(キャスター)「昨夜第20回日本芸術映画祭の授賞式が行われ多彩な顔ぶれがそろいました」
(田辺きよ美)お待たせしました。
(浜田吟子)さあさあ美味しいお汁粉をどうぞ。
3時のおやつにはうちのお汁粉が一番ですえな。
(津々見俊介)ありがたいねえ。
寒い時には汁粉が一番だよ。
(桾原双葉)本当ねえ。
(キャスター)「注目の主演女優賞には遠く離れてしまった男女の姿を描いた…」美味しいでしょ?
(水沢さやか)美味しいです。
(キャスター)「朝霧早矢子さんが受賞されました」
(朝霧早矢子)「このような名誉ある賞を頂きまして…」
(双葉)いいわねえ朝霧早矢子って。
(きよ美)あれ?お客さんこの朝霧早矢子って誰やと思いんさる?ええんやてきよ美ちゃん。
誰って…?この朝霧早矢子さんはな実はうちの女将さんの実の姪御さんなんやさ。
すごい!彼女最近大ブレークしてますよね。
知らなかったなあ。
奥さん水臭いじゃありませんか。
長年の付き合いなのに隠しとくなんて。
そうですよ。
別に隠しとったわけやないけど自慢する事でもないでねえ。
自慢していいんですよ〜。
朝霧早矢子がご親戚だなんて私だったらそうねえ…看板に書いて表に出しときたいわ。
(時計の鐘)そういえばもう一人のお客さんどうしたのかねえ?昼過ぎに出てったみたいだけど…。
(きよ美)ああ鍋島さんならもう戻りんさるよ。
さっきバイクで出て行く時「3時のおやつには帰る」って言いんさったでなあ。
あら…?なんの音かしら。
別に何も聞こえないけど…。
変ねえ…気のせいだったのかしら?
(携帯電話)はいもしもし。
ああ早矢子さん?今どこえな?今向かってるところよおばさん。
そんで小兎子も一緒なんやろ?いえ小兎子ちゃんは一緒じゃないの。
何それどういう事?「早矢子さんさっき電話で言ったでしょう」「小兎子はあんたの事迎えに行くって言ってうち出て行ったんやよ」だって来なかったんですもの。
でもちょっと待っておばさん。
私が行くまで騒ぎを大きくしないでね。
何?とにかく誰にも言わないで。
心当たりがあるから。
いいわね?おばさん。
どういう事?早矢子ちゃん。
訳わからんに。
とにかく心配しないでね。
今運転中だから切るわね。
奥さんどうかしたんかな?ああなんでもないやさ。
(野呂盆六)ストップストップストップ…ストッピ!ごめんなして。
別に怪しいもんでねえす。
実は私はあそこへ車さ…。
あれ?おめえさんあの…あれ?女優さんの朝霧早矢子さんでねえすか?あらまこら…ぶったまげたなあ。
いやいや私ねえ先生デビューした頃からのずっとファンでして。
(カメラのシャッター音)はははは…いやあのすまねえけどもジャッキ…車上げるジャッキ貸してもらえないすか?免許取りたてでタイヤ…溝っこの中に落っことしてしまったもんだから。
すいませんなあ。
ごめんなさい。
ジャッキは積んでないんです。
あら積んでねえんですか…。
あら〜…そうしたら先生悪いんだけどもヒッチハイクさしてもらえねえだべか?行き先はねえええと…「ゐなか家」っちゅう民宿ですけんど。
ゐなか家は私のおばがやってる民宿ですわ。
はい?なんたらこった偶然ですなあ。
そしたら悪いけんどちょっくら車へ乗っけてもらえますかなあ?ええそれは構いませんけど。
あははどうも…。
(パトカーのサイレン)
(ヒロシ)こんにちは。
ちょっとよろしいですか?はい…。
(テル)失礼ですがあなた今急に逃げたように見えたんで…。
なんば言うとっとこちら怪しい人なんかじゃねえっす。
有名な女優の朝霧早矢子さん知らねえすか?あなたは…?これは失礼致しました。
警視庁捜査一課警部補の野呂盆六。
あ…失礼しました。
野呂盆六です…はいはい。
ああどうも…。
はいどうぞ。
(ヒロシ)ご苦労様です。
ではお知り合いという事で?ああもうよく知っておりまして。
それこそデビューした頃からだもんねえあはは…。
わかりました。
ではお気をつけて。
ご苦労さんです。
ご苦労様です。
あっちょっと待って!おめえさんたち名前は?ヒロシです。
テルです。
そうでねえ。
名字聞いとるん…まあええわ。
よろしく。
ご苦労様です。
いやいやあのねちょっとあの…私の車レッカー頼んでたもんだから。
それじゃあお世話になりますね。
ええ。
(カメラのシャッター音)ははは…いやしっかし朝霧早矢子先生の車さ乗っけてもらって一緒にドライブなんてまこと夢のことござる…。
(カメラのシャッター音)あら?こらまた…めんこいわらしっ子だなもし。
おばの子なんです。
え?小兎子小さな兎の子って書くんですよ。
小兎子ちゃんはは〜。
それでこの兎のぬいぐるみこれ…。
はあ〜。
盆六さん。
はい?盆六さんのそのお言葉どちらのお国なんですか?いやあこれはあの…私の父親の仕事の関係でこんな子供の頃から全国あっちこっちに引っぱり回されてそんだもんであっちの言葉こっちの言葉かちゃ混ぜになってしもうただいふふふ…。
(いびき)
(いびき)盆六さん着きましたよ。
ああいやはや…。
ちょっと…爆睡しちまったっす。
あいやいや〜。
早矢子ちゃん!小兎子は?あおばさん。
こちら警視庁の野呂盆六さん。
野呂です。
車が動かなくなったのでお連れしたの。
これいいわね?私まだ急ぎの用事があるから。
早矢子ちゃん。
(吟子)早矢子ちゃん!ちょっと待ちなや。
早矢子ちゃん!まったく厠行きてえの我慢してたみたいだなもし。
本当にどうしたんやろ。
奥さん小兎子ちゃんがどうかしたんかね?ああ…こちら野呂盆六さん。
お待ちしておりましたどうぞ。
はいどうぞ。
