
いやあ、やりました!!
チームテクニカルで銅メダルを獲った時に、井村ヘッドコーチが「テクニカルだけとってもダメ。フリーでも勝たな、あかん」と言っていたのですが、その通りになりました。
それにしてもこの3日間ほど、ウクライナと日本の一騎打ちの様相を呈していたプールはもう火花が散るような熱さ。
朝一番にウクライナがサブプールで練習を始めれば、日本は本会場のプールで、センターを譲らず、中村選手のひねりのジャンプ練習。さらにはこの種目に出てくる世界水泳初体験の林愛子選手が絞られる絞られる・・・
チームフリー決勝の演技順は7番中国、8番ウクライナ、9番ロシア、10番日本、11番イタリア、12番スペイン。
さあ、試合が始まりました!!
まずウクライナが前日のデュエット3位のメダルに気分を良くしてか、実に伸びやかさのある足技を披露。バレエの曲に合わせて優雅でかつ、しっかり合わせてきました。
その演技をプールサイドのフラッシュインタビューゾーンから見ながら、「これはまずい!今日は切れもあるなあ」と不安が募ってきた私。
実際得点は、予選が92.7333だったのに対し、決勝では93.7000に上げてきました。
この93.7000は日本が予選3位で通過したときの得点と同じです。
いやあ、日本がもし失敗したら・・・・
もう、このころから私は肩に力が入りっぱなし。
続くロシアの演技で場内は割れんばかりの歓声と拍手。
その中を、「ジャパン!」のコールで入場してくる選手たち。なんだか歩き方まで、脚から腕から、力が入っています。
魔女の曲がかかり、入水すると、おーと思わず叫ぶほどの、キレキレの脚技!
まるでナイフのように鋭い脚の動きで水をカットしていくのです。今までで一番脚に力が入っていたんじゃないかと思うほどです。
これはいけるか~と思った矢先・・・リフトがちょっと斜めに傾き、ああああまずい!
しかし、そこからまた建て直し・・・・
最後はほとんど意識なく演技してたんじゃないかと思われるほどの激しい脚技を展開。
いやあ、本当に見ているほうも、しびれました。
さあ、得点です。実は、私の手元には電光掲示板より30秒ほど早く見られるモニターがあるのですが、これを見て思わず「上だ!」と叫んでしまいました。
得点は93.900
ウクライナを上回ることわずか0.2です。
電光掲示板に数字が出ると、井村さんが飛び上がりました。両手を挙げて。
30センチぐらいジャンプしたのです。
いやあ、もうそのあとは、選手もコーチも抱きつくし、泣くし、もうぐちゃぐちゃ・・・
結果は以下の通り。
ロシアが1997年以来、このチームでは負け知らずです。
金 ロシア 98.4667
銀 中国 96.1333
銅 日本 93.9000
4位 ウクライナ 93.7000
5位 スペイン 92.4667
演技終了から1分。
興奮が冷めやらぬ選手たちの声です。
Q 凄い力が入りました。今日!(土台のかなめ、吉田くるみに)
吉田:もうフリーは最後だったので自分たちのできること全部を出そうって言って、できたかわからないけど自分の中では凄い全力を出して泳ぎました。
Q よく上がりました!(今回のフリーで、一番の長身を見込まれてリフトで立ち上がる役を任された箱山に)
箱山:皆を信じてもう早く高く立とうと思って、リフトもだけど演技も全部自分のできることを精いっぱいやることと皆を本当に信じて泳ぎました。
Q 見てるほうもものすごい力入りました!
箱山:皆を信じてここで絶対にメダルをとりたかったので、結果が出た瞬間は本当に皆涙がこらえきれなくて本当良かったです。
Q 昨日悔しかったですもんね。(デュエットフリーでウクライナにメダルをさらわれた乾に)
乾:そうですね。昨日を経て、最後の最後まで、昨日も粘って練習して粘って粘って勝ちたいという気持ちをすごく皆が、全員が思ってそれが今日の勝負につながったんじゃないかなと思います。
Q 昨日もみんなどこの国も帰った後日本だけ練習していましたよね。サブプールでね。
乾:粘っていけるのが日本の良さだと思うので本当に最後のこの1本にかける気持ちをつよくもって泳ぎました。
Q中牧さん、よかったね。
中牧:ありがとうございます。しっかり最後の最後まであきらめずに泳ぐことを意識しました。
Q最初に顔が崩れました。(一番前にいて、電光掲示板を見た瞬間に喜びでぐしゃぐしゃに泣き出した丸茂に)
丸茂:今日はもう手も足も千切れてもいいと思って全力で泳ぎました。
Qどうでした実際?
