生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
きょうはこちらのテーマです。
今月、全国のがん患者数の最新のデータを国立がん研究センターが発表し最近の傾向が浮かび上がってきました。
土屋敏之解説委員です。
全国のがんの患者数でどういうことが分かってきたんでしょうか。
まず日本人の男性ではこれまで胃がんがずっと最多だったんですけれども今紹介されたように今回初めて大腸がんが1位になりました。
大腸がんは日本人の男女合計でもいちばん多いのでこれで現在日本人で最も多いがんということになります。
こちらは男女合計のがんの多い順にまとめたものです。
全国の400余りの主要な病院の2013年のデータを集計したものでどのがんがどれぐらい増えているのかを詳しく把握することで国や自治体が対策の基礎としているものです。
多いほうから大腸がん、胃がん肺がんとなっていますが注目すべき点はどんなところですか。
これまでも日本人で多かったものですが、中でも今回男性で肝臓がんが、以前、子宮頸がんより多かったんですが今回順位が下がったのも特徴です。
7位に下がっていますね。
中でもいちばん多かった大腸がんですが、どうして今増えているんでしょうか。
1つ前提として多くのがんが高齢化によって増えていますのでその中でも特に大腸がんが増えている理由として挙げられるのは食生活の欧米化なんです。
動物性脂肪などが多い欧米型の食事というのは大腸がんのリスクが増すとされています。
逆に食物繊維などはリスクを下げてくれるんですけれども、食物繊維が欧米型の食事だとやや不足しがちだということもあります。
大腸がん以外に今回患者数の増加が目立つものとして前立腺がん、乳がんがあります。
これらも食生活の関係が指摘されています。
この3つ共通の特徴としてアメリカなどでは以前から非常に多いがんなんです。
一方今回順位が下がりました胃がんや、肝臓がんこちらはもともと日本人に多いがんなんですが欧米ではそれほど多くはなかったという特徴があります。
胃がんも高齢化によって患者数が増えそうな気がしますけれどもなぜ今回大腸がんよりも下になったんでしょうか?いくつか原因があるんですがまずいちばんの大きな原因として塩分の取りすぎというものがあります。
塩分はどちらかというと日本の伝統的な食事に多いんですがそれが最近は塩分はとりすぎはよくないという知識が普及してきましたので、わりと摂取量が減ってきている。
そのことで胃がんが抑えられているのではないかと言われています、そしてもう1つピロリ菌の感染も胃がんの原因として大きいんですが胃の中にいる菌なんですが衛生状態が悪かった時代に日本人でピロリ菌を持っている方は非常に多かったんですが、最近は下がってきてそれも理由ではないかと言われています。
肝臓がんも感染と関係があります。
日本人の肝臓がんは、C型肝炎ウイルスに由来するという方が多いのが特徴でC型肝炎ウイルスは以前注射針が使い捨てでなかった時代に輸血などを通じて感染が広がったと考えられています。
これは近年では改善されているので、これが肝臓がんを抑えているのではないかと指摘されています。
こうして見てきますと日本人のがんが従来多かった感染症型から欧米型に変わってきたという傾向が今回はっきりしたという気がします。
がんにも社会や時代の変化がこうして表れているというわけですね。
やはり患者数が多いほど亡くなる方も多くなるわけですか。
実は完全に一致はしていないんです。
こちらは別のデータですが大腸がんや胃がんで亡くなる方ももちろん大変多いんですがそれ以上に肺がんで亡くなる方がこの20年ぐらい日本人ではいちばん多いんです。
肺がんというとやはり大きな原因になるのは、たばこですかね。
確かにたばこの害がよく知られていますし、たばこを吸う方は減っているんじゃないかと疑問に思う方も多いと思います。
ただ、がんは原因になる生活習慣や感染があってから実際に発症して亡くなるまでに10年20年単位の時間がかかります。
ですから長い間たばこを吸っていらっしゃった方が高齢になって今亡くなっているというケースが非常に多いんです。
しかも女性では喫煙率はあまりまだ下がっていないんです。
今後も懸念されるところで今からでもぜひ禁煙を心がけていただきたいなと思います。
肺がんは治療はどうですか。
実は大腸がんや胃がんは比較的治療できることが多いがんなんですが肺がんは特に進行しますと治療が難しいケースが多いので治療の難しさも死亡数にきいてきているということが言えます。
なるべく早期発見、早期治療が求められます。
こうして見てみますと医療技術が進歩しても、がんの心配はなかなかなくならないですね。
増すような気もしますね。
ただネガティブな話ばかりでもないんです。
というのは、このようながんが増えている理由にもう1つ大きな要因があって、それは検診などが普及してがんが見つかりやすくなったという面もあるんです。
日本のがん治療の技術はかなり高いので早く見つけられれば治療できることが多いんです。
ですからこういう、がんが増えているんだといたずらに不安がるのではなくて、むしろ早く見つけられれば治せるんだと前向きに捉えてがん検診などを利用するように主体ですね。
がん検診はどうやって受けたらいいんでしょうか。
職場などで受けられることもあるんですが、主な5つのがんについては今、市区町村が主体になってがん検診が行われています。
自治体によって健康福祉課などと名前が違うんですが、検診の窓口部署がありますので問い合わせてみてください。
大腸がん、胃がん、肺がん、乳がんは40歳以上子宮頸がんについては二十歳以上の方が対象で、これらの費用の補助が出たり年齢によっては無料で受けられたりもします。
検診といっても混んでいたりなかなか都合が合わなかったりとあるんですが、医療機関に予約を取って受けなければならないものもありますが大腸がんのように検査を自分で採取してくるという方法で簡単にできてしまうものもあるんです。
自分でできる検査ですか。
どういうものですか。
こちらに用意しました大腸がんの便潜血検査のキットです。
ブラシというか棒が入っていまして、トイレで便の表面をこすって取ってそれを密封容器に入れまして検査機関に郵送する。
あとは調べてくれます。
自宅でできますね。
何を調べているかといいますと大腸がんというのは目に見えないほど微量の血が混じっていることが多いんです。
それを検出することで早期にがんを見つけられる確率が高まるということで検診に利用されているんです。
今こうした簡便なキットはいろいろながんに対して出てきていまして、例えば肺がんの検査喀痰
(かくたん)検査といいます。
たんを採取して微量のがん細胞が混じっていないか調べてもらうあるいは子宮頸がんで子宮頸部の粘膜を少しこすって細胞を取るその中にがんが混じっていないかを調べてもらうという方法もあるんです。
いずれもそんなに手間がかからなくて楽でいいですね。
セットは売っているものですか。
もちろん検診で受けられますしそれ以外にも、数千円から市販もされていますので自治体検診とは別に、自分で自己費用で利用することも可能です。
ただしやはり自分で採取するというのは、うまく取れないこともありますしこうした方法で見つけられるのはあくまでがんの中の一部ですから過信せずに、医療機関での検査も定期的に受けるようにしてほしいと思います。
なんといっても検査で見つける以前にがんも予防できたらいちばんいいじゃないですか。
大腸がんをはじめとして多くのがんは適度な運動習慣や野菜を多めにした食生活などでリスクを下げられることが分かってきていますのでまずはそこから心がけたいですね私たちも気をつけましょう。
土屋敏之解説委員でした。
次回のテーマは、こちらです。
担当は寒川由美子解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
200ヤード前後の距離。
2015/08/26(水) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「大腸がんが男性初の1位〜変わるがん事情」[字]
NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢
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【出演】NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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