(携帯電話)「お留守番サービスに接続します。
合図の音が…」
(小兎子の録音音声)「浜田小兎子です」「メッセージを入れてくだ…」どうしたんやろ…。
どうかしました?いや…。
いや女将さんさっきからあっちさこっちさ行って電話ばっかりしてるからあの人たちもみんな心配しちゃって…。
奥さん何かあるんなら僕らにも言ってくださいよ。
そうですよ。
私たちは陶芸教室仲間でしょ?他人じゃないんですから。
もしかして奥さんそれさっきの朝霧早矢子さんと何か関係ある事なんですか?あっちょっと…。
あの…何か心配事でも?刑事さん私…歳とってからの子やから心配のしすぎかもしれないけど…実は娘の様子がおかしいんです。
娘さんの?小兎子ちゃん。
あ?小さい兎の子と書くんやけどうちのアイドルなんやす。
あこれこれ…。
ほらなあ?これ。
そりゃ可愛い子なんやさあ。
あちょっと待ってちょうだい。
(録音開始音)それでこの小兎子ちゃんがどげんばしたとですか?小兎子は生まれつき虚弱体質で喘息持ちなんです。
喘息ってあの…。
気管支喘息です。
咳が出てそれからあの…咳が出てね呼吸困難になって命が危なくなるような病気なんです。
それでその小兎子がおらんようになって連絡が取れないんです。
奥さんねちょっと落ち着いて。
順序立てて話してください。
この小兎子ちゃんが朝霧早矢子さんとどう…?明日は小兎子の満8歳の誕生日なんです。
早矢子さん今こっちで明後日からロケの予定があって高山市内の「萩高山」っていうホテルに泊まってるんです。
萩高山?小兎子は早矢子おばちゃんの事が大好きやで今日は自分で迎えに行ってうちに泊まってもらって明日の誕生パーティーに出てもらうんだってさっき張り切って出掛けてったんです。
それなのに早矢子さん小兎子は来とらんって…。
なるほど。
変ですねえ。
何かあった時のために小兎子にはGPS付き携帯持たせてるんです。
(浜田小兎子)行ってきま〜す。
小兎子駄目やなあ大事なもん忘れとったら。
(吟子の声)電源は絶対に切らんように言うてあるのにそれが連絡がつかないんです。
奥さんそれでその小兎子ちゃんと早矢子さんはどういう…?あの人の言う事いちいちおかしいんです。
小兎子は来とらんって言いながら騒ぎにならんようにしてくれとか心当たりがあるで誰にも言うなとかそれにさっきはさっきであんなふうやったし…。
あれからこっちが電話してもずっと留守番電話で…。
刑事さん…これどういう事やろ?え?小兎子になんかあったんやろか?早矢子さんなんか知っとるんやろか?もしも小兎子が…発作起こしとるんやったら…。
小兎子には一応吸入薬渡してあるんやけどその薬が切れとったら…ああっ!
(録音停止音)わかりました。
奥さんねえこれ一応警察に連絡しておきましょう。
ね?はい。
あっ帰ってみえた。
(吟子)早矢子ちゃん小兎子は?小兎子はどこえな?おばさん私小兎子ちゃんの事は…。
心当たりがあるって言ったやないか。
そんならあんた今までどこにおったんや?早矢子さん小兎子ちゃんの病気の事は聞きました。
なんか知ってる事があったら教えてちょうだい。
知りません。
私本当に何も知らないんです。
早矢子ちゃんもしもあの子発作起こったら命にかかわる事知っとるでしょ?ねえ教えてちょうだい。
小兎子どこにおるの?あの子に何が起こったの?だから知らないのよ。
私は何も知らないの。
私だって知りたいわよ。
あの子の事ならおばさんよりも私の方が心配してるんだから!私だって心配なんです。
私は誰よりも心配してるんです!
(尾田)飛騨高山署刑事課の尾田警部です。
こちら明地刑事と木下刑事。
尾田さん明地さん木下さん…まるで本能寺メンバーだね。
(明地)はい?あいや…私あの警視庁捜査一課の野呂です。
警部補の野呂盆六です。
(尾田)野呂盆六っていうと…。
ああの有名な…。
あ〜それほどのもんでもねえす。
それからあのこちらはですね…。
(明地)浜田吟子さん。
女将さんの事なら僕らなじみですから。
あそうですか。
(木下)奥さん小兎子ちゃんがいなくなった時の事詳しく聞かせてもらえますか?小兎子が出掛けたの確か1時ぐらいだったと思います。
(津々見)刑事さん!はい?私たちなんかあったらと思って近くを捜したんですがこの真裏に鍋島さんのバイクが止まってますよ。
(録音開始音)おたく名前は?津々見俊介歴史学者ですよ。
津々見さん。
鍋島さんって誰?あ鍋島善七さん。
今日から2泊3日の予定でお泊りです。
そういえば鍋島さんが出て行ったのって小兎子ちゃんが出てったすぐ後だったわよね。
あなたは?
(吟子)あ桾原双葉さんです。
桾原モータースの社長夫人。
中調べましたけど誰もいませんでした。
ちょっとストッピ!
(録音開始音)あなたは?水沢さやかOLです。
さやかさん津々見先生と一緒に中入りました?いえ私はあちらを捜していたので。
ああ…。
(録音停止音)持ってて。
(カメラのシャッター音)はいどうも。
女もんの足跡です。
(尾田)確かに。
ここに女が来たという事ですか?これ出入りしてるねえ。
女もんの足跡が…ふた往復。
女が二人いたのか一人が出たり入ったりしたのか。
それとこんなぎりぎりまでタイヤ痕が…。
あっそれと男もんの足跡が…。
ひと往復半。
いやいやいやこの一往復分は私のですよ。
(明地)あれ?妙だな。
残りの足跡が鍋島さんのだとすると入ったきりで出た跡がない。
あそれならここは奥が母屋と繋がっているんです。
え!?すると鍋島さんはそこにバイクを置いたまんま母屋へ帰ったっちゅう事ですか?
