FBI:略奪文化財をISが米国内で売り込み…警告

毎日新聞 2015年08月29日 11時17分(最終更新 08月29日 13時41分)

ISによる盗掘を防ぐために保管されたシリアの文化財=ダマスカスで18日、ロイター
ISによる盗掘を防ぐために保管されたシリアの文化財=ダマスカスで18日、ロイター

 【ワシントン和田浩明】米連邦捜査局(FBI)は、シリアやイラクで活動する過激派組織「イスラム国」(IS)などのテロ組織の関係者が、略奪した文化財を米国人に売り込もうとしているとの「信頼できる報告」を受けたことを明らかにした。こうした売買はISなどの活動資金になるとして、古美術市場関係者らに注意を呼びかけている。

 FBIはISや国際テロ組織アルカイダなどから入手した文化財の購入は、米国内法に基づきテロ組織支援の罪で刑事訴追の対象になりうると指摘し、疑わしい売り込みを通報するよう求めた。

 米国務省によると、ISの支配地であるシリア東部の主要遺跡で「産業規模」の盗掘が行われている。同省が公開した衛星写真によると、約2300年前に建設されたユーフラテス川沿いの古代都市ドゥラ・エウロポス(面積約60ヘクタール)は、2014年2月の時点で全面的に盗掘されている。

 5月にISの金庫番といわれたアブ・サヤフ幹部を米特殊部隊が急襲・殺害した際には、拠点から数百点に上る文化財が発見された。同省は「遺跡からの盗掘や博物館からの盗掘で、国際市場での販売を目指していたと見られる」と指摘している。ISは今月にも支配地域のシリア中部の世界遺産都市パルミラで、文化財の保管場所を明かすことを拒んだ著名考古学者を殺害した。

 今年2月に国連安全保障理事会が全会一致で採択した決議は、全国連加盟国に対しISなど過激派組織が文化財取引などで資金を得ないよう対処することを決めた。イラクやシリアで盗難にあった可能性がある重要な文化財は「国際博物館会議」(本部パリ)が「レッドリスト」を作成。売買しないよう業者やコレクターに呼びかけている。

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