スマホゲームとコンシュマーゲームの違いと、コンシュマーゲームの今後について
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スマホゲームとコンシュマーゲームの違いと、コンシュマーゲームの今後について

2015-08-28 15:00
    まずは前回記事のおさらいです。
    今日のゲーム市場はスマホゲーがコンシューマーを上回り、その差は今後も拡大傾向にある。またスマホゲーのグラフィックなどの作り込みの高度化は著しく、コンシュマーゲームを上回るようにもなっている。

    にも関わらず、コアゲーマーの多くが未だコンシュマーゲームから軸足を移さないのはなぜなのか。

    コアゲーマーはなぜスマホゲーにハマらないのか


    背景情報をつらつら書くと長くなってしまうので、まず結論じみたワードを言ってしまうと「専用機と汎用機」という違いに着目します。

    スマートフォンでのアプリ開発というと、本屋などで「iPhoneアプリを作ろう」といった初心者向けの本を見かけるように、AppleやGoogleが開発環境を一般向けに提供しているので、本当に初心者でも簡単なアプリくらいは作れてしまいます。

    もちろんコンシュマーハードにもOSがあるし、クローズドですが、プラットフォーマーが開発環境も提供しているという点では似てるかもしれません。しかしスマートフォンの場合はゲームに特化しているわけではなく、むしろ公式が提供しているコンポーネントとゲームの関連性はほとんどありません

    そのため現在提供されているスマホゲームのほぼ全ては、公式とは別に構築されたゲーム開発環境で作成されています。つまりスマートフォンにおけるゲームは汎用機の一部分に過ぎないということになります。

    それでも「最近のスマートフォンは性能も上がっているし、現に3DSよりもよほどグラフィックも良いじゃないか」という意見もあるかと思いますが、結局のところ汎用機である以上、ハード面とターゲティング面においてどうしても専用機と異なってきてしまうのです。

    ハード面についてですが、ご存知の通りスマートフォンには物理コントローラーが付随していません。そのため本格的なアクションゲームなどは構造上無理があり、カードゲームが現在でも主流なのはそれに起因しているでしょう。

    外部メーカーが物理コントローラーをアタッチメントとして販売していたりしますが、一般に普及することはないでしょう。
    なぜならそのようなアタッチメントが存在しても、各ゲームメーカーは労力を払って対応する合理的理由がありませんし、ハードメーカー自身が率先してコンテンツを提供していかなければなりませんが、汎用機でそれをやるのはとても難しいからです。

    反対にコンシューマーゲームは、ゲームの体験を最大化するためにハードを設計し、ハードメーカー自身がそのハードの魅力を活かせるタイトルを発売したり、サードパーティに協力をお願いしたりしています。

    ですから同じようなグラフィック、同じくらいの開発費をかけても、コンシュマーゲームの体験の方がよりゲームらしさを追求できるのでしょう。

    またゲームハードは基本的にモデルチェンジをしても性能が一律で変わることはありません。(New 3DSでCPUが強化されましたが、グラフィックが向上するなどの変化はなく、ブラウザやダウンロード速度の向上などがメインです)
    開発環境もハードメーカーが提供したものを使用することが多く、「特定ハードへの最適化」という面が強くなります。

    ではスマートフォンはというと、iPhoneは毎年性能が向上していますし、スクリーンサイズも頻繁に変わりますし、Androidに至ってはもはやGoogleですら全てのハードを認識していません。
    そのため同じゲームでも端末ごとに一律に動くわけではなく、また開発において特定のハードで体験を最大化しよう、というスタンスにはなりません。

    実際に開発環境もUnityのような複数のプラットフォーム展開が容易なものが多く使われ、ちょっと専門的ですがガベージコレクションを自動で行うことができたりと、クセのある開発は避けて、汎用的な作りで多くの端末に対応しようというスタンスになります。

    専用ゲーム機とスマートフォンでそれぞれゲームを遊ぶ時、ゲーム機ではそのハード専用に作られているので最大の体験が保証されますが、スマートフォンの場合はそうではありません。
    このように性能が一律というのはむしろユーザーにとっては望ましい面もあるのです。


    次にターゲティング面ですが、それを説明するには話が脱線しますが、インターネットシーン全体について触れておく必要があります。

    今の若い子には実感が無いかもしれませんが、20代以降の人からするとインターネットをやっているとオタクに思われる、という傾向がありました。
    例えば2ちゃんねるに書き込んでも「過去ログ嫁ボケ」と言われたり、エロ画像を落とそうとしても「メ欄見ろカス」とか意味わからないことを返されるんですから仕方ありません。

    mixiの普及によっていくらか緩和されたのですが、それでも一日中インターネットやってればオタク、と見られる時代でした。

    それが今では正反対にいたはずの女子高生が1日7時間スマホをやるようになっていたり、コンピューターに疎いおじさんやおばさんもFacebookやLINEは必需品になってきています。

    旧来の「インターネット廃人」的な人口は変わっていないはずなのですが、このようにもともとインターネットをやっていなかった人が爆発的にスマートフォンを通じてインターネットになだれ込んできたわけです。
    (この辺の話はAppleのマーケティング戦略なども大きく関わってくるので、いずれ深く言及する予定です)