(津々見)いや…鍋島さん戻って来ませんでしたよ。
ああっ駄目だ!!ちょちょっ…駄目ですよ!!ああっ!?あっすいません!ちょっと持っててください。
はいはい。
(尾田)なるほど奥は繋がってるようだな。
木下君。
はい。
ちょっとその雨戸開けてみて。
あっはい!
(明地)警部補どうしました?
(明地)警部補?ここさあなんか引きずった跡があるよね。
これ…。
誰かこれなんか引きずって…あ?車のトランクさ入れて運んでるね。
これが小兎子ちゃんの事とどう関係すっかだなっぺや。
ママ〜ママ〜。
(再生音)
(吟子)「小兎子は早矢子おばちゃんの事が大好きやで」「今日は自分で迎えに行ってうちに泊まってもらって明日の誕生パーティーに出てもらうんだってさっき張り切って出掛けてったんです」「それなのに早矢子さん小兎子は来とらんって…」
(早送り音と再生音)「あの人の言う事いちいちおかしいんです」「小兎子は来とらんって言いながら騒ぎにならんようにしてくれとか心当たりあるで誰にも言うなとか」「それにさっきはさっきであんなふうやったし…」「あれからこっちが電話してもずっと留守番電話で…」
(停止音)早矢子さんあなたこれにどう答えまし?盆六さんこれには事情があるんです。
でも今は言えないの。
失礼。
あっ…。
なして?それじゃあ説明になってねえべさ。
どう思われても結構ですわ。
これ以上は勘弁してください。
あっ早矢子さんあの…。
(携帯電話)あっちょっと失礼…。
はいもしもし野呂盆六ですが。
はいはい…わかりました。
すぐ行きます。
(明地)管理人が発見しました。
ポケットに免許証と財布。
持ち物は以上です。
鑑識さん!ピストルもう触ってもよかと?はい。
はい。
あれ〜。
(尾田)どうかしましたか?あっ尾田さん。
これ自殺じゃないよね。
偽装自殺だね。
なんでですか!?ええ?普通自分で自分を撃つ場合はこうか両手でこういうふうに持って…こう。
おでこを撃つってのはちょっと珍しいけどもまあ撃ったとして…。
そうするとこのピストルはぽてーんって前に落ちるよね?ああなるほ…。
しかしやって出来ない事はないでしょ?ほいでもおかしな格好になるよ〜?まあまあそらやったとします。
しかし射入口の形からして…。
これちょっと照らして。
こら接射じゃねえです。
ある程度の距離をもったところからの近射です。
したば周りにたんまつとか火薬粉粒つまり発射残渣が付着してまあごく微量の飛まつ血痕が飛び散るはずです。
ところが…。
照らして。
はい。
きれいなもんです。
発射残渣も飛まつ血痕もなんもねえ。
この仏さんあのバイクが置いてあった作業小屋で撃たれてここまで運び込まれた。
そう考えてまんず間違いなかっぺや。
この男は小兎子ちゃんのいなくなった事と関係があるんですか?この男を殺した同じ犯人が小兎子ちゃんをさらったんでしょうか?それはまだわかんねえす。
ともかく早えとこ小兎子ちゃん見つけんといかんわな。
(ノック)あっ盆六さん…。
ちょっとよろしいですか?靴はこれですけど?あっ拝見します。
これが作業小屋の前に残ってた足跡です。
似てます。
そうかしら?それから…こっちがタイヤ痕。
同じ場所にあったタイヤの跡です。
えーそしてこれが今ホテルの前に止まっている…あなたの車のトレッドパターン。
同じです。
同じタイヤならどこにでもあるでしょ?そしてこれが…床の上さ残ったなんか引きずったような跡。
この事から推測出来る状況は一つです。
早矢子さん…あなた車で死体を運んだ。
ストップストップストップ…ストッピ!あの時あなたトランクの中さ死体さ積んでた。
お巡りさんが二人近づいて来た時はハラハラドキドキだったはずだす。
続けますか?それとも…本当の事を話して頂けますか?
(動物の鳴き声)
(ドアノブを回す音)ママー!
