国際報道2015

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特集

2015年8月27日(木)

オバマ核軍縮のキーパーソン・ペリー元国防長官 舞台裏を語る

クリントン政権下で国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏。現在も核軍縮を進めるオバマ大統領のブレインとしてアメリカの政策に深く関わっている。今週、広島で開かれている核軍縮に関する国際会議にあわせ広島を訪れたペリー氏が、NHKの単独取材に応じた。核をとりまく世界の現状はどうなっているのか、日本の果たすべき役割は何なのか、聞く。

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オバマ大統領
「ここで核のない平和で安全な世界を目指す。
アメリカの姿勢を明確に表明する。
Yes we can!」

今から6年前、オバマ大統領が訴えた「核兵器なき世界」。
しかし…。
地球上には、今も1万5,000発以上の核弾頭が存在するとされ、人類は核の脅威にさらされ続けています。
こうした中、オバマ大統領に核廃絶を提唱したアメリカのペリー元国防長官が、今週、被爆地・広島を訪問。

元国防長官 ウィリアム・ペリー氏
「広島は核兵器が非人道的であることを内外に示す生きた証しだ。」

広島・長崎の原爆投下から70年。
アメリカ国防政策のトップだったペリー氏が核廃絶への思いを語りました。

“核軍縮”のキーマン ペリー元国防長官

油井
「いつになれば『核兵器のない世界』を実現できるのでしょうか。
原爆投下から70年。
広島では、今週5日間、各国の政府高官や元高官が核軍縮について意見を交わす国際会議が開かれ、アメリカからはキーマンのペリー元国防長官が来日しました。」

藤田
「ペリー元国防長官は 今から20年前、クリントン政権時代に国防長官を務めるなどアメリカの安全保障政策を担ってきました。」





油井
「このペリー元国防長官、日本と深い関わりがあり、実は、江戸時代の1853年に黒船を率いて日本を訪れたペリー提督の末えいなんです。 
今回、広島を訪れたペリー氏に、世界を取り巻く核の現状について話を聞きました。」





ペリー元国防長官 “核兵器なき世界”へ

核軍縮に関する国際会議に出席するため、今週、広島を訪れたペリー氏。
広島を訪れるのは2回目、原爆資料館を訪問し、改めて核がもたらした被害を見つめました。
被爆者の声にも耳を傾けました。




被爆者
「すさまじい光が襲ってきました。
壁にたたきつけられ、しばらく意識を失いました。」





元国防長官 ウィリアム・ペリー氏
「(広島を訪れて)強く心を動かされました。
広島が象徴するものは非常に強烈です。
二度と同じことを繰り返してはならない。
そして、二度と核兵器を使用してはならないのです。」

冷戦時代には核の抑止力を信奉してきたペリー元国防長官やキッシンジャー元国務長官ら4人。
その4人が2007年、核廃絶を目指す論文を発表。
オバマ大統領が、その後に提唱する「核兵器なき世界」の基盤となったのです。
4人は、映画も製作。



映画『核の臨界点』より
“核兵器がテロリストの手に渡ったら?”

核テロの危険性が高まっていると警告し、核軍縮の必要性を訴えました。

映画『核の臨界点』より
“テロリストが核兵器を手に入れたら、技術者さえいれば核爆弾は市販の道具を使って作り出せる。
原料は少しでよく盗み出せる場所は多い”

元国防長官 ウィリアム・ペリー氏
「オバマ大統領は私たちをホワイトハウスに招待し、映写室で国家安全保障のスタッフにも映画を見せました。
そして『核兵器に関する私の考えは、この4人とこの映画に大きく影響を受けた、みんなにも見てもらいたい』と紹介しました。
今、世界では新たな核の軍拡競争が起こり、世界の緊張や核拡散はむしろ悪化しています。
核戦争の危険性は10年前よりもむしろ高まっているのです。」

ペリー氏は、今、核軍縮の動きが停滞かむしろ後退していると指摘します。
ウクライナ問題でアメリカとロシアの関係が悪化。
プーチン大統領は、クリミア併合をめぐり、核兵器使用に向けた準備をしていたと表明しました。
北朝鮮も核開発を継続。
核廃絶に向けた道のりは険しいままです。

元国防長官 ウィリアム・ペリー氏
「我々が核軍縮を進めようと努力する一方で、ロシアは『核兵器は安全保障に欠かせない』と明言し、逆に核の増強・拡大を図っています。
しかし、我々は諦めるわけではありません。
粘り強く働きかけ、再び核軍縮を前進させられるよう、世界的な機運を高めていく必要があるのです。」

核軍縮の機運を高めるために、日本はどのような役割を担うべきなのか。

元国防長官 ウィリアム・ペリー氏
「核軍縮に向け、日本政府が断固とした立場を取ることが望ましいのですが、これまでそうではありませんでした。
明らかに自国の安全をアメリカの核の傘に依存しているからです。
しかし私は、日本が核軍縮に向けて、もっと貢献できると思います。
国際社会が核軍縮に向けて結束できるような立場を、日本が取るよう促していきたいです。」


広島を訪問したペリー氏。
アメリカの大統領をはじめ、世界の指導者が被爆地を訪れるよう促していくとしています。

元国防長官 ウィリアム・ペリー氏
「オバマ大統領に尋ねられれば、私は広島に行くべきだと助言します。
ただし、原爆投下への謝罪の訪問ではありません。
原爆投下を決めたトルーマン大統領はじめ歴代大統領は、原爆投下が日米の大勢の命を救ったと考えているからです。
しかし、オバマ大統領の被爆地訪問は、核兵器が非人道的で、二度と使用してはいけないという信念を内外に示すことができるものになります。」


核軍縮 世界は今

藤田
「ペリー氏が核軍縮を推進する狙いというのは、どこにあるのでしょうか?」

油井
「世界の核兵器の数は、冷戦時代に比べますと減少しましたが、まだ1万5,000発以上あるんですね。
さらに、かつてはアメリカやロシアなど5か国が核保有国でしたが、今やほかの国に核は拡散しています。
当然、テロリストが核を手に入れる危険性も高まっているのです。
そこで、アメリカとしては、その危険性を低くするため世界にある核兵器の数を減らしたい。
そのためには、多くの核を保有するアメリカみずからが率先して核軍縮を進める姿勢を示すことで、ほかの国々に追随してもらおうという狙いなんです。」


核軍縮への道

藤田
「最近、アメリカとロシアの対立などで停滞する核軍縮ですけれども、今後、核軍縮の機運を高めていくことというのはできるのでしょうか?」

油井
「機運を高めるための1つとして、ペリー元国防長官が指摘していたのが、世界の指導者による広島や長崎への訪問でした。
被爆の実態を世界の人たちが知ることで核兵器の廃絶に向けた道を切り開くことができる。
だからこそ諦めてはならないんだ、と繰り返し述べていたことが印象的でした。」

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