新世代バンドの「シティポップ」観
柴那典(以下、柴) 前回の「アジカンのミッション、Ken Yokoyamaのパンク・スピリット」は、ロックバンドが今の時代にどう対峙するべきかを使命感を持って考えぬいている人の話でした。
大谷ノブ彦(以下、大谷) 今のロックシーンの先頭に立っている人が、テレビに出てAKB48やEXILEと同じ土俵に立って戦っているというね。本当に格好いい。
柴 で、実はそれは今回のテーマにつながる話でもあるんです。「ネオシティポップの“新しさ”とは何か」というお話。ここ1〜2年、「ネオシティポップ」という枠組みで紹介されるバンドが続々と登場していて。
大谷 かつて一世を風靡したシティポップ※に対して、いま新たな音楽シーンの一つのトレンドになっていますよね。
※シティポップ:70年代から80年代、山下達郎、大瀧詠一、荒井由実らを筆頭に、洋楽の影響を受けながらも独自の世界観を築いた、都会的なイメージを前面に出したポップス群のこと。
柴 まずその筆頭はceroですね。5月に出たアルバムの『Obscure Ride』が本当にすばらしい。間違いなく今年を代表する一枚になると思います。
大谷 cero、ほんとに最高! あとはSuchmos。デビュー作の『THE BAY』は夏のマストアイテムですよ。
柴 Awesome City Clubもすごくいいですよね。彼らもネオシティポップの新世代の旗手と言われている。
柴 彼らと仲のいいYogee New Wavesも注目を集めています。
大谷 でも、こういう人たちを「シティポップ」という名前で一括りするのって、どうなんでしょうね?
柴 たしかにそうですよね。ここで挙げた人たちは、自分たちの音楽をシティポップだと考えてない、そのようにタグ付けされたくないと感じてるバンドのほうが多いとは思います。
大谷 「ミスターシティポップ」って自分で名乗っているかせきさいだぁさんは別として、こういう人たちがやってるジャンルは、いわゆる70年代のシティポップとはちょっと違うわけだから。
柴 そうですよね。初期の山下達郎さんや大滝詠一さんや大貫妙子さん、シュガー・ベイブやユーミンがやっていたようなメロウでお洒落なシティポップのサウンドをそのまま受け継いでいるかと言えば、そうではない。
大谷 バンドによって音楽性もバラバラですしね。
柴 実際、ceroは前作の時点でジャンルとしてのシティポップとは違うと明言しているし、Awesome City Clubは、自分たちの音楽がシティポップと言われることについて「東京にいるおもしろい音楽をやってる人たち」というイメージでとらえている。
大谷 なるほどねえ。
ゼロ年代以降、ポップスと資本の関係が変わった
柴 でも、僕としてはそれだけじゃないと思うんですよ。2010年代のネオシティポップが持っている「新しさ」って、ちゃんとあると思うんです。しかもそれは、前回話したKen Yokoyamaさんのやってきたことからもつながっている。
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