向かい風の時もある。
だけどどんなに風が吹いても一歩一歩ペダル踏んで前に進むしかねえよ。
あ〜!やっぱ走りてえな!なあ守。
もう一回だけやってみねえか?那須でレース開けないか動いてみねえか?もちろん俺の給料は要らね。
そしたら守だってクビにならずに済むだろ。
どうせ辞めんなら…最後に那須のたくさんの人たちに本気の走り見せてえんだ。
(牛の鳴き声)別荘地の人ら説得してくれっつうのか?はい。
なんで自転車レースなんか?選手たちが本気で走ってる姿を見れば寺岡さんも負けてらんねえって思われるはずです。
那須の人たちもきっと元気になってくれると思います。
帰ってくれ。
悠里。
チームを勝たせるのがエースじゃない。
チームのみんなが「勝たせたい!」って思うのがホントのエースだ。
ベンガーズのやつらはみんなお前を「勝たせたい!」と思ってる。
お前が誰よりも努力してるの知ってるからな。
(嗚咽)
(牛の鳴き声)
(シャッターを閉める音)
(牛の鳴き声)寺岡さん。
(牛の鳴き声)まだ全員じゃねえけんど連絡はしてある。
(牛の鳴き声)ありがとうございます!頑張れ!はい。
(ドアの開閉音)本末転倒じゃねえか。
経営を立て直しにうちから派遣された人間が金借りに来るなんて。
どういうつもりだ?説明させてください。
宇都宮で開かれる「ジャパンカップ」という大会には7万人が訪れます。
レースを那須に招致できれば那須が自転車の町として認知され観光客の増加につなげることが…。
ひと言聞きたい。
この計画は100%成功すっかね?100%かどうかは分かりません。
ですがやらなければ可能性すら生まれません。
地方がジリ貧に…。
「地方がジリ貧になってるこの時に信金が臆病になっと地方は滅びてしまう」。
君の言葉だ。
昔の君が帰ってくっか。
ベンガーズへの派遣は賭けだったが…うまくいったみてえだ。
ありがとうございます!・
(寺岡)おお!平井君!ああ!やったじゃねえかお前。
ありがとうございます。
皆さんのおかげです。
おいみんな!チャンスだぞ。
那須のうめえものいっぱい食ってもらってまた那須に来てもらうべ!なあ!
(拍手)なあおいおい。
並んで並んで。
(実況)「皆さん『ツールド那須』へようこそ!」。
(歓声)
(実況)「あいにくのお天気ですが間もなく始まります。
それではここで選手の入場です」。
いいぞ!
(実況)「まずはホームチーム那須ベンガーズ!」。
(歓声)
(実況)「ベンガ!ベンガ!ベンガ!」。
ベンガベンガ〜!
(実況)「大声援の中那須ベンガーズの登場です!」。
(廣瀬)「こんな大声援は地元だからこそ。
選手は本当にうれしいと思います」
(実況)「そうですね。
大いに盛り上がってきました」。
(実況)「スタート20秒前」。
(実況)「スタート10秒前」。
(掛け声)
(息を吐く音)
(ピストル音)
(実況)「第1回ツールド那須スタートです。
22チーム153名の選手が一斉にスタートを切りました」。
(廣瀬)「各チームの戦略選手個人の思惑がありますから誰がどこで仕掛けてくるのか非常に楽しみですね」。
(実況)「さあゴールまでにどんなドラマが待ち受けているんでしょうか?」。
(実況)「今年初めて開かれましたこの『ツールド那須』。
ご覧のような大自然の中周回コース150kmを走ったあとに那須岳山頂までの15.2kmの山岳コースが待っているんです。
廣瀬さんこのレースの注目ポイントはどんなところになってきますか?」
(廣瀬)「私が注目しているのは那須ベンガーズですね。
実業団チームではなく地元企業や個人が支える地域密着型のチームです。
その地元の大声援にどのような走りで応えるのか楽しみです」。
(実況)「なるほど」。
(自転車の走る音)
(実況)「ここまでのレース展開どうご覧になりますか?」。
(廣瀬)「各チームここまで何度もアタックをかけてきましたがどのチームも抜け出せていません」。
(実況)「それは那須特有のアップダウンの厳しいコースが要因でしょうかね?ん?とここでベンガーズアタックですね!遠山選手が勝負に出てきましたよ。
このアタックでプルトンがふるいにかけられていきます」。
(廣瀬)「各選手疲れが出てくる頃を見計らってのアタックですね」。
(実況)「ということはベンガーズにとってもきついタイミングですよね」。
(廣瀬)「そうですね。
ここが勝負どころと見たんでしょう」。
(観客たちの声援)
(実況)「レースはいよいよ山岳コースに突入です。
この上り坂はつらそうですね!」。
(廣瀬)「ええ。
こういうきつい場所にはファンの方がメッセージを書いてくれるんですよね。
これを見て選手はまた元気が出るんですよ」。
(実況)「那須ベンガーズ遠山選手と中村選手が飛び出した!これはアタック。
アタックだ!」。
(幸人)すいませんね。
地元なんで目立たせてくださいよ。
(選手1)大丈夫ですよ。
すぐ落ちてきますから。
(実況)「厳しい上りが続くこの山岳コース。
遠山選手が中村選手の前を走り続けます」。
(観客たちの声援)
(実況)「さあいよいよゴールの山頂が見えてきました。
ベンガーズによる逃げはこのまま決まるのか?地元の声援に応えようとここまで先頭を走り続けてきた遠山選手つらそうです!」。
(廣瀬)「ここまでエースを守りながら果敢にアタックを繰り返してきましたからね」。
(実況)「はい」。
(荒い息遣い)
(観客たちの声援)
(荒い息遣い)
(実況)「ベンガーズこのまま逃げきって初優勝なるのか?」。
(悠里)カズさん!俺先行きます。
ありがとうございました!ウッ!