(咳き込み)
(喘息の息遣い)全ては小兎子ちゃんのためにやった事なんです。
どういう事ですか?でも今となってみると私はただ誰かの罠にはめられたんじゃないかって…。
罠?はい…。
実は小兎子ちゃんは誘拐されたんです。
誘拐ってお前さ…。
私は…その犯人に脅迫されていて…。
脅迫!?これを見てください。
私今日はスケッチをしに出てたんですけど部屋に戻って来るといきなり…こんな画像が送られてきたんです。
14時19分…。
画像だけでメールはなし?すぐに次のメールが送られてきました。
「小兎子は預かっている。
死なせたくなかったら20分以内に指示に従え」「指示は赤橋袂の灯籠の中にあり」
(ボイスチェンジャーの声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」「ハッハッハッハッハ…!」このアドレスに心当たりは?それが…これは小兎子ちゃんの携帯のアドレスなんです。
ん?つまりホシは小兎子ちゃんの携帯を奪ってその携帯でこんなメールを送ってきたって事ですか?その上この…人をからかうような声…。
許せない!私はすぐに行ってみました。
そのメモが…これなんです。
「午後3時きっかりに『ゐなか家』のウラの作業小屋へ行きポストの中にあるものを身につけること」「作業小屋の中に転がっているものを運び出し上坂山の廃校裏の焼却炉まで運ぶこと」「誰にも言うな。
もしケイサツに知られたら小兎子が死ぬよ」「つぎの指示は焼却炉にあり」
(早矢子の声)私は言うとおりにするしかありませんでした。
言われたとおり私はそれらを身につけました。
そして中へ入ってみると…。
言うとおりにしないと小兎子は死ぬ…。
私の頭にはそれしかありませんでした。
(ボイスチェンジャーの声)このガキが死ぬよ。
途中でアクシデントもありましたがなんとか廃校裏に着く事が出来ました。
二つ目のメモがこれです。
「死体は自殺に見せかけること」「手袋は途中の道から捨てること」「終わったら『ゐなか家』へ戻ってつぎの指示を待て」「誰にも言うな。
ケイサツに知られたら小兎子を殺す」
(喘息の息遣い)小兎子のためにやりました。
小兎子のためなら私…なんだって出来るってそう思いました。
でも私殺したりしてません。
あの人は私が行った時にはもうすでに撃たれて死んでたんです。
というのは嘘だとしたら?早矢子さん二つの考え方があります。
一つはあなたが言うとおりの場合です。
もう一つは全てが用意周到に練られた巧妙な殺人で犯人はやはりあなたである場合です。
あなた小兎子ちゃんを自分でどっかへ隠しておいてあらかじめこういったものを用意して架空の犯人をでっち上げ自作自演で全てを演じてみせた。
信じてください…。
私嘘はついてません。
私は…たとえどんな理由があっても小兎子を危険にさらすような真似は絶対にしません!あの子は発作が起きたらどうなるかわからない持病を持ってるんです!お願いです。
信じてください。
信じて今すぐ小兎子を捜し出してください!あの子には1分1秒の遅れが命取りになるんです!…という芝居も成立します。
早矢子さん困った事が一つあります。
なんでしょう?この画像です。
小兎子ちゃん毛布の上に寝かされてぬいぐるみまで添えられてる。
誘拐した犯人がやるにはちょっと優し過ぎねえですか?私じゃありません。
盆六さん…本当に私じゃありません。
私が小兎子を縛ったりなんかしません!というのもあなたの筋書きどおりかもすんねえ。
ま仮にあなたが言ってる事が正しいとしてもあなた死体を運んで遺棄して自殺にみせかけて偽装しようとした犯罪事実は消えねえっす。
わかっております。
私はこの場ですぐあなたを逮捕すべきですが…。
これがあります。
「ケイサツに知られたら小兎子を殺す」もしもこれが本当だとしたらあなたを逮捕すればそれが犯人に知れて…小兎子ちゃんは殺されてしまいます。
ばってん…私があなたを信じるかどうかは別にして…あなたの身柄の拘束は猶予してもらうように所轄の警察にお願いしてみます。
ありがとうございます。
(ボイスチェンジャーの声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」「ハッハッハッハッハ…!」この携帯預からせてもらいます。
それと…あなたには見張りをつけさしてもらいますけ。
私に断りなしにこのホテルから出んようにひとつお願いしますね。
(犬の遠吠え)
(咳き込み)
(喘息の息遣い)
(明地)ガイシャは鍋島善七47歳。
詐欺と恐喝の前が三つ。
2年前に出所してますがその後も恐喝は続けていたらしく財布に入っていた銀行カードの口座にはえー20万円から100万円の入金が毎月定期的に続いています。
仏さんは強請り屋だった…。
とすると犯人も奴に強請られていた一人か。
鍋島の東京の一人暮らしのマンションを捜索したところパソコンが隠されてました。
まあ中のデータ恐喝のリストらしいんですがセキュリティーがかかってて今あちらで分析中です。
その中からもしかしたら思わぬ名前が飛び出すかもしれませんね。
それからガイシャの死因ですが額のど真ん中への一発。
盲管銃創で弾は脳天で止まっていました。
死亡推定時刻は午後2時から3時の間です。
3時というと朝霧早矢子が作業小屋へ入った時間だ。
その時鍋島はもう死んでたと言ってます。
本人の証言じゃ信用出来ません。
凶器の拳銃は「コルトローマン38口径6連発」で製造番号からすると去年横浜で挙げられた暴力団が売買したものの一丁である可能性が大です。
近頃じゃその気になりゃそこらの役者でもハジキが手に入る。
嫌な世の中になったもんだ。
役者にでもってのは言い過ぎだなもし。
(木下)次に民宿ゐなか家の女将吟子さんの証言によると鍋島はいつも黒っぽい携帯を持っていたという事ですが現場のどこからも発見されませんでした。
小兎子ちゃんの携帯については?あっ…えーこれが小兎子ちゃんの携帯と同じ型のものでGPS機能付きのものですが今は電源が切られていて反応がありません。
現場付近で発見された手袋の鑑識の結果が出ました。
「右手袋に硝煙反応と微細な飛まつ血痕あり」「DNAはガイシャのものと一致」そして…指紋は朝霧早矢子のものだけだった。
あっその鑑定結果は朝霧早矢子の証言と一致します。
その手袋をしてガイシャを撃ったのは確かに犯人です。