    そのため各メーカーは新たにインターネットに触れたユーザーを取り込むことで新しい市場を獲得しようとするわけですが、これらの人々はそもそもゲームに深くのめり込んだ経験がほとんどありません

    ですから従来のコンシュマーメーカーによるハイエンドなゲーム制作力は強みにならず、新しい顧客のニーズを汲み取ることができたガンホーやコロプラなどが台頭してきます。
    その結果、スマホゲームの進化はやはりコンシュマーゲームとは全く別のベクトルになり、いくらグラフィックが美麗でも既存のコアゲーマーの多くは満足できないでいます。

    これらを踏まえるとスマホゲームはコンシューマーゲームとはユーザー体験の作り方も、そのターゲットユーザーもより一般向けになっているので、そもそも目指す方向が違うのというのが結論になります。

    スマホゲーの要素を取り入れたスプラトゥーン


    じゃあコンシューマーとスマホゲーは競合しないからこのまま棲み分けして進化すればOK、となれば良いのですが、現実はそうでもなくコンシュマーゲームは変化を強いられています。

    そもそもニンテンドーDSやWiiなどが代表的なように、コンシュマーゲームのユーザー全てがコアゲーマーなわけではありません。むしろライトユーザーの方が多く、それらを取り込んだハードが成功を収めてきました

    しかしスマホゲームの台頭によって、ライトなユーザーはどうしてもそちらに流れがちです。
    ライトユーザーの全て、とは言わないまでも「暇ならゲームしたいけど、最近目新しいゲームがなくて買ってない」くらいの浮動層を抑えることができなければ、国内のコンシュマーゲーム市場はますます厳しくなってきます。

    そのためか最近のコンシュマーゲームはスマホゲームの要素を取り入れたものが見られるようになり、その代表格が今話題のスプラトゥーンです。

    スプラトゥーンはオンラインで4vs4を基本とするTPSゲームです。TPSという日本には馴染みの薄いゲームながら、インクを塗り合うというゲーム性やポップな世界観によって現在ニコニコ動画などで大きな反響を呼んでいます。

    これまでのコンシューマーゲームと異なる点として、「一度に長時間遊ぶことをあまり想定せず、長期に渡って少しずつ遊んでもらう」ことを狙いとしている点です。

    具体的に言うと、オンラインで遊べるステージがモードおきに限定され、それらが3時間ごとにリセットされるので、色んなステージを遊ぶには何回もゲームを起動する必要があります。また月に一度くらいの頻度でフェスと呼ばれるイベントが開催され、フェスでしか見られない音楽やグラフィック、アイテムなどが存在するため、普段あまりゲームを起動しないユーザーもフェスの時にはやってみよう、といったアテンションを集めることができます。

    その他にも発売からしばらくして新しいモードが追加されたり、武器の追加や性能変化、ステージの地形すら変わったりと、売り切り型のゲームではなく、遊んでるうちにゲームが少しずつ変化していくので、昔ながらの"クリアしたらおしまい"という感覚とはまるで異なります。

    このような売り方は現代にマッチしていますし、ビジネス的にも成長の余地があります。そして推測ですが、これはスマホゲームから多くを学んだ結果なのではないかと思います。

    例えばスマホゲームではあまり評判の良くない体力ゲージというシステムがあります。
    何かアクションをするとこの体力ゲージが減少し、体力がなくなると現実の時間に沿って体力ゲージが回復するのを待つか、課金して即座に回復する必要があります。

    もちろん後者の課金要素としてつけている面もあるにせよ、本来的には「一度にたくさん遊ばなくていいから高い頻度でゲームを開いてもらう」という意味合いが強いものです。
    これをスプラトゥーンでは「3時間おきにステージが変わる」という仕組みによって代替しているのではないでしょうか。体力ゲージがなくなって遊べなくなる、というのはいわゆる"ゲームらしさ"を毀損させてしまうので、そのまま流用していないのだと思われます。

    さらにフェスでは「赤いきつねと緑のたぬき」といったゲームとは関係のないコラボが行われていますが、これは明らかにスマホゲームが率先して行ってきたことですし、武器性能の調整などもそれにあたります。

    このようにスプラトゥーンは新しい世界観に加えて、スマホゲームの要素を取り入れることで、据え置きゲームから離れていたユーザーのアテンションを集めることに成功しています。

    今後のコンシュマーゲームについて


    スプラトゥーンによって提案された遊び方はビジネス的にも大きな可能性を持っています。

    具体的には一本のソフトを長期間触れてもらいながら、長く遊んだユーザーからはコンテンツや月額課金などを負担してもらう仕組みです(重要なのは100時間とか200時間といった総時間ではなく、半年とか1年といった時間軸です)。またその際にゲームの購入単価を下げることが効果的でしょう。

    この議論に関してゲーム業界は慎重で、ともすればコンテンツ価値全体を毀損することにつながりかねませんが、やっぱり長期的にはそうならざるを得ないと思います。
    というより世の中のビジネスはそれが基本で、例えばスポーツジムでは夜間だけのコースとか、平日だけのコースというのが設けられていて、それらは全日使えるコースよりも安めに設定されていたりします。