丸茂:もう動かなかったんですけど、最後までなんとか泳げたので、それで点数も予選より上がっていたのですごくうれしいです。
Q このフリーでね、林愛子さん。最後の最後まで練習では先生に怒られていましたけどこれだけ出てくるんですもんね。(林さんはチームフリーで初めて登場してくる)
林:なんかすごい、テクニカルでメダルをとったじゃないですか。それで私のせいでフリーがとられへんかったらどうしようかなと思って、本当に死ぬ気で泳いで皆と表彰台に立ちたかったので本当にうれしいです。
Q 死ぬ気で泳いだ?
林:もう死にそうでした
Q しびれまくってた?
林:しびれました。
Q 今日飛びましたね!(フリーでジャンパーを務める中村舞に)
中村:今日も出る前に先生にもリフトは下の人信じてと言われていたので、本当に信じて今までトレーニング積んできたものを全部出せるようにしました。
Q あとは表彰式高いところから楽しんでください。
皆: ありがとうございます。
そして、選手たちのインタビューを見ていた井村ヘッドコーチにお越しいただきました。
Q やりましたー!思わず飛び上がりましたね。
井村:飛び上がりましたよ!もうありますよ色々。後半のリフトとか、ちょっとプールパターンある。もうなんでもいい。やっぱ勝ちは勝ちやから。
Q ちょっとドキドキしましたよね。
井村:ちょっとプールパターンが思っていたのとはまらなかったのと、後半ちょっとリフトがエネルギー切れ?最初頑張りすぎたから、ありますから。もし負けたらそれだと思っていたし、で日本の選手の足の強さを認めてくれたらいけると、点見たとき順位しか見ていませんでした、点数見てなかった。
Q 0コンマ2で振り切りました。
井村:なんぼでもええ。勝ちは勝ちです。次は広げるように頑張ります。勝ちは勝ちです。
Q 今日の足は前半からキレキレでしたね。
井村:うんキレキレ。前半よくやりましたね。その分やっぱり後半やっぱちょっとダメージ来たんで日頃練習力出し切っていないからです。反省していただきましょう。
Q でももうこれでチームはテクニカルとフリー、両方…
井村:もうそれが大きいですね。大きいです。でやっぱりこれで完璧じゃなくてやっぱりダメなところがいっぱい見えているので、それを修復していったらもっと差を開けられると思う。向こうも来るけど逃げ切れるという、リオのオリンピックでそういう風に確信しています。(注:オリンピックではテクニカルとフリーの合算で順位が決まる)
Q ますますリオデジャネイロオリンピックが楽しみになってきました。
井村:うんいきます。はい。
Q ありがとうございました。
井村:ありがとうございました。
そして表彰式。
選手たちは高い台に上っていき、それを見ようと井村ヘッドコーチも観客席の選手の姿が見える位置に移動。両手を振りながら、よくやったあああと叫んでおられました。



メダルを首からかけた選手たちに再び集まってもらいました。
Q じゃあまず愛子ちゃんどうでした上からの景色は?
林:すごいなんかいつもテクニカルで観客席で見ていたんですけど、私あそこで見ていて絶対フリーで勝ちたいと思ったので今日はそこから立っててすごい高いなって。すごい気持ちがよかったです。
Q テクニカルに続いて勝ちました。
中村:もう本当に絶対もう1個、1つずつ勝ち取っていこうと思っていたので本当にもう1個いただけて本当にうれしいです。
Q かなみちゃん、2度目高いところに立ちました。
中牧:すごい今日も緊張したんですけどまた表彰台に立てることができてすごくうれしかったです。
Q どんなことを考えていましたか?あそこで
中牧:また明日もここに立てるように頑張ろうと思います。
Q どうでしたか今日は高いところの景色は?
吉田:テクニカルに続いてウクライナに勝って登れてもう1回。すごくうれしくて、でも明日ももう1回登りたいと思いました。
Q 井村先生が手ふっていらしたの見えましたか?
吉田:見えました。また明日も同じ景色が見れるように最後まで集中切らさずに気合い入れて最後の最後まで臨みたいと思います。
Q さあ、どうでしたか今日の景色は?
箱山:本当にテクニカルでもすごくうれしかったんですけどテクニカルもそうだけどフリーでも絶対メダルをとりたいという気持ちがあったので本当に今日また表彰台に立つことができて本当にうれしかったですしたくさんの人にすごい支えてもらっていろんなことを教えてもらってこの仲間たちがいたからメダルがとれたから本当に感謝の気持ちでいっぱいです。明日ももっともっといい演技をしてまたあの景色が見れるように、今度は10人であの景色が見れるように頑張ります。
Q デュエットで最初にメダルをとった後2人だけじゃだめだって言われましたよね?
