レジェンドが言うと重みのあるいい言葉ですね。
ありがとうございます。
さあ「高校野球100年」。
明日は桑田真澄さんを迎えまして「敗北」をテーマにお送りしていきたいと思いますので皆さん是非お楽しみに。
罪の有無や真偽を神や仏に問う裁判神判。
古くから世界各地で行われてきた特殊な裁判方法。
かつて日本にも過酷な神判が存在していた
その驚愕の実態とは。
私は江戸時代の初頭にタイムワープをした
アブソリュートポジションN231W672E921S748ポジション確認。
アブソリュートタイムB1731345年34時79分43秒。
西暦変換しますと1608年4月26日7時9分42秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー115493これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名も無き人々を記録していくタイムスクープハンターである。
山あいにある神社。
今まさに特殊な裁判が執り行われようとしている。
火の中に鉄の棒がくべられていく。
熱せられたこの鉄を手で握りやけどの有無や状態で判決を下そうというのだ
これから鉄火裁判が行われるところです。
この珍しくも恐ろしい裁判の一部始終を密着ドキュメントしたいと思います。
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
なぜこの特殊な裁判が行われる事になったのか。
そのきっかけを探るべく私は2週間前にタイムワープをした
それは村境の良質な湧き水が出る小川の近くから始まった
ずっと前からそうなっとった!おらが村の沢の水をおらがひこうとして何が悪いだか。
おのれが村の沢でねえからだ。
何べんも言わすな!
自分の村に水をひこうとしていた西谷村の若者。
それに腹を立てたのが東原村の村人たちだった
おのれらが言う沢の境はこの川の向こうだべ。
隣り合う2つの村は川の領有権をめぐってしばしば対立していた。
それぞれに権利の主張をして10年がたつ。
だがいまだに解決の道が見えなかった。
いずれ村同士の大きな紛争に発展するかもしれない。
それを案じた僧侶の和徳は仲裁役を買って出る事にしたのだ
これでええだろう?うん?
いま一度双方から主張を聞こうとまずは東原村に出向く事にした。
集まる東原村の村人たち。
西谷村への長年の不満鬱積が爆発する
この川をめぐる領有問題は実は7年前領地の役人により裁決が下っていた。
川を2つの村で折半するという事に決まったのだ。
だが双方ともその裁きを受け入れる事はなかった
沢は「東原知行たるべきの事」と書いてあるべよ。
それぞれに古くから伝わる証文が存在していたからだ。
重い口を開いたのは村のリーダー…
長年解決の糸口が見えないでいる状況。
彼はついに最後の手段に打って出る事にした
話し合いによる解決を望んでいた和徳にとってそれだけは避けたい事だった。
だがもはや村人たちの勢いは止める事ができなかった。
太郎右衛門は早速敵対する西谷村に宛て鉄火起請の申し入れ状を書いた。
書状を託された和徳がしかたなく西谷村に向かう。
鉄火起請の申し入れに対して西谷村も殺気立っていた
東原の言ってる書付なんぞ山奉行様より頂いたおれらが村の文書よりず〜っと後の事ずら。
西谷村にもかつて川の領有権を認める文書が山奉行より交付されていた。
これでは双方が納得いかないのは無理もない事だった
そしてついに…
ああやるべ!
村のリーダー吉左衛門がその役を買って出た
1619年の会津で起きた鉄火起請では取手を名乗り出た者に手厚い補償を行ったという。
取手になるにはかなりの覚悟が必要だった。
こうして鉄火起請の開催が決まった。
10日後寺の周辺が慌ただしくなる。
やって来たのはこの地域の領主から派遣されてきた役人たち。
立会人として鉄火起請を見届ける役目を担っている
これは遠路お手間にございました。
さあさあまずは荷を中へ。
かたじけない。
彼がこの裁判を取りしきる事になる。
神に審判を下される鉄火裁判でもこのように役人の立ち会いが必要であった。
その2時間後寺に更なる訪問者が現れる。
東原村の名主太郎右衛門である
役人の勝村と話がしたいという。
一体彼らの目的は…
(勝村)いいから帰れ!
太郎右衛門たちが追い返されるように出てきた。
勝村に何かを渡そうとしている。
金の粒だ
それは賄賂であった
役人を金で釣り自分たちが有利になるように鉄火に手加減を加えてもらう。
だが立会人の勝村はその話に決して乗らなかった
すいません。
うむ…。
うむ。
それがしが知るに…こちら沢嶋。
本部どうぞ。
(古橋ミナミ)はい。
こちら本部。
現在鉄火起請の取材最中なんですがこれより前に湯起請というものがあったらしいんですが詳細お願いします。
湯起請ですね?了解しました。
お待ち下さい。
湯起請…。
神判の一種です。
鉄火起請より前に日本各地で多く行われていた裁判の方法です。
鉄火起請と同じく…室町幕府六代将軍の足利義教が好んで湯起請を行っていたようです。
分かりました。
ありがとうございます。
そのころ西谷村では神の御加護があるように巫女による祈とうが行われていた。
あくまでも神を信じて神に頼む。
この村ではそのスタンスが貫かれていた
一方東原村
賄賂作戦が失敗し焦りを隠しきれない太郎右衛門。
その時…
村人が何かを持って来た
あのすいません。
ああ…。
ニカワをお湯に溶かしていく村人たち
これでほぼ完成ですか?ちょっと触ってみていいですか?すいません。
あっ湯気が出てますね。
なんて言うか…。
接着剤みたいな感じですかね。
誰が試すかでもめ始める。
実はまだこの村では取手を誰がやるのか決まっていなかったのである
いや〜…。
名主様!ああ…。
ああ!