だから硝煙と飛まつ血痕が付着した。
そしてそのあとホシは手袋から指紋を消してポストに入れそれを早矢子さんがはめて死体を運んで道路から捨てた。
なんの矛盾もねえっす。
盆六さん名うての名刑事がそれじゃあ困るな。
はい?朝霧早矢子の証言じゃなくて自供でしょ?いくらファンだからって…犯罪者に対して余計な温情や思い入れは困りますよ。
いや私は公平にみてます。
盆六さん。
はい?正直言って僕ら…朝霧早矢子の説明は信じていません。
ありもしない話をでっち上げて強請り屋鍋島善七を殺したのだと僕らはみています。
小兎子ちゃんの事何かわかったんですか?いやあのこんな非常識な時間にお伺いしたのは新事実が出たからで…。
犯人が使ったと思われる小兎子ちゃんの携帯の発信場所がほぼ特定出来たんですよ朝霧さん。
じゃあ小兎子の居場所が…?いえ現在は電源が切られているようで反応がありません。
携帯が小兎子ちゃんの手にあったのは昨日の1時20分頃まで。
それから先はご存じのとおり携帯は犯人の手にありあなたにメールを送る時だけ電源を入れていたと思われます。
それで…?その時犯人がいたエリアはわかってます。
まず最初に小兎子ちゃんの静止画像があなたに送られてきた14時19分。
ええ。
奇妙な事に犯人はあなたと同じこのホテル近辺にいたようです。
え?そして14時23分あなたに来た2度目のメール。
発信源はやはり同じエリアです。
我々はそれを地図にしてみました。
この萩高山を中心とした半径50メートルばかりのエリア。
この円の中に犯人はいた事になります。
すると私が…私が自分で自分にあのメールをお送ったっておっしゃるんですか?団体客は皆午前中に引き揚げて残った宿泊客はあなただけでした。
私じゃありません。
盆六さん言ってください!私がそんな事するはずないって。
まあひとまずこの件はおきましょう。
それよりも…。
小兎子ちゃんは昨日の午後1時10分にあなたを迎えに行くと言ってゐなか家を出ました。
その10分後までの居場所はわかってるんです。
どこなんですかそれは?行きます!私をその場所まで連れて行ってください。
(明地)子供の足でゐなか家から約10分のバス停へ向かう道。
小兎子ちゃんの足取りはこの神社近辺で消えている事になります。
小兎子ちゃん?小兎子ちゃん?どこなの小兎子ちゃん?小兎子ちゃん!お願い返事して!小兎子ちゃん!小兎子ちゃん!小兎子ちゃん!!どうして言ってくれなかったんやな!母親の私にくらいなんで言ってくれなかったんやな!女将さん…早矢子さんあの…小兎子ちゃんの安全考えてですね…。
どこが安全なんや。
どこが安全なんや!もうあの子17時間も戻って来てないんやで?もしもあの子が発作でも起こしとったら吸入薬一つしか持ってないんやで?どこが安全なんやなあ?小兎子のよ…。
小兎子のや…。
かすかにエーテルとクロロホルムの臭いがします。
はい確かに。
あ…すいません。
という事は小兎子ちゃんここで犯人に襲われてもみ合っているうちにその手袋さ落とした…。
(すすり泣き)早矢子ちゃん…。
ぶったりしてごめんな。
いいんです…。
私もおばさんの立場だったら同じ事したでしょうから…。
いずれにせよ小兎子ちゃんがここまで来た事は間違いない。
しかし…問題はここからホシがどっちへ連れ去ったかだ。
私じゃありません!
(明地)おそらくホシは車を使っているでしょうが念のため警察犬手配しましょう。
早矢子さん…私には一つだけどうしても気になる事があるんですがお尋ねしてもいいですか?はい…どうぞ。
犯人はなして…あなたに言いに来たんだべか?小兎子ちゃんのお母さんは女将さんの浜田吟子さんです。
普通子供をさらってなんかしようって思った時は母親のところにいくもんです。
それを母親の姪っ子であるあなたさんところへ言いに来た。
それは…なぜだと思います?それは…。
それは…この事と関係ありますか?「あの子の事ならおばさんよりも私の方が心配してるんだから!」もう一つ。
「私だって心配なんです!」「私は誰よりも心配してるんです!」おばさんよりも私の方が心配してる。
私は誰よりも心配してるという…。
早矢子さんあなた…母親の吟子さんよりも心配してるって…。
わかりました…申します。
でも…。
君名前は?
(前田)は…?前田ですが…?あ前田君止めて。
は?止めて。
降りて。
はっ?ここから歩いて。
私運転すっから。
実は…。
小兎子はおばの子供ではなくて本当は私がお腹を痛めた子供なんです。
(ブレーキ音)あら?なんだか…そんな気がしてました。
今から8年前…私は役者としてやっと売れ始めたばかりでしたが当時付き合ってた彼がいて…妊娠してしまったんです。
気がついた時にはもう4か月…堕ろせませんでした。
そんな時映画祭の新人賞が決まってしまって。
おばに相談したら自分が産んだ事にして育てるからって…。
知り合いの先生に頼んで母子手帳をおばの名前に作ってもらって私は浜田吟子という名で出産したんです。
その当時の彼は今…?彼は山で死にました…。
出産のふた月前でした。
この犯人そったら事情知ってる奴か…。
あれからもう8年がたちました。
小兎子は日ごとに可愛くなっていきます。
仕事なんかどうでもいい…。
私はこの手で育てるべきだった。
改めて小兎子を引き取ってちゃんと母親として育てたい。
身勝手な思いが…日に日に強くなっていきます。
私はとうとう…この気持ちをおばに打ち明けたんです。
おばさんはなんて…?あなたがそうしたいならそうしなさいって。
血は水よりも濃いんだからって。
本当はつらいはずなのに…おばは笑ってそう言ってくれたんです。
幸い小兎子は私の事が大好きです。
去年のお誕生日に私があげた兎のぬいぐるみを今でも大事にしてくれています。
ですから今日のお誕生日を機に少しずつ小兎子に訳を話して私のところに来てもらおうって思ってました。
いろいろ大変だろうけど新しい母親としてなんとか頑張ろうって…。
その私が…こんな事件なんか起こすわけないんです。
でも…出てくる材料は私に不利になるものばかり。
客観的に見れば疑われても仕方ないと思います。
早矢子さん…自分からそげに白旗揚げちゃ駄目です。
私は…あなたを信じます。
あの刑事さんたちがあなたを疑う根拠はあのメールがホテルの辺りから発信されているというただ一点だけです。
