●建前と本音を使いこなす難しさ
「はぁゴルフ?これは福利厚生の一環ですから。福利厚生ですから詳細について説明をすることは控えさせていただきます」「ゴルフは半年前から決まっていたんだ。健康管理の一環ですから関係ないじゃないか!」「宴会?勉強会だよ勉強会!無礼な」。このような発言が火に油を注ぐことは少なくありません。聞いている方には居直りとも取れる印象を与えてしまいます。
建前でいいので「本日、コンプライアンス部門に実態調査の指示を出しました。結果は迅速に報告したいと思います」「外部有識者を交えた再発防止委員会を設立しました」と発表しておけば問題が大きくなることは無かったでしょう。正論や持論は時と場合によってはマイナスイメージを与えてしまいます。
何らかの問題を指摘されて説明責任を果たしたにも関わらず、追求をしてくるメディアがいたら「皆さまに調査の最高権限を与えます。全ての情報も公開します。しかし何も問題が見つからなかった場合、関わった方には相応の賠償を求めます」と通知すればインパクトがあります。
メディアは「会社の横暴だ」と騒ぎ立てると思います。そうしたら「当社は100年の歴史があり、売上高1兆円、時価総額3000億円、関連会社も含めれば4万人の雇用を守る責任があります。本件の業績への影響度は100億円程度です。さらに100年にわたる創業以来の歴史も阻害しますので損失額は1000億円程度になると推測しています。いま会場にいらっしゃるのが100社くらいですから1社10億くらいですかね」(シミュレーションは仮定のものです)と通知すれば確信が無い限り追及などできません。
不祥事が発生すると、経営陣や担当役員、コンプライアンス担当がメディアの前で説明をしますが、日本の場合はイマイチ感がぬぐえません。社内では現在のポジションに至るまでに相当な建前を演じてドロをかぶるなどしてきているはずです。せっかくの経験があるわけですからメディア対策まで含めて対応できたらベターでしょう。
メディアの前で矢面に立つことは大変ですが事案が収束した場合、その担当者は間違いなく社内で評価を受けるはずです。なんらかの理由で辞職などに追い込まれても企業関係者であればネガティブには思わないでしょう。会社のために矢面に立ち収束させた人材ですから誰もが欲しいと思うはずです。本当の意味での「ドロをかぶる」とはこういうことなのかも知れません。
尾藤克之
経営コンサルタント