<あらすじ>
放課後、校舎の屋上で出会ったいちごパンツの美少女。フツーの中学3年生・真中淳平は夕日に映えるその姿にすっかり心を奪われてしまった!! 彼女は誰? いきなり恋の迷路に突入のいちご模様学園ラブコメディ登場!!
恋のはじまり
いちご100%は真中淳平が屋上で、いちごパンツの美少女を見るシーンから始まる。
屋上で拾ったノートには東城綾という名前。しかし真中と同じクラスにいた東城綾は地味で、いちごパンツの少女とは別人のようだった。
ある日、そのいちごパンツの美少女は西野つかさではないか、という友達の一言で、真中は西野に告白することにする。鉄棒を懸垂しながらの告白に西野は爆笑して、OKの返事。
しかし本当は、いちごパンツの美少女は東城綾で、西野つかさではなかった。
西野と真中の恋の始まりは、勘違いからだった。
西野の作戦
西野との関係はあまり進展しないまま、真中は高校受験し、中学を卒業することになる。
「あたし泉坂高校には進学しないの」
「あたしだって好きなことしたいしチャンスはものにしたい。そーゆーの、お互いにわかり合えたらいいなーなんて思ったりして」
真中と一緒に映画を作るため泉坂高校を選択した東城。夢を持って頑張るために桜海学園に進学した西野。2人の決断が物語を変えていく。
つきあってるんだよね?
高校に入ってから4ヶ月、真中と西野の恋人関係は自然消滅しかけていた。西野は最後のデートのつもりで真中に会いに行くが、振ることができず、微妙な関係が続くことになる。9月、西野は真中からの電話を待っていた。合宿から帰ってきた真中から電話があり、2人は会うことになる。その日は西野の誕生日で、一緒にいちごのショートケーキを食べた。
「多分今はこれがあたしが淳平くんに望んでいいせいいっぱいだから……」
そう言って西野は真中と握手する。
文化祭の日、
「これが俺のやりたかったことなんだ…!」
真中の嬉しそうな横顔を西野は見つめる。
季節は流れ、クリスマス直前。
「ねえあたしたちつきあってるんだよね…?」
「あたしも観客としてじゃなくて淳平くんの隣で淳平くんの夢に巻き込まれてみたかったな…」
一向に進展しない関係に痺れを切らし、西野は真中と別れた。
西野との思い出
別れた後も、西野は真中を嫌いになったわけではなかった。
バレンタイン。西野は感謝の気持ちを込め、真中の家の玄関にチョコを置いて帰る。
真中が桜海学園でトラブルを起こしたときには西野が助けた。
別れてから真中は西野のことを付き合っていた頃以上に考えるようになった。レベルアップしている西野を見て、このままじゃいけないと思った真中は映画館でバイトを始める。西野は映画館の近くにあるケーキ屋でバイトしていて、真中と西野は運命的に再会する。
運命か偶然か、2作目の映画で美鈴がヒロインにスカウトしたのも西野だった。
「これから素敵な恋がはじまりますように」
合宿の肝試しでは真中と西野がペアになり、縁結びの池で蛍を見た。
修学旅行ではバレたら退学にも関わらず、2人で会い、縁結びの神様に祈った。
西野の誕生日には、真中はいちごのペンダントを贈った。
2人は付き合っていた頃よりもずっと恋人のようだった。
離れても離れられない。これが運命なのかもしれない。
西野つかさの願い
2度目のバレンタイン、西野は手作りチョコを真中に渡し、パリに留学することを告げる。
「このままずっと時が止まっちゃえばいいのに」
遊園地デートでは、2人で観覧車に乗った。
「淳平くんに会えて本当によかったと思ってる。ありがとう淳平くん」
夢のために頑張る2人。しかし夢を追うことに疲れたこともあった。
西野は真中を旅行に誘い、かつて住んでいた場所に向かった。
「西野がいつも笑顔でいてくれますように」
笹舟に願いを込めた真中。西野の願いは
「もう一度淳平くんの彼女になれますように」
3年目の合宿が終わり、水族館デートのあと、西野は決断する。
「いろんなことあったけどずっとずっとキミのことが好き!!
