NATO:ジョージアに「訓練センター」設立 露が反発
毎日新聞 2015年08月28日 20時16分(最終更新 08月28日 21時22分)
【ブリュッセル斎藤義彦、モスクワ杉尾直哉】北大西洋条約機構(NATO)は27日、ジョージア(グルジア)の首都トビリシ郊外に「共同訓練・評価センター」を設立した。ジョージア軍とNATO加盟国軍が軍事訓練や訓練成果の評価を行う施設で、除幕式に参加したNATOのストルテンベルグ事務総長は「ジョージアはよりNATO加盟に近づく」と強調。ロシア外務省は「地政学的な影響力の拡大を狙うNATOの挑発であり、地域を深刻に不安定化させる」と強く反発した。
センター設立は昨年のNATO首脳会議で決まった。ジョージアの防衛能力強化だけでなく、ウクライナなど周辺の旧ソ連構成国との関係強化の拠点となる。昨年からのウクライナ危機で、ロシアとNATO加盟国との関係は冷却化しているが、ジョージアでのセンター設立で関係修復は難しくなりそうだ。
センターの除幕式に参加したジョージアのガリバシビリ首相は「軍が強化される」と述べる一方、「特定国に対抗する狙いはない。周辺国と実務的対話を続ける」と、ロシアへの配慮を示した。
ロシア外務省のザハロワ情報局長は、2008年のNATO首脳会議でウクライナとジョージアが「将来の加盟国」と宣言されたことに触れ、これが同年8月のロシアとジョージアの武力衝突(グルジア紛争)の原因になったと指摘。「(ジョージアを)NATOに引き寄せようとする者は(今後の情勢不安定化への)責任を自覚すべきだ」と警告した。
グルジア紛争を契機に、新ロシア派が一方的に「独立」を宣言していたジョージア領内の南オセチアとアブハジアの2地域について、ロシアが承認した。ザハロワ情報局長は、両地域を「ロシアの同盟国」と呼び、「我々は南オセチアとアブハジアの安全保障を提供する責務を果たす」と表明した。
ストルテンベルグ事務総長は先月、ロシア軍が南オセチアの支配地域を拡大した点に触れ、「ロシアの国際社会における新たな義務違反」と非難。ジョージアの領土の一体性と国境線維持を「全力で支持する」と述べた。一方、ジョージアとロシアとの対話継続も訴えた。
ジョージアとウクライナの将来の加盟はロシアを刺激するため、NATO内でも独仏などが慎重論を唱えている。昨年の首脳会議では、加盟を先送りする代わりにセンター設立など実質的な支援強化で合意していた。