ええ…。
この犯人は…あなたを陥れるためにいろいろと計算してます。
となると考えられる事は…あのメールが送られた時犯人はホテルにいなければならなかった。
調べてみましょう!あっ盆六さん!私が…。
私を信じて…。
信じられません。
ああ…。
じゃお願いします。
(車のエンジン音)はぁ…はぁ…。
あそこに監視カメラがあります!はい。
ここにもあります。
昨日の14時19分ホテルの宿泊客はあなただけだった。
犯人車で来て車の中でおそらくメールだけ打って帰って行った!あのカメラのビデオに残ってるかもしれねえ。
これが駐車場向けカメラの昨日の午後の分です。
あのちょっと早回ししてください。
はい。
あ…ストッピ!この時はどこさ行ってたんですか?私絵を描くのが趣味で近くの山までスケッチをしに行ってたんです。
あっどうぞ。
はい。
見覚えのある車怪しい車があったらすぐ言ってください。
あ…。
ん…?どげんしました?ちょっと…。
はい。
(ビデオの一時停止音)早矢子さん…?これ…おばの車です。
はあ?よう〜見てちょうだいや。
なんか見間違えでは…?間違いありません。
14時19分…。
1回目のメールがあった時間です。
そして…14時23分。
2度目のメールがあった時間です。
おばさんが…。
(明地)よう!盆六さんいいところに来た!今こちらの双葉さんが興味深い事実を思い出してくれたところでねえ。
興味深い事実?昨日3時のおやつの時双葉さんは銃声のような音を聞いたというんです。
(物音)あら…?なんの音かしら。
別に何も聞こえないけど…。
変ねえ…気のせいだったのかしら?3時に銃声…ほらほら死亡推定時刻とも合う。
裏の作業場で誰かさんが仏さんを見つけたと言ってる時間だ。
もしその音が銃声だとしたら?彼女の話はまっかな嘘で3時に撃ち殺した事になります。
(銃声)でも双葉さんは気のせいかもしんねと言っています。
それよりあんた…きよ美ちゃん。
あのおたくの車の事でちょっと聞きたい事さある…。
一緒に来てちょうだい。
来てちょうだい。
(ため息)つまりこの車2時頃出てって2時50分ぐらいに戻って来た?ええ。
私お風呂場の掃除してる時見とりましたから。
誰が運転してたか見ました?いいえ…。
そこまでは見えなんだけどこの車使うのは私か…。
女将さん?何よ?その頃他の人何してました?あ〜昨日はみんなバラバラやったな。
(きよ美)津々見先生はなんか調べ物があるとかでご自分の部屋にこもってみえたしさやかさんは東京へ電話をするとかでやっぱりお部屋の方へ…。
双葉さんは辺りを散歩してみえたみたいです。
(録音停止音)あれっ?これ…キーは付けたまんま?ええ田舎ですから。
ふ〜ん。
するとその時間…その気になれば誰でもこの車でホテルへ行って戻って来れるわけだ。
ん…?いやいやいや…。
きよ美さーん!
(きよ美)は〜い!この携帯に見覚えは?あ…ちょっと!ん?
(喘息の息遣い)鍋島善七の携帯の発着信記録が出ました!それによると…13時過ぎに鍋島はバイクであのゐなか家を出て20分ぐらい走ったあとちょうどこの辺りです。
電話を受けてUターンして今来た道を戻っています。
誰からの電話です?
(ため息)どんぞ…。
浜田吟子…。
女将さんまさか…。
時間は13時42分。
発信人は浜田吟子。
本人の携帯からの発信です。
呼び戻された鍋島はその位置情報によると14時前後にはこのゐなか家の裏の作業場にさ着いてたって事になる。
待ち構えとった犯人は…。
(銃声)そしてしてた手袋とピストルをポストの中さ隠して…大急ぎで車で早矢子さんの泊まってるホテルへ向かった。
なぜか?つまり…犯人はさも朝霧早矢子が犯人であるかのように見せかけるために車の中から小兎子ちゃんの携帯を使ってメールを打ち早矢子さんを走らせた。
まあしかし今のところその携帯は…小兎子ちゃんの携帯はどっからも…発見されてはおりません。
(明地)待った…では桾原双葉が聞いた銃声はどうなる?彼女は3時に…すなわち朝霧早矢子が現場に到着した時間に聞いてる!聞いてるのは一人だけだ。
本人も聞いたかもしんねと言ってる。
あれよ…鍋島が撃たれたのは3時でなくて2時だったんだよ!警部…もうあんまり無駄な時間はねえです。
小兎子ちゃんの体が心配だで!わかりました。
浜田吟子を任意で引っ張りましょう。
もしもし警部浜田吟子がどこにもいません。
さっきまで我々と一緒だったんですけどね。
令状を取って一応女将さんの部屋を調べさせてもらいました。
すると出たんですよ…妙なものが。
このおもちゃの籠の中から。
なんですか?ああそれね「ボイスチェンジャー」っつってパーティーなんかで使うお遊びのおもちゃです。
声が変わるんです。
(ボイスチェンジャーの声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」
(木下)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」犯人がこれを使った事は間違いありません。
警部!見てください!
(木下)小兎子ちゃんの携帯!これはもう決定的だ。
浜田吟子を捜せ!
(尾田)徒歩での逃亡ならそう遠くへは行っていないはずだ。
気に入らんとです…。
どげにもこげにも気に入らんとです。
ホテルの駐車場へ来た女将の車。
その中にあった鍋島の携帯。
それと女将の部屋にあったボイスチェンジャーとあっ…小兎子ちゃんの携帯。
何から何までそろい過ぎてます!まるで「犯人はこの人だ」と言ってるみてえだ!
(携帯電話)あもしもしツタヤさんですか?
(きよ美)どうも…いつもお世話になっております。
ちょっとあの…奥さん今出れないもので…。
はい。
どうも失礼致します。
きよ美ちゃん!はい…え?その携帯誰の?これは奥さんのですけど…。
女将さんの携帯!?はい。
あの…奥さん携帯あんまり好きでないもんでいっつもあの辺りに放り出しておくのが癖なんです。
いっつもあそこにあるの?ちょちょちょ…。
そっだら…誰でもここへ来てこの携帯使って鍋島呼び戻す事が出来たっちゅう事だなら。
なあ前田君?はい!もしも女将さんが犯人ならばわざわざ自分の携帯なんか使ったりしねえはずだ。
う…う…。
う…う…。
小兎子ちゃん!いる?小兎子ちゃん!う…う…。
わぁっ!?はっ!?小兎子ちゃん!