(実況)「ここで中村選手がアタック!勝負はエースに託された」。
(観客たちの声援)
(荒い息遣い)
(荒い息遣い)・カズさ〜ん!カズさん!カズさん!何諦めてんだよ!ペダル踏んで!一歩ずつでも前に進めってあんた僕に言ったじゃないか!カズさん!カズさん!ウ〜!そう。
そうそう!カズさん一歩ずつ一歩ずつ!ウッ!ペダル踏んで!ウッ!そう。
そうそう!カズさん頑張れ!
(観客たちの声援)カズさん頑張れ〜!
(那須の住民)カズさん頑張れ!カズさん頑張れ!一歩ずつ一歩ずつ!カズさん!ベンガベンガ〜!ベンガベンガ!頑張れ!頑張れ!
(観客たちの声援)カズさん頑張れ〜!行け!行け!頑張れ!カズさん頑張れ〜!ウ〜ッ!ア〜〜!ウワ〜!
(観客たちの声援)
(那須の住民)頑張れ!行け行け行け!行け〜!カズさん頑張れ〜!
(観客たちの声援)さあ!
(インタビュアー)3位入賞おめでとうございました。
(悠里)ありがとうございます。
(インタビュアー)今のお気持ちいかがでしょうか?
(悠里)やっぱり3位だったのが自分の中では悔しい結果になったので次回は1位になりたいと思ってます。
最後ぐらい優勝できたらカッコよかったんだけどな。
ベンガーズにカズさんは必要だと思います。
えっ!?これだけの人が集まったんです。
新しいスポンサーも見つかるかもしれない。
ホントにすみませんでした。
どの口が言ってんだ?お前こら!アハハハッ!守!えっ!?美弥子…。
結婚しよう!ウフッ。
アハハッ。
う〜んなんかイマイチ。
えっ!?笑って。
もっと!笑って!ん。
やっぱり守はその笑顔が一番!ウフッ。
こちらこそよろしくお願いします。
お願いします。
・
(歓声)
(一同)わ〜い!わ〜い!わ〜い!わ〜い!・「胸の片隅には純粋ってなんだっけ?」・「小石につまずいて膝から真っ赤な血が出た」・「アイツの口癖はお金じゃないんだって」・「可能性なんてやらなきゃわかんないよ」・「さぁもう一度ムリでも笑ってそう笑っていればオッケイ!」・「風に吹かれたら唄ってそう唄って感じたコト」・「Oh−!大声で叫びたくなるから」・「Oh−!風の中を今すぐ走りだそうよ」2015/08/30(日) 15:05〜16:05
NHK総合1・神戸
ライド ライド ライド〜栃木発地域ドラマ〜[字]
自然豊かな那須町に誕生したプロ自転車ロードレースチーム。経営再建のため派遣された地元信金職員がレーサーたちとの葛藤を乗り越え、ともに成長していく姿を描く。
詳細情報
番組内容
自然豊かな那須町に誕生した地域密着型のプロ自転車ロードレースチーム「那須ベンガーズ」。地域振興のシンボルだが課題は資金難。経営再建のため派遣された信金職員・平井守は当初レーサーたちと激しくぶつかり合うが、やがてレースにすべてをかける彼らの生き方に心を動かされる。チーム存続のため那須でのレース開催に挑むが…。爽やかな那須の風の中にそれぞれの答えを探し、前を向いて進む若者たちの物語。
出演者
【出演】瀬戸康史,袴田吉彦,臼田あさ美,鶴見辰吾
原作・脚本
【脚本】坪田文
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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