山岸一生
2015年8月29日01時28分
2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の新しい整備計画が28日、決まった。焦点だった建設費の上限は旧計画より1千億円超削ったものの、1550億円に上った。細かい内訳は示されず、財源も決まっていない。国際オリンピック委員会(IOC)が求める工期の前倒しを実現できるかなど、残された課題も多い。
新計画では、旧計画の2520億円に、未公表だった周辺施設の工事費など131億円を新たに加えた総額2651億円から、1101億円削減した。「キールアーチ」という巨大なアーチで支える屋根を見直し、屋根の費用を950億円から238億円に圧縮。さらにスポーツ博物館など競技に直接関係ない施設を取りやめたほか、五輪開催時の観客席を7・2万人から6・8万人に縮小するなどした。
ただ、1550億円の細かい内訳については「入札に影響する」などとして明らかにしなかった。過去の大会の主会場は、建設当時の為替水準で600億円台や400億円台のものもあり、「まだ高すぎる」との批判も出そうだ。
財源も「東京都など関係者と協議を行い、早期に結論を得る」とされ、定まっていない。旧計画では、下村博文文部科学相が東京都に500億円の負担を求めたが、舛添要一知事が反発した経緯がある。舛添氏は28日、「都としても協力できることは全面的に協力する」としつつも、「都民の税金を使うので、都民が納得いくものでないといけない」と釘を刺した。
工期も課題となる。政府は新計画をもとに、9月1日から設計と施工を担う会社を一括して公募し、12月末に決定。20年4月末の完成をめざす。完成時期は、IOCが20年1月への前倒しを求めている。政府は前倒しの工夫をした事業者を公募の際に有利にする考えだが、計画の急な見直しで工期の余裕はすでに少なく、本当に前倒しができるのか、不安を抱える。
また、国民負担を減らすため、五輪後は「民間事業への移行を図る」とされている。しかし、活用方法は「これから検討する」(遠藤利明五輪相)とし、五輪後の収益計画は見通せない。
計画が迷走した経緯などを検証する文部科学省の第三者委員会の報告もまだ出ておらず、責任問題も明確になっていない。(山岸一生)
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