もう一度あたしを淳平くんの彼女にしてください……っ!!」
それは2人の運命を動かす懸垂での告白だった。
西野の存在
真中にとって西野は夢に向かう勇気をくれた大きな存在だ。
26話。西野が料理について語る。
「…ああそうだ。俺も映画作りたい気持ちそんな感覚から始まったんだ…」
真中は西野と出会ったことで初心を思い出し、自分のやりたいことを再認識する。
55話、西野と出会った真中は自分がレベルアップしていないことを痛感する。
61話。真中は映画館でバイトを始める。
「西野、俺もようやく夢に向かってバイトできそうだよ」
74話では西野が真中に泳ぎを教える。
「西野といると彼女があまりに完璧だから冴えない自分を痛感させられて、なのにたいした努力もしてこなかった。だけどせめて今度こそは西野の期待に応えたい」
もし西野がいなかったら、真中は映画製作していただろうか。夢に向かってバイトしていただろうか。高校1年の1学期のようにだらだらと高校生活を過ごしていたのではないか。 西野の誕生日会でカラオケ店が火事になったときには、西野だけが真中のビデオカメラに気付き、部屋に戻った。西野だけが真中の夢を守ろうとした。西野以上に真中の夢を真摯に応援してくれたヒロインはいなかったと思う。
もっと甘えてよ
西野の告白で物語は加速度的に動き出す。
東城に彼氏ができたと勘違いして落ち込んでいた真中に西野は言う。
「もっと甘えてよ」
「何も言わず始発の電車に乗ってくれた淳平くんみたいにあたしもなりたいんだ」
西野は真中が欲しかった言葉を最高のタイミングでかけることができた。
偶然が積み重なったものでも、それはまさしく運命だった。
真中は西野に告白し、2人はまた付き合うことになる。
東城綾の恋
「好きなの。中学のあの日からずっとずっと…!!」東城綾の恋は、真中が屋上で夢を語ったあの日から始まっている。
西野と真中が再び付き合い始めたことを知った東城は絶望するが、それでも、東城は真中に隠していた気持ちを告げる。しかし、思いを伝えるのが遅すぎた。
東城が自分のことを好きなんじゃないかって周囲にもよく言われて、わかってたのに。初めて好きになったのは、東城なのに。
「ごめん」
真中は西野を大切にしたいと言い東城を振る。 大学入試の日、東城から『あの日のノート』が届く。ノートには小説の結末が書かれていて、東城の決意が込められていた。それを読んだ真中は、夢を叶えるために実力が足りないことを痛感し、夢のため一人で狭き門を進んでいく決意をする。
1度きりの青春
東城の小説は、3年かけて作られた長い長いラブレターだった。あの頃お互いの気持ちに気付いていれば、ちゃんとその思いを伝えていれば、俺達の「今」はきっと・・・。東城が隠していた気持ちを知り、真中はもしかしたらあったかもしれない未来を想像する。しかし、西野がいたから今の自分があることもわかる。
一度しかない青春の日々。振り返るとその全てが、いちごのように甘酸っぱく、愛しい記憶で溢れている。
それでも彼女は微笑んだ
いちご100%には真中と東城の後悔がある。初恋は実らなかった。しかし、卒業式の日、答辞を読み終わった東城は、真中に向けて誰よりも綺麗な顔で微笑んだ。東城綾が失恋したからこそ、いちご100%は甘酸っぱくて切ない。2人の涙で胸が熱くなり、東城の卒業式での決意に満ちた美しい微笑みが心を打つ。
西野END
「淳平くんと一緒ならあたしは過去でも未来でも構わない」西野が真中と旅行に行った頃には、もう西野ENDが確定していたように思う。
東城のことを含め、真中を1番よく理解し、また1番苦しんだのも西野だった。
東城のように待つだけではなく、さつきのように求めすぎるのでもなく、西野は本当にうまく真中と付き合うことができた。運命を自分の手で引き寄せ、最後には真中を甘えさせるだけの包容力を身につけた。これ以上に魅力的なヒロインはいない。
西野の初恋は実った。真中も、西野以外と付き合わなかったことになる。
いちご100%は名作!
当初、いちご100%は中学生編までで東城と真中が結ばれて終わる予定だったと原作者は書いている。しかし高校生編になって、事態はどんどん変わり、このような結末になった。
一番の変化は、可愛いだけだった西野が夢を持つ少女に変身したことだと思う。
いちご100%のキャラクターにはそれぞれが夢がある。真中には映画監督になる夢、西野にはパティシエになる夢、東城は小説家になる夢がある。それぞれが夢に向かって前進しているラストは読んでいて爽やかだった。
いちご100%は、ただのパンツ漫画ではない。それは最後まで読んでこそわかるものだ。
たくさんの魅力的なキャラクター、たくさんの魅力的なシチュエーション、たくさんの甘酸っぱい記憶がつめこまれている。恋に悩み、簡単には割り切れない人の心を描き、そして最後には夢に向かって進んでいく強さを描いた最高の恋愛漫画だ。
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