国際報道部長・石合力
2015年8月28日06時59分
現代最高のピアニストの1人、マルタ・アルゲリッチさんが原爆投下70年に合わせて来日し、広島と東京で広島交響楽団との特別演奏会を開いた。インタビューに応じることの少ない彼女にふだん、あまり口にすることのない音楽と社会、政治とのかかわりについて聞いた。
――演奏会では、曲の間にホロコースト(ナチスドイツによるユダヤ人らの大量虐殺)と原爆に関する詩の朗読をはさみましたね。
「広島への訪問は6度目。原爆の(平和記念)資料館を訪ねたこともあります。私自身、(原爆詩人・作家の)原民喜の詩の朗読にとても心を動かされました。70年前に起きたことをともに記憶すべきだと考えたのです」
――ユダヤ人の間には、ホロコーストはほかの悲劇と比較できるものではないという考えもあります。
「ホロコーストも原爆も(国家を超えた)人類の悲劇です。もちろん日本は唯一の被爆国ですが、そこには外国人もいた。ホロコーストは主にユダヤ人が対象でしたが、アウシュビッツ収容所にはロマ人も同性愛者もいたのです」
「『ヒロシマ』が起きたことを否定する人はいませんが、歴史修正主義者にはホロコーストを否定しようとする人もいる。だから、両者をともに記憶することが必要だと思います」
――演奏会ではベートーベンのピアノ協奏曲第1番を演奏しました。
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