(猫の鳴き声)
(猫の鳴き声)小兎子…どこにいんの…。
ううん…ううん…。
ああっ!?携帯電話が繋がらないってフロントへ警察署から電話が入ってるんです。
署から?ええ。
変だな…。
すいません。
どうぞ。
(尾田)東京から鍋島のパソコンに入っていたデータが送られてきたんですが…ゐなか家に泊まっていた客全員が鍋島に強請られていました。
津々見俊介と水沢さやかの不倫?桾原双葉…万引き常習?しかし問題はこっちです。
小兎子ちゃんの本当の母親は朝霧早矢子だった。
早矢子は浜田吟子の名で年齢まで偽って母子手帳を取り出産した。
この件で…浜田吟子も朝霧早矢子も強請られていた。
盆六さん…あなたは知ってたんじゃないんですか?いやあ…私はなんも知らねえっす。
まっいいでしょう。
しかしこうなると盆六さん…犯人はやはり朝霧早矢子とみるべきじゃないんですか?馬鹿こくでねえ!早矢子さんホテルへ戻って来てから犯人の車さ入って来てる。
一人二役は無理だでよ。
違いますよ盆六さん。
は?私が言っているのは朝霧早矢子も犯人浜田吟子も犯人ではないかと言っているんです。
(銃声)あ〜…。
(電話)何!?朝霧早矢子がいなくなった?
(鳥の鳴き声)おばさん…。
おばさん!大丈夫?ああ…。
おばさん…。
私きっとおばさんは小兎子ちゃんを捜しに行ってるって思ってたの。
ああっ!どうしたの?ああ…足が…。
えっ…?ん?こりゃ浜田吟子じゃないよ…。
(小兎子の泣き声)
(マッチを擦る音)
(マッチが折れる音)
(泣き声)左ききですか?これあなたです。
ちょっと待ってよ。
冗談じゃないわよ。
左ききってだけでどうして私が犯人にされなきゃならないわけ?ここからは私野呂盆六の推理です。
あなたホテルへ早矢子さんを迎えに行く小兎子ちゃんを途中で待ち伏せして薬で眠らせどこかへ監禁しました。
こういう時は訛らないのね…。
あっ…長年の癖でして…。
その足でゐなか家の事務室に取って返したあなたいつも机の上に置きっぱなしにされている女将さんの携帯で鍋島を呼び出します。
まあおそらく電話の内容はこういった事です。
ねえ鍋島さん。
とっておきの強請りのネタ見つけたのよ。
すぐに裏の作業小屋まで来てくれたら教えるけど…。
まるで見てきたように言うのね。
鍋島は大急ぎで戻ってきます。
そこを中で待ち構えてたあなたは…。
パーン!そしてそのピストルと手袋を表のポストへ入れて大急ぎで取って返し女将さんの車でホテルへ向かいます。
なかなか面白い話じゃないの。
ホテルの駐車場へ着いたあなた車の中から小兎子ちゃんから取り上げた携帯でメールを送ります。
目隠しされて縛られて転がされた痛々しい小兎子ちゃんの画像をです。
さらに2通目には…。
(ボイスチェンジャーの声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」「ハッハッハッハッハ…!」知らないわよ!みんなそっちの想像じゃないの!そしてそのあと何食わぬ顔でゐなか家へ戻ったあなたみんなのおやつに加わります。
あとはあらかじめ用意した置き手紙に早矢子さんが振り回されるのを待つだけ。
その間早矢子さんは赤橋まで車を飛ばして橋の袂にあった灯籠の中でこれを見つけます。
そしてゐなか家の作業小屋へ向かう。
わざわざ赤橋まで行かしたのはあなたが早矢子さんより先にゐなか家へ着いている必要があったからです。
ねえ…その話いつまで続くの?3時きっかりにとこの指示にはあります。
そして早矢子さんその指示を守った。
そして時間を見計らってあなたはこう言います。
あら?なんの音かしら…。
「あら?なんの音かしら」。
警察の捜査混乱させるためですよね?もしも早矢子さんが犯人ならこのセリフが利きます。
また女将さんが犯人だったらば「気のせいだったかもしれない」というエクスキューズまで用意されてる。
ねえ刑事さん…。
一体私をどうしたいの?犯行を認めてください。
そして小兎子ちゃんの居場所を教えてください。
もうあんまり時間がないんです。
ふふふ…。
馬鹿ねえ!たとえ私が犯人だったとしても教えると思う?教えたら私がやりましたって自白してるようなもんじゃない。
教えてください。
我々は知りたいんです。
双葉さんお願いします。
小っちゃな命がかかってるんです!無理よ…。
だって私犯人じゃないんだもん。
おばさんはここにいて。
今警察呼ぶから…。
ああええんやさ。
足なんか平気…。
私は小兎子捜す。
ああおばさん!私が小兎子ちゃん捜すから!駄目や早矢子さん。
小兎子が発作起こうとるかもしれん!ここに薬持っとる。
小兎子の事はな8年間育てた母親の私が捜すんや!私帰るわ。
(双葉)任意なら帰ってもいいんでしょ?座りなさい!
(尾田)帰すわけにはいきません。
なぜ!?証拠もないのに犯人扱いなんか出来ないはずよ!証拠ならあります。
どこにさ!この声です。
(ボイスチェンジャーの声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」この声がどうしたのさ!いや実は私も知らなかったんですが…。
木下君!
(木下)はい!ボイスチェンジャーで変えた声ってのは「アナライザー」というソフトを通すと元の声が取り出せるんだそうです。
…何やっとるんすか!すいません!