    これをゲームに置き換えてみると、例えば私はスーパーマリオ64がとても好きなのですが、発売後に追加ステージが販売されていたら余裕で総額5万円くらいまでなら購入します。私にとってはパッケージ価格だけでは物足りないのですが、反対にお小遣いの少ない子供にとってはクッパを倒す最短ステージだけで2000円とかの方が嬉しかったりします。

    ではなぜ既存のゲームはそれをやらなかったのかというと、単純にできなかったからです。ユーザーごとに異なる料金を支払うにはネットワークが必須ですが、そもそもネットワーク機能が当たり前に根付いたのはPS3の中期くらいのことで、それまでは家庭に無線すら当たり前に存在しませんでした。
    そのためパッケージでいくらという方式が長年続き、いつからか伝統のように引き継がれていたのでしょう。

    「ヘビーユーザーほど多く負担する」ということを大胆に取り入れているのがDEAD OR ALIVEというパンツ格ゲーです。このゲームは1ヶ月に1度くらいの頻度で追加コスチュームを配信しており、単価は2000円前後に設定されています。
    ゲーム一本が6000円ほどで、追加コスチューム3つ購入したら同じ値段になってしまうことを考えると単価はかなり高めに設定されているのですが、その筋に詳しいお兄さん方は律儀に購入しているようです。

    ほんの少し技術的に説明をすると、ゲームの設定やルール、キャラクター動作のような基盤部分をパッケージとして安く販売し(究極的には「基本無料」)、基盤の上に比較的容易に追加・調整できる個別コンテンツ(コスチュームやステージ)をユーザーごとに購入してもらう仕組みです。

    そもそもスマホゲームが高い利益率を出しているのは、基板部分がコンシュマーゲームよりも薄く作られている反面、運用やガチャ文化などが相まってコンテンツ課金が上手く回っているためだと思われます。
    コンシュマーゲームではパッケージ価格が変わらない反面、開発費が高騰することが構造不況の要因の一つなので、今後ますますコンテンツ課金の重要性が高まるのではないでしょうか。

    言うは易く行うは難し


    とまあここまで偉そうに語ってしまいましたが、実際行うとなるとかなりストレスが伴うと思います。
    ならならコンテンツの従量課金は「専用機と汎用機」でいう専用機の原則と矛盾することで、従来の専用機的な考えだと「個別コンテンツもパッケージの一部」として捉えられるからです。

    例えばマリオ64で考えてみましょう。最初は「ボムへいのせんじょう」のような明るく楽しいステージが多いですが、だんだん火山やお化け屋敷などちょっと怖いステージが出てきます。
    もっと進むと「ちびでかアイランド」のような不思議なステージや「レインボークルーズ」のように壮大なステージを経て、いよいよ最後はクッパを倒す、というように各ステージ(=コンテンツ)がパッケージと同化することで世界観を構成しています。

    パッケージ売り切り文化は「お化け屋敷は怖くて嫌だけどクリアするためにやってたら、最終的には色んなバリエーションのステージが遊びて良かった」というような体験を生み出せますが、コンテンツ課金を行うと一貫したユーザー体験が保証できなくなってしまいます

    (実はこれが今のスマホゲームで言うIP論争につながっていると考えているのですが、これも長くなるのでまたどこかで触れる予定です)

    とはいえ日本のコンシュマー市場は、売り切りモデルでは既に限界を迎えていますし、結局のところ変わらざるをえないというのが実情ではないでしょうか。

    上手く書けなかったことを追記


    ここまでソフト面での言及が多かったのですが、今後のゲームハードはGoogleやAmazonのようなWebプラットフォームと同等以上にネットワークが重要になってくると思います。
    クラウドゲーミングはその一環で、普及すればゲームビジネスの転換は免れないでしょう。

    現在欧米では音楽のストリーミング配信が主流になりつつありますが、ゲームで完全な普及に至っていない最大の理由はネットワークの制約にあります。
    音楽は圧縮すれば容量はかなり減らせますし、曲は誰が聞いても同じ曲なのでアプリケーション内でキャッシュを作成することも可能です。しかしゲームは高いフレームレートを保ったり、全てのユーザーに違う挙動を実現させる必要があるので、コストやネットワーク帯域を完全にクリア出来ていません。

    しかし一旦それらがクリアできると、現在のオンライン対戦などの仕組みは全て置き換わるだけでなく、月額課金などビジネス的にも大きな転換が起きる可能性が高いです。
    (この辺の議論を煮詰めるとまたかなり長くなってしまうので、いずれ機会があれば投稿すると思います)

    最後に何の意味もない私の感想を述べさせてもらうと、現在PS4は非常に上手くやっていますが、WiiU、というより任天堂はネットワークにおいて問題を抱えているように見えるので心配しています。

    次世代ハードであるNXはネットワーク機能を強化してくるのではないかという噂がありますが、ボタンが増えて複雑になったGC世代からタッチペンで直感操作するDSに転換したように、ネットワークを中心に任天堂のゲーム文化も転換してくれるのではないかと期待しています。
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