三井:はい、やっぱりこの10人全員でやってきたのはつらいこともいろんなことあったんですけどやっぱ表彰台に登ってみんなでこの景色を全員で見たいので明日に向けてしっかりもう最高の演技をしたいと思います。
Q 世界水泳はうれしい思いをしたことがないからいい思いをしたいと言っていましたけど
乾:本当にこんな思いができる世界水泳。とても幸せなことなので、明日最後も全員でいい思いをして世界水泳を終えたいと思います。
Q 明日は10人のフリーコンビネーションですからね。さあじゃあちょっと集まって全員でメダルを見せてもらおうかな。
全員でカメラに向かってメダルを見せてくれる選手たち。
みんな表情が輝いています。本当にいいですねえ。
そして、再び井村さん登場です。
Q 先生幸せですねー!
井村:まぁ練習しているときはすごい大変やけど、この一瞬があったら、そしてあの子たちのあの笑顔を見たら、またやろうかなとこの病気が始まるんですけど、あんないい顔なかなかみれないもんね。
Q 本当にウクライナとも戦いでしたけど選手ともここまで戦いでしたよね
井村:いやもうここに来るまでは選手との戦いでしたよもう。もうめげそう。私っておかしいん違うってかって思ったんですけど、いやいや私はおかしいことはないあの子たちがおかしいんや、選手じゃないんやって。でもここへきて大会始まってうまくいかなかったり勝ったり負けたり、その中であの子たちはすごい本当の選手になってきたと思います。特に今までナショナル選手の経験の長い子は本当の選手になってきました。昨日のデュエット終わった時に、ともかくこのままで終わられへんから言ったらみんなひるまなかった。だから選手になったなって思いましたね。
Q 1つ負けたりすると気が弱くなったりする子も昔はいたかもしれないですけどね。
井村:そうそれで捨て鉢になってみたり、どっちみちあかんわと結果を勝手に決めたり、そんな子がいてたんですけどやっぱり人数的にこのままでは終わられへん、そうやって思ってくれた子がやっぱり半分を超えてきたので、ああ選手になったなって思いました。5月のジャパンオープンのときに途中でしんどくて泣いていた乾が、昨日で物凄い、もう泣くどころかデュエット負けた後も怒ってましたから。で、私と(立花)美哉やの二人で「その悔しさ、一生覚えとけ」と言いました。一生・・・。たくましい選手になったと思います。
Q 明日1本まだありますけれどもフリーコンビネーション。日本は確かに一歩ずつ成長していますね。
井村:そう成長していますね。でもフリーコンビネーションはまた違う、すごいパフォーマンスが前に出てくるようなそういう種目なので。実は去年のW杯のときにずっと良かったのに、最後の1本はなんか適当に泳いで、もう嫌な記憶があるんですね。それを彼女たちにもこのあいだ言いました。あんな思いでは終わりたくないと。だからもう1回しめなおします。今はささやか心からおめでとうと言いたいと思います。
Q 頑張ってください。
井村:ありがとうございました。
この後、選手一人一人が、井村さんの首にメダルをかけ、そして、また井村さんから、一人一人に「よく頑張りました」「またやっていこな」「もうちょっとやで」などなど、言葉をかけられながら、メダルが選手たちに戻されていったのです。
チャンチャン・・・めでたしめでたし・・といいたいところですが、ここで終わらないのが今のJAPANです。


井村コーチは報道陣対応に追われ、その間、選手たちはジャパンのテントに戻り、なんと水着にまた着かえ、本会場に戻って、明日のフリーコンビネーションの練習です。
もう、会場には誰もいません。
ほかの国が帰ってしまった後も、日本だけ練習しているのです。
この、粘り。
粘りが日本の信条だから・・・
その言葉の意味がちょっと分かったような気がしました。


さあ、シンクロナイズドスイミング最終日はフリーコンビネーションです。
世界がリフトやジャンプなど縦の高さで勝負してくる中、日本は途切れのない、横の動き、手と脚の美しい動きの連続で勝負します。
すでにこの演技は3年めに入ります。
フリーコンビネーションはオリンピックの種目ではありませんが、シンクロのエンターテイメント性を最も味わえるものです。
最後、素敵な思い出て締めくくりたいですね。
シンクロの放送予定はこちらからご覧ください。
http://www.tv-asahi.co.jp/sekaisuiei2015/
詳しい結果はこちらから。
http://www.omegatiming.com/Competition?id=00010F0300FFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFF&sport=AQ&year=2015