トランプ氏が強い理由としては、圧倒的な知名度がまず大きい。加えて、問題発言を含めてメディアやネットで数多く取り上げられているうえ、「愛国者」のイメージを前面に出して「強い米国の復活」を訴えていることも、米国国民の支持を集めているようだ。
トランプ氏は冒頭の発言以外に、先月のサウスカロライナ州での遊説でも韓国批判を繰り広げた。韓国メディアの報道には、注目候補にヤリ玉に挙げられて歯ぎしりする国内世論がにじむ。
中央日報(日本語電子版)は今月1日、「韓米同盟をお金で計算するな」と題したワシントン特派員の署名記事で、トランプ氏を名指ししたうえで、「(韓国が)安保は米軍に頼っているという無賃乗車論は、すでに米国で以前から続いてきた主張だ。しかし、なぜ大統領候補という人物の口から出てくるのか、あきれてしまう」「今まで韓国は例外なくほとんどすべての国内外懸案で米国側を後押しした」と論評した。
行間に動揺を感じさせる記事だが、そもそも、トランプ氏が韓国に矛先を向ける背景には何があるのか。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「共和党は財政均衡主義を掲げており、『国外での防衛に無理をして予算をかける必要はない』との考えは支持者の間でも根強い」と指摘し、続ける。
「こうした事情に加え、韓国に対しては、米中間で『二股外交』を続けていることへの不信感がある。中国が9月に開催する『抗日戦争勝利70周年記念行事』をめぐっても、韓国の朴大統領は、参加を求める中国と欧米諸国との間でフラフラしていた。大体、中国は、米軍に多大な犠牲が出た朝鮮戦争に事実上参戦し、米韓軍と戦った国だ。『中国に傾斜する国を守るために、なぜ軍事的にコミットメント(関わり)を持たなければならないのか』というのが米国民の心情だ」