結局名主の太郎右衛門が引き受ける事になった。
溶けたニカワを手に塗っていく。
5分後乾いたニカワが手にはりつき膜ができた
早速焼けた石を使って試してみる事に。
果たしてうまくいくのか?
ここずら。
いくずらよ。
おう!名主様いくずら。
ああ…。
あっ!
誰も取手をやりたがらない
え〜っ?
その時だった。
与作がある提案を持ちかけた
平作とは5年ほど前落ち武者として流れ着き以来この村に住み着いている浪人であった
当時の村ではいざという時村人の身代わりにするため浪人などを扶養していた。
誰もやりたくない仕事をその者に押しつける事があったという。
平作もそんな村の扶養者の一人だった。
近隣の国で農業をしていたが8年前の戦で足軽として戦った。
しかし敗戦でこの村に逃げ落ちたらしい
ああ熱いずら。
でも…おら?ああ。
20石!?
鉄火の取手と引き換えに莫大な報酬を提示する村人たち
断るわけにはいかねえべ。
更に…
俺名乗ってもええんか?俺がしかと計らうけ。
その破格の申し入れに平作はついに…
東原村の取手も決まった。
そして鉄火起請決行の日を迎えた。
鉄火起請は江戸初期の20年間に多く行われている。
まだ戦乱の尾を引く不安定な時代。
徳川幕府の権力は弱く村同士の利権問題などを解決する力を備えていなかった。
こうした状況から神に審判を委ねるという好ましくない事態となった。
鉄火起請は窃盗など事件の犯人捜しにも行われたが多くはこうした村同士の紛争解決に用いられた
ならばまず…
それぞれの取手が起請文に署名をする。
起請文を燃やしてその灰を杯に入れ酒で溶かす。
2人は一気にそれを飲み干し自らに偽りのない事を神仏に誓う
また…焼けた鉄を手に取り走って神殿にある台に乗せれば勝者となる。
双方とも成功した場合やけどの度合いにより勝敗が決まる
よいな?
そしていよいよ鉄火起請が始まる
先に行うのは東原村平作。
恐怖で足が動かない
来い。
ここに立て。
手の上にはお札がのせられる
燃えたぎる炎の中から鉄の棒が取り出されゆっくりと平作の手の上に運ばれる
思わず手を引っ込める
もう一度
どうしても手を出す事ができない平作
(勝村)それは神慮には及ばん!待ってくりゃんせ!
平作の棄権により東原村は失敗と判定された
おのれ!
極限状態の中突如よみがえったふるさとへの思い。
平作は耐えられなかった
だがまだ判決は下らない。
勝敗は西谷村が成功するかどうかに懸かっている
へい。
火の前に出る吉左衛門
緊張で震える
焼けた鉄が見事台にのせられた。
ついに決着がついた
ついては…おい。
はっ。
敗者となった平作が役人たちに連れていかれる。
一体何が行われようとしているのか
幕の中に押し込まれる平作
・
(平作)名主様何とかしてけろ!・
(役人)動くな!
そして…
5分後。
血の付いた刀を持って立会人の勝村が現れた。
それに続くのは円筒形の容器を持った役人。
果たしてその中身とは…
負けた者はこうして処刑されるのが通例だったという
鉄火起請はこうしてすさまじい形で幕を閉じた。
川の領有権は西谷村となり村の境が新しく決められた。
その場所に平作の首が入った桶が埋められていく
石を置き目印として柱を立てる。
こうした不気味な首塚や石碑は今でも各地に残っている。
その残酷な結末に双方の村人たちはやり場のない表情を浮かべていた
その日の午後村から遠く離れた山道。
鉄火起請を終え帰っていく立会人の勝村たち。
いま一度この裁判について聞いてみる事にした
えっ?おい。
はい。
あっ平作さん!
そこにいたのはあの平作だった。
なんと生きている。
一体どういう事なのか3時間前にタイムワープしあの時何があったのかカメラに収める事にした
(平作)名主様〜!
神社の一角幕の中の映像
平作を桶に入れ刀に血のりを付ける勝村。
これがトリックの一部始終であった
なぜこのような手の込んだ事を実行したのか
されどそれがしが思うに…実を申すとだな…そうだったんですか。
幕府の権力が弱い時代閉鎖的な村の慣習をやめさせる事ができなかった。
敗者の命を救うにはこうする以外方法はなかったのだ。
このまま平作を東原村に戻しても彼の身の安全は保障されないだろう。
和徳は平作にふるさとに帰るように促した
(和徳)気をつけろよ。
政治をつかさどる者たちにとって鉄火起請は受け入れ難いものになりつつあった。
一つの権威の下に裁判権を行使したい幕府や藩にとって神による裁判は邪魔な存在だった
それでは…さようで。
ごめん。
それでは。
それでは私もここで失礼します。
さようか。
では失礼いたす。
時代の犠牲者を救った和徳や勝村。
人として自分たちがやるべき事を考え行動を起こした。
歴史は一人の権力者によって作られるものではない。
彼らのように一人一人の人間が懸命に生きた事によって作られていくのだ
え〜以上コードナンバー115493アウトします。
2015/08/26(水) 01:46〜02:15
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「仰天裁判!鉄火つかみ」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)の取材対象は、江戸初期の「鉄火裁判」。争いごとを神仏に問うて神判を下してもらう。
詳細情報
番組内容
時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は江戸時代初期にタイムワープをした。今回の取材対象は「鉄火裁判」。神仏に罪の有無や正邪を問うもの。争い合う者が神仏に正義を誓った上で焼けた鉄片を握り、やけどが軽い者を勝者、重いものを敗者とした。甲斐国で湧き水の利用権をめぐり、激しい村同士の紛争が生じた。どちらに利用権があるのか、鉄火裁判で決めることになる。果たして、どんな神判がくだるのか?
出演者
【出演】要潤,杏
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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