新国立1550億円それでも高い!黒字化見通したたずも見切り発車

2015年8月29日8時4分  スポーツ報知

 政府は28日、2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の関係閣僚会議を開き、総工費の上限を1550億円とする新たな整備計画を正式決定した。国内外のスタジアムはいずれも数百億規模で、「高すぎる」との声も上がる。政府は「税金投入を極力避ける」として、五輪後に民間委託を行うビジネスプランの検討も進めるとしている。財源の確保に加え、工期短縮という課題も抱え、新国立建設は事実上の見切り発車となった。

 新たな整備計画では、原則的に競技機能に限定し、冷暖房設備を取りやめるなどした。収容人数は約6万8000人として五輪後には陸上トラック部分に8万人規模への増設を可能とした。増設した場合、陸上競技はできなくなる。規模は、当初の22万平方メートルから19万4500平方メートルに縮小。1550億円を総工費の上限としたことで、旧計画から、1000億円を圧縮した。

 この1550億円は「適正価格」なのか。国内外のスタジアムはいずれも数百億規模。国内最大規模の日産スタジアム(7万2000人)でも603億円、球技専用の埼玉スタジアム(約6万3000人)は356億円だった。ロンドン五輪のメインスタジアム(8万人)は800億円だった。

 ちなみに、64年東京五輪で使われた旧国立の総工費は11億3000万円だった。開場した58年当時の大卒の国家公務員の初任給は9200円で、現在の20分の1程度。単純に比較すると、200~300億円程度の総工費だった計算となる。

 建築エコノミストの森山高至さんは、「観客席に売店などをつけたスタジアムなら360億円、そこに観客席屋根の150億円を足して約500億円で建設できる」と指摘。「地盤問題や地下部分を掘って駐車場にするなどが想定されており、割り増しされている」と話した。ロンドン五輪で馬術会場建設に携わった建築家の山嵜一也さんは「見直しても、まだ高額だ」とし、五輪後には資材の高騰も終わるとして「今の整備計画よりもっと簡素にして、五輪後に改修すればコストを抑えられる」と話した。

 元競輪選手でアテネ五輪銀メダリストの長塚智広さんは「税金ですべてを賄おうとするから、無理が生じる。建設費が仮に2500億円でも、稼働率を上げ、建設費を回収できる計画があれば国民への負担はなくなる」と指摘した。

 五輪後を見据えた場合、仮設席、常設席の割合を決め、収容人数は適正規模にしての運営が求められている。サッカーW杯など8万人規模のスポーツイベントは、数えるほどしかない。遠藤利明五輪相はプロクラブの本拠地とすることに否定的で、収支を黒字化できるかは不透明なままだ。

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