(小兎子)ああっ…。
(ボイスチェンジャーの声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」「ハッハッハッハッ…!」この音から不必要な加工部分を取り除いていくと…。
(双葉の声)「言うとおりにしないとこのガキが死ぬよ」「ハッハッハッハッハ…!」さあ…。
どうかしらねえ。
誰かが私の声真似てんのかもしれないわ。
確か日本の裁判では声紋鑑定は証拠として採用されないんじゃなかったかしら?皆さん苦労してでっち上げたみたいだけどこんな子供だましの説明じゃ私を犯人と決めつけるのには無理があるわねえ。
フフフフフ…!
(物音)
(咳き込み)双葉さん…。
残念ながら証拠は他にもあるんです。
え?犯人が鍋島を射殺した時に使用していた手袋です。
この手袋から硝煙反応とごく微細な飛まつ血痕が採取されその血痕のDNAと鍋島のDNAが一致しました。
その手袋からは早矢子さんの指紋だって出たんじゃないの?はい?はい。
あなたなぜその事知ってるんですか?あっ…まあでもその事は問題ではないです。
このように袖口は手袋の外へ出ます。
つまり犯人が鍋島を射殺した時硝煙と飛まつ血痕がこの手袋に付着したという事は袖口にも飛び散っていたはずです。
(銃声)明地君!あなたが昨日着ていた服はクリーニング屋で押さえました。
(尾田)この服の右袖から飛まつ血痕を採取。
現在DNAを鑑定中です。
(喘息の息遣い)小兎子ちゃんの居場所は教えてあげないわ。
だってあの子死ねばいいんだもん。
そったら事言うもんでねえよ!あら…訛りが戻った!双葉さんあなた小兎子ちゃんを…。
自分が産んだ子と同じ目に遭わせたいんですか?それ…。
どういう意味よ!京都市右京区東通小菅産婦人科…。
小兎子ちゃんが産まれた産院です。
同じ日その産院であなた44歳で…。
まあつまり高齢で女の子を出産した。
ほいでもその赤ん坊は…亡くなってしまった…。
突然死症候群。
ミルクの逆流による不幸な事故だった…。
あなたその事で早矢子さんや女将さんそして小兎子ちゃんを…逆恨みした。
逆恨みじゃないわ。
あの日…。
小兎子ちゃんに異常が見つかったとかで先生方もナースたちもあの子にかかりっきりだった。
その間にうちの子は死んでしまったのよ。
(双葉)なぜなの?どうしてうちの子だけ死んであの子だけ助からなければならないの?おまけに…母親の名前は嘘だった。
浜田吟子って名前で入院してたけど本当は朝霧早矢子っていう女優だった。
不公平だわ…。
どうしても欲しかった私の子が死んでおばさんに母親を任せる女の赤ちゃんが助かるなんて…。
私は…どうしても子供が欲しかった…。
夫もそれを望んでたわ。
でも…うちの子が死んだってわかったら夫はまた女遊びを始めた…。
それだけじゃないわ。
今年になってその女に子供が産まれた事がわかったの。
だから困らしてやりたかった…。
小兎子ちゃんの本当の母親も育ての母親も…うーんと苦しんで私と同じ苦しみを味わえばいいのよ。
ほいでも小兎子ちゃんにはなんの罪もねえ…。
小兎子ちゃんには持病の喘息がある。
この瞬間にも苦しんでるかもしれねえっす。
嫌よ…。
あの子には死んでもらうわ。
あの二人を苦しめてやりたいのよ。
あの煙なんやろ?本当にもう時間がねえんだわ。
あなたの言葉一つに小兎子ちゃんの命がかかっとる!双葉さん…。
あなた本当は小兎子ちゃん可愛がっとる!あの子を恨んではいねえはずだ!それが証拠に…。
あなた小兎子ちゃんが一番大事にしとった兎のぬいぐるみを取り上げなかった!そればかりか隣に一緒に寝かせてやって寒さに凍えねえように毛布まで敷いてあげてる。
あなた小兎子ちゃんの事を好きだったはずだ!!憎かったのよ…。
どんどんどんどん可愛くなってく小兎子ちゃんが…。
憎かったのよ…。
(泣き声)
(パトカーのサイレン)なんだ?あの煙は…。
小兎子…。
小兎子!
(ドアを蹴る音)あっ!おい!早く表に出せ!
(木下)はい!急げ急げ!早く!
(小兎子の咳)
(尾田)大丈夫か?
(明地)小兎子ちゃん!小兎子ちゃん…。
小兎子ー!ママー!
(喘息の息遣い)はい。
大丈夫よ。
行かなくていいんですか?行けません…。
私甘く見てました。
小兎子の母親は一人です。
小兎子ちゃんは幸せです。
バイバーイ!おばちゃん!
(パトカーのサイレン)では…盆六さん…。
ああっあなたの場合は情状酌量してたぶん罪にはならねえと思います。
小兎子ちゃんと笑って会えますよ。
ええ…。
早矢子おばさんとしてね…。
三人の母か…。
ん?また置いてかれたか!?あららら…。
マグロ漁船の調理長として長きにわたり船に乗り続けた男
2015/08/28(金) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
天才刑事・野呂盆六2[再][字]
「野呂盆六」シリーズ第2弾!残雪の飛騨高山を舞台に人気女優が仕組んだ殺人と少女誘拐の罠に盆六が挑む!最大の難事件には母親たちの悲しい過去が隠されていた…。
詳細情報
◇番組内容
人気女優・朝霧早矢子(田中美里)がピストルを片手に死体を車で運ぶ。同時に叔母(かとうかず子)の娘が誘拐される。2つの事件に盆六(橋爪功)が挑む!最大の難事件には母親たちの悲しい過去が隠されていた…。
◇出演者
橋爪功・田中美里・かとうかず子・嶋田久作・松澤一之・広岡由里子・角替和枝・西田健・霧島れいか・テル・ヒロシ